龍魂

ぐらんじーた

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格の違い

全滅の騎士団

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宿屋で待っていると、リゼルが帰ってきた。
時間的に見ても、本当に一件だけ寄ってきたようだ。レイラとの約束は、無事に果たされた。

安堵した一方で、「成果はあったか」と、聞くと、力なく首を横に振るだけだった。
翌朝出直しても良いと伝えたが、リゼルはまた首をふり、「いい」とだけ言い残し、部屋に入っていった。

「……頼みの綱が不発に終わってショックだったか」
「かもね。明日あたしたちは帰る感じ?」
「そうなりそうですね。リゼルは疲れているようですし、まだ安静にした方がいいかもしれません」
「だな」

明日、レイグランズへ戻る。
レイズたちは解散し、床に就いた。



そして、翌朝。
リゼルは全員を集めた。

「レイグランズへ戻る。諦めたわけじゃないが、訓練は積んでおくべきだ」
「リゼルが良いなら良いぜ」
「同じく」

リゼルのことだ。すぐにでも重たい特訓を始めてしまいそうだ。
だから、念押しする。

「無理はしないでくださいね。まだ本調子ではないはずですから」
「そうだよ、また病院に行きたいの?」

仲間たちは暖かい言葉をかけてくれる。

「……フン」

リゼルは、レイラ以外からの『そういうの』に慣れていない。よって、どう反応していいのか分からないのだ。
目を逸らし、「行くぞ」と答えるのが精一杯だ。


ホーストを借りようと店に向かったが、舎にホーストは繋がれていなかった。
事前に見ておいた情報では、定休日ではなかったはず。
おかしいと思い、中に入り聞いてみると、店主は今日は休みにすると言う。

「ホーストのトラブルか?」
「いんや、今朝早く騎士団が出ていってな。町を出るなとのお達しでよ。あんたらは参加しなくていいのか?」
「何?」

その情報は、全く耳に入っていない。
今回は騎士団の任務で動いていないため、当然ではあるのだが。
しかし、店主はそんな事情を知る由もない。
レイズの間抜けな返事に、不満そうな顔を見せる。

「知らねぇのか?……町を出れないなら商売はできねぇ。残念だが、文句なら担当の騎士団に言ってくれ」
「…………」

訳が分からない。店の外に出て、状況を整理する。

「……町の外で何かあったな」
「戦闘の音は聞こえない。けっこう距離あるぞ」
「行くぞ。仕事だ」

そういえば、今回はマナラド騎士団基地に用がなかったため寄っていない。
団員は無事なのだろうか。

リゼルたちは騎士団がどっちの方向へ向かったかだけ町の人間から聞き取り、そちらに向かった。
その人が言うには、大人数だったそうだ。

「……ただ事じゃないな。急ぐぞ」
「了解です!」


レイズたちは走った。朝からこのランニングは正直キツイ。が、早朝に騎士団が大人数で出るレベルだ。
放っておくわけにはいかない。

(……魔物……にしては大袈裟だな)

王都付近であの規模の騎士団が一斉に動くなど珍しい。
可能性の一つだが、王都サイドの騎士団メンバーも出発している可能性もある。


三十分は経過しただろうか。最初のダッシュが小走りに変わり、しばらく経過している。
息を切らしながら現場に向かっていると、倒れている人影を見つけた。
少し前を走っていたレイラは、そちらを指をさし、レイズたちに伝える。

「あれを!!人が倒れています!」
「騎士団か!?」

近付いていくと、レイラが見つけた人影以外にも、横たわっている人物がいる。
全員が流血し、その血が固まり始めている。

「おい……一人じゃないぞ……?」
「そんな……!」

レイラが見つけたのは、何十人といる倒れた騎士団員の一人だった。

「」

騎士団は、全滅していた。
レイラがすぐに確認に走る。

「……大丈夫。生きています」

幸い、死んでいる者はいないようだが……

「何があったんだ……?」

団員もかなりの人数出動していた。それなのに、死者はゼロ。
トドメを刺さないよう加減されていることを考えると、相手は人間である可能性が高い。

レイズたちは、辺りを見回す。
周囲に生えている草や木には、団員が流したであろう血が、べっとりと付いていた。
武器は地面に散乱している。中には、折れていて使い物にならない武器もあった。

敵の姿は確認できない。
龍力の気配もない。もうここにはいないのだろうか。

「レイラ、回復術は念のため使うな。敵がまだ潜んでいる可能性がある」
「……はい」

リゼルは、フリアの顔を想像していた。
それなら、応援を頼むだけ無駄だ。悪戯にケガ人を増やすことになる。

「ごめんなさい。頑張って……」

レイラは唇を噛む。
本当はすぐにでも治癒術を唱えたい。が、敵が確認できない以上、うかつに龍を消費できない。
幸い、息はある。個々の生命力に頼るしかない。

「道しるべ、か……?」

団員が倒れている位置をよく確認すると、道ができていることが分かった。
隊になっている団員を襲ったのか、周囲を警戒している団員を個別で襲ったのか。
数の利を活かした戦闘はできなかったのだろうと予測する。

「…………」

辺りを調査しながら警戒していると、敵は簡単に姿を現した。

「あ~あ。思ったより早かったなぁ」
「!!」

声のした方を見ると、高台の上に、40代くらいの男が立っていた。
ベージュの上着に黒いぴっちりしたパンツ。白髪の短い髪を立たせており、不愉快な笑みを浮かべている。

レイラとリゼルは、その男を知っている。

「「グレゴリー……」」
「知り合いか!?」
「違う。指名手配犯だ。闇龍のグレゴリー。殺人鬼だ」
「!!」

指名手配犯。
その言葉の重さが、胸にのしかかる。特に、レイズとミーネに。

自分たちは、一般市民ではない。彼らを守る騎士団だ。
だから、当然、指名手配犯だって相手にする。戦わなくてはならない。

龍魂初心者だろうが、関係ないのだ。
『あの日』の被害者や、道中の魔物とも違う、本当に危険な相手。

「く……!」
「ッ……」

二人は、震える手を必死に抑え、剣を取るのだった。
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