龍魂

ぐらんじーた

文字の大きさ
149 / 469
龍魂の壁

苦しい特訓

しおりを挟む
最悪だった。
レイズは絶望していた。
彼は一人、クラストとの修行を開始した。その修行の過酷さは、想像を絶するものだった。

(もう……限界だ……)

青空の下、レイズは地に伏し、握り拳を作る。
苦しい修行に、その手は震えていた。

その修行は内容は。






『座学』






だった。



水辺から、場所をクラストの家に移したレイズ。
そこでは、クラスト講師の龍魂講座が開かれていた。
晴れていることもあり、屋内ではなく広大な庭で行われている。
クラストの家はシャンバーレ内になく、シャンバーレ近郊にあった。
手作りの柵で、好きな範囲を庭として使っている。町の中ではないため、魔物との距離が近い。
頻繁に壊れているためか、柵は何度も補強されたような跡が確認できる。
魔除けの札も数枚貼ってあるが、今も効果があるかは微妙だ。年季が入っている。

(あぁ……しんどい……)

休憩を挟みながらではあるが、約四時間。
クラストは龍魂の歴史をレイズに教え続けた。
空手チョップの手の当たる部分が真っ黒になるくらい、レイズは必死に知識を書き記した。

「駆け足だが、これで終わるか。飯でも食おう」

四時間の講義。
レイズは魂が抜けそうだった。心なしか、色も白く見える。
「修行(フル・ドラゴン・ソウル)と直接関係ないのでは?」と心の中で思っていそうなので、補足しておく。

「歴史から学ぶことは多い。基礎知識として、しっかり覚えろよ。テストもするからな」
「……へい」

冒頭に戻る。
レイズは力が抜け、地に崩れ落ちた。

(助けてくれ……)

地に伏し震えているレイズだが、クラストは涼しい顔をしていた。
魔物の肉を焼いて食べさせてくれるらしい。
肉が出てくる分、まだ恵まれている。
が、四時間の座学はレイズを精神的に追い詰めた。

「ついて来い。肉だぞ」
「めし……にく……」

クラストの後を追い、ふらふらと台所に入るレイズ。
丁度入ったとき、クラストは食材を出すところだった。奥にある冷蔵庫から、分厚い肉が取り出された。

「!!」

それだけで、レイズの疲れは吹き飛んだ。

「分厚ッ!!」
「フ……修行の後はこれに限る。肉が嫌いな人間はいないからな」
「!!」

大きく首を何度も縦に振るレイズ。
唾液が口いっぱいに分泌される。

「味は塩コショウで良いのか?」
「はい!!」

肉が焼けるいい音がする。そして、いい匂いも漂ってきた。
バターとニンニク、肉の香り。幸せだ。

「その辺の魔物の肉だが……処理をすれば、良い味が出るんだ」
「へぇ……」

市販されている食用の肉ではない。
が、それでも市販レベルの味や質になり得るということだ。
魔物の肉でも食すことができるのは昔から知っているが、味は期待していなかった。
だが、処理をしっかりすれば、ナイスな味になるのか。

「初日だからおれがやってるが、明日からはお前が作れよ?肉は用意してやるから」
「はい!!」

その程度、お安い御用だ。
レイズは水などの用意をしている。
クラストは、肉が焼けるのを眺めながら、考え事をしていた。

(久しぶりだな……この感覚……)

長いこと弟子を取っていない上に、一人暮らしも長い。
人が家にいて、ワイワイ騒ぐのは何年ぶりだろう。

懐かしい。そして、楽しい。

クラストは、久しぶりに感じるこの言葉にできない感情を噛みしめていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

現代ダンジョン奮闘記

だっち
ファンタジー
15年前に突如としてダンジョンが登場した現代の地球。 誰が何のために。 未だに解明されていないが、モンスターが落とす魔石はすべてのエネルギー源を代替できる物質だった。 しかも、ダンジョンでは痛みがあるが死なない。 金も稼げる危険な遊び場。それが一般市民が持っているダンジョンの認識だ。 そんな世界でバイトの代わりに何となくダンジョンに潜る一人の少年。 探索者人口4億人と言われているこの時代で、何を成していくのか。 少年の物語が始まる。

処理中です...