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四聖龍
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騎士団長にあんな風に『お願い』されては、無下に断るわけにもいかない。
考える時間や、シンプルに休息も必要とのクラッツの判断で、急遽レイズたちは休みを取ることになった。
期間は、四聖龍の回答があるであろう数日間。
その後は、四聖龍の動きや騎士団の動き、世間の状況で判断される。
特に変化がなければ、行方不明になっている犯罪者の調査が待っている。
騎士団が潜伏場所を押さえている、あるいは追跡中であるにもかかわらず、突然に行方が分からなくなっている。
よって、何者かが逃走を手助けしている可能性を騎士団は見ているのだ。
レイズたちは、それに同行することになる予定だった。
クラッツも退席し、部屋はレイズたちだけになった。
重たい空気が流れる。その空気を何とかしたくて、レイラは取り敢えず口を開く。
「……レイズ」
「んだよ。見苦しかったか?」
「いえ。そうではなくて……」
「……俺も必死なんだよ」
「分かります。私も、少なからずそう思っています」
今のままでは、騎士団は、絶対に勝てない。
「ですが、四聖龍が加われば……!」
四聖龍。
直に見たことはないが、騎士団の最終戦力。
彼らが協力してくれれば、きっと何とかなる。
「……さっきから出てきた四聖龍って?」
ミーネはレイラに聞く。
「……騎士団の最後の砦です。騎士団で手に負えない事件を解決する、裏の組織ですね。ですので、一般団員には知られていません」
「ふ~ん……だったら、こっちから言わなくても協力すればいいのに」
「……言っても、四聖龍は魔物相手が基本だった。対人戦で出てくることは過去にない。まぁ、(対人戦に関しては)騎士団でどうにかできていたから、な」
レイラとリゼルの説明に、納得したようなしなかったような顔をするミーネ。
今ここで騎士団と四聖龍の複雑な関係を理解するのは難しいだろう。
「今までゆっくりできませんでしたし……しばらく休みましょう?」
「そう……だな」
「休みか……ピンとこないな」
「ほんとね」
レイズたちは席を立ち、部屋を出てく。
部屋を出る際、仲間たちは全員リゼルに視線を走らせる。彼は気づいていないのか、黙って窓の外を見ている。
「…………」
ただ、レイラは物凄く気になった。
仲間たちの視線が、厳しかったことを。
最後に部屋を出るミーネが、こちらの様子を窺っていた。退室する気配がないと判断すると、扉を閉めた。
部屋にいるのは、リゼルとレイラだけとなる。
「……僕のせいだ」
「リゼル?」
窓の外を眺めていたリゼルだが、今は、彼らが出ていった扉を見つめている。
「あいつらの訴えはもっともだ。僕たちは、負け続けている」
「……それはそうですが、リゼルとそれは無関係ですよ」
「いや、あの時、僕は自分の力を試したいと思っていた。だから、騎士団の応援を待たずにヤツを追いかけた」
リゼルは拳を強く握りしめる。
「その結果、無様に負けた。あいつらの不安を、更にに煽るかたちになってしまった」
「……それは結果論です。結果は誰にも分かりませんでした」
「あぁ。だが、死んでからでは遅い」
「…………」
悩んでいるのは、彼らだけではない。
レイラもそれは同じだ。そして、リゼルも。
「……『お前』を悪者にしたくなかった。騎士団はどうでもいいが、お前の居場所の一つだ」
「え、えぇ……」
彼が何を言いたいのか分からず、反応に困るレイラ。
「だから、僕個人が悪になれば良いと思った。恨まれるのは、僕だけで十分だと」
「……もしかして、先ほどの……?」
「…………」
彼は、否定も肯定もしなかった。
「騎士団は止まらない。お前も、そうだろう?」
「はい。ですが、あなたも、その……不安なのでは……」
彼だって、強大な敵に不安を抱えているはずだ。
それでも辞めようとしないのは、騎士団に自分がいるからだ。
「お前がいなくなる方が……圧倒的に受け入れられないからな」
「…………」
何の濁りもなく、そんなキザな発言ができるとは。
並大抵の女性では、一瞬で『オチて』しまう。
しかし、事情を知っているレイラは、そうはならない。同時に、それが彼の枷となっていないか不安にもなっている。
「……お前が辞めるまでは、辞めない」
続けて、濁りもない瞳で、相手を見つめながら言う彼。
恋愛感情などゼロだが、どこか恥ずかしくなる。
「……私も、リゼルが辞めるまでは、辞めません」
「……一生終わりそうにないな」
「ふふ……ですね」
そんなやりとりを、こっそり聞いていたレイズたち。
ゆっくりと扉を離れ、小声で会話する。
「なぁ……」
「ん?」
「もう少し、もう少しだけ頑張ってみようか……」
「奇遇ね。私もそう思ってた」
「……あたしも」
苦しんでいるのは自分たちだけではない。
今まで導いてくれた彼らも苦しい、迷っている。
なら、自分たちも彼らのために、もう少し頑張るだけだ。
リゼルに抱えていた負の感情も、いつの間にか消えていた。
彼の執着の一位は群を抜いてレイラだが、自分たちも彼の『お気に入り』に入っているらしい。
意図せずそれを知り、心がむずがゆくなるレイズたちであった。
考える時間や、シンプルに休息も必要とのクラッツの判断で、急遽レイズたちは休みを取ることになった。
期間は、四聖龍の回答があるであろう数日間。
その後は、四聖龍の動きや騎士団の動き、世間の状況で判断される。
特に変化がなければ、行方不明になっている犯罪者の調査が待っている。
騎士団が潜伏場所を押さえている、あるいは追跡中であるにもかかわらず、突然に行方が分からなくなっている。
よって、何者かが逃走を手助けしている可能性を騎士団は見ているのだ。
レイズたちは、それに同行することになる予定だった。
クラッツも退席し、部屋はレイズたちだけになった。
重たい空気が流れる。その空気を何とかしたくて、レイラは取り敢えず口を開く。
「……レイズ」
「んだよ。見苦しかったか?」
「いえ。そうではなくて……」
「……俺も必死なんだよ」
「分かります。私も、少なからずそう思っています」
今のままでは、騎士団は、絶対に勝てない。
「ですが、四聖龍が加われば……!」
四聖龍。
直に見たことはないが、騎士団の最終戦力。
彼らが協力してくれれば、きっと何とかなる。
「……さっきから出てきた四聖龍って?」
ミーネはレイラに聞く。
「……騎士団の最後の砦です。騎士団で手に負えない事件を解決する、裏の組織ですね。ですので、一般団員には知られていません」
「ふ~ん……だったら、こっちから言わなくても協力すればいいのに」
「……言っても、四聖龍は魔物相手が基本だった。対人戦で出てくることは過去にない。まぁ、(対人戦に関しては)騎士団でどうにかできていたから、な」
レイラとリゼルの説明に、納得したようなしなかったような顔をするミーネ。
今ここで騎士団と四聖龍の複雑な関係を理解するのは難しいだろう。
「今までゆっくりできませんでしたし……しばらく休みましょう?」
「そう……だな」
「休みか……ピンとこないな」
「ほんとね」
レイズたちは席を立ち、部屋を出てく。
部屋を出る際、仲間たちは全員リゼルに視線を走らせる。彼は気づいていないのか、黙って窓の外を見ている。
「…………」
ただ、レイラは物凄く気になった。
仲間たちの視線が、厳しかったことを。
最後に部屋を出るミーネが、こちらの様子を窺っていた。退室する気配がないと判断すると、扉を閉めた。
部屋にいるのは、リゼルとレイラだけとなる。
「……僕のせいだ」
「リゼル?」
窓の外を眺めていたリゼルだが、今は、彼らが出ていった扉を見つめている。
「あいつらの訴えはもっともだ。僕たちは、負け続けている」
「……それはそうですが、リゼルとそれは無関係ですよ」
「いや、あの時、僕は自分の力を試したいと思っていた。だから、騎士団の応援を待たずにヤツを追いかけた」
リゼルは拳を強く握りしめる。
「その結果、無様に負けた。あいつらの不安を、更にに煽るかたちになってしまった」
「……それは結果論です。結果は誰にも分かりませんでした」
「あぁ。だが、死んでからでは遅い」
「…………」
悩んでいるのは、彼らだけではない。
レイラもそれは同じだ。そして、リゼルも。
「……『お前』を悪者にしたくなかった。騎士団はどうでもいいが、お前の居場所の一つだ」
「え、えぇ……」
彼が何を言いたいのか分からず、反応に困るレイラ。
「だから、僕個人が悪になれば良いと思った。恨まれるのは、僕だけで十分だと」
「……もしかして、先ほどの……?」
「…………」
彼は、否定も肯定もしなかった。
「騎士団は止まらない。お前も、そうだろう?」
「はい。ですが、あなたも、その……不安なのでは……」
彼だって、強大な敵に不安を抱えているはずだ。
それでも辞めようとしないのは、騎士団に自分がいるからだ。
「お前がいなくなる方が……圧倒的に受け入れられないからな」
「…………」
何の濁りもなく、そんなキザな発言ができるとは。
並大抵の女性では、一瞬で『オチて』しまう。
しかし、事情を知っているレイラは、そうはならない。同時に、それが彼の枷となっていないか不安にもなっている。
「……お前が辞めるまでは、辞めない」
続けて、濁りもない瞳で、相手を見つめながら言う彼。
恋愛感情などゼロだが、どこか恥ずかしくなる。
「……私も、リゼルが辞めるまでは、辞めません」
「……一生終わりそうにないな」
「ふふ……ですね」
そんなやりとりを、こっそり聞いていたレイズたち。
ゆっくりと扉を離れ、小声で会話する。
「なぁ……」
「ん?」
「もう少し、もう少しだけ頑張ってみようか……」
「奇遇ね。私もそう思ってた」
「……あたしも」
苦しんでいるのは自分たちだけではない。
今まで導いてくれた彼らも苦しい、迷っている。
なら、自分たちも彼らのために、もう少し頑張るだけだ。
リゼルに抱えていた負の感情も、いつの間にか消えていた。
彼の執着の一位は群を抜いてレイラだが、自分たちも彼の『お気に入り』に入っているらしい。
意図せずそれを知り、心がむずがゆくなるレイズたちであった。
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