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四聖龍
タブー
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全身から毒々しいオーラが噴出し、周囲を染め上げていく。
耳を覆いたくなるような深いな闇の悲鳴が鼓膜を刺してくる。
だが、リゼルにはどうすることもできない。意識が混沌とし、闇に落ちていく。
「ッ……!!」
苦しみながらも、微かに思い出される『あの時』の記憶。
彼は、『あの時』の記憶と、レイラとの思い出を交互に思い出していた。
時はかなり遡る。
レイズたちが、『個人研究者』の家を回っていた頃まで。
もう少し粘りたかったリゼルは、レイズたちを先に帰し、最後の望みとして歩みを進めていた。
目指すは、とある研究所。研究所と言っても、自宅兼研究所なため、外観は民家と変わらない。
「……ここか」
地図を見比べ、リゼルは敷地内に入っていく。
「好きに入れ」とのことで、研究所内にお邪魔するリゼル。
研究所内は散らかり、何年も掃除してない印象だ。生ごみも溜まっているようで、ニオイもキツイ。
悪臭に顔を歪めながらも、彼は主を探す。
程なくして見つかったそこの主は、かなり年齢がいったお爺さんだった。
(こいつか……)
今まで回った個人研究者には、正直期待していなかった。彼らは、『表』の研究者だからだ。
『裏』つまり、安全性を無視した研究をしている龍力者。当時のリゼルは、邪道と言われようとも力が欲しかった。
『表』の研究者への聞き込みで、ようやく掴んだこのライン。無駄にしたくない。
その男は、マルーキと名乗った。
「僕は、リゼルだ。実は、頼みがあってここまで来たんだ」
リゼルは今までの経緯と、力を欲する理由を簡単に伝えた。
「ヒヒ……龍と『契約』しちまいな」
「契……約……?」
彼が言うには、龍魂を宿している状態では、自身の意識と龍の意識が混在しており、綱引きをしている状態なのだという。
リゼルにも、その意味は理解できる。ある意味、龍魂の基礎だ。だが、契約している状態ではないらしい。
すなわち、宿している≠契約なのだ。
「契約すりゃぁ、何倍も大きな力が出せる……ヒヒヒ……」
「……何倍も……だと?」
「あぁ……敵との実力差はひっくり返るだろうさ……ヒヒヒ……」
気味の悪い笑みを浮かべるマルーキ。
『契約』すれば、何倍もの力を出せる?本当にその通りであれば、希望が見えてくるのだが。
「どうすれば、契約できる!?」
「なぁに……言葉で簡単にできる……ヒヒヒ……」
「は……?」
何の訓練もなしに、口で「契約する」と言えば力が手に入る?そんな方法があるなら、騎士団の戦力は大幅に上がる。
だが、引っ掛かる。目の前にいるマルーキからは、龍力を全く感じない。非戦闘時であると言えばそれまでだが、覇気というか、歴戦の強者を見たときのような威圧感がない。
「……あんたは、契約しているのか?」
「いんや…ヒヒヒ……」
「多くの龍力者は『契約』を知らない……あんたもその『契約』をしていない……」
「…………」
知らないのだから当然だが。と言いたいのを飲み込むリゼル。
代わりに別の質問を投げかける。
「その『契約』は簡単で、何倍もの力が出せる。が、あなたはそれをしていない」
個人レベルでそんな夢のような力を見つけたのなら、発表なりなんなりして世間に知らせれば、莫大な金や権力、地位が手に入る。
だが、マルーキはそれをしていない。
「その理由は、何だ?」
「ヒヒヒ……『契約』しちまったら、そいつの人格は無くなっちまう……ヒヒヒ……」
「!?」
「正確には、生前の龍の性格になる……」
それは……つまり……
「人間の人格は……?」
「消える。用は『闇堕ち』だな……ヒヒヒ……」
「!」
龍と契約すれば、何倍もの力が手に入る。
だが、そうなれば、個人の人格は闇の中。
つまり、姿形はリゼルでも、中身は全くの別物であるということだ。この場合で言うと、相棒であるはずの闇龍になる。
それは、元の人格は死んだも同然だ。
そのことをマルーキは知っている。ここまで具体出来に話せるのだ。データから見える想像の話ではないだろう。つまり、誰かでそれを行ったことになる。
『契約』の話を始めてから、マルーキはずっと気味の悪い笑みを浮かべている。
「あんた……まさか……」
「ここから先は、ボウズ。聞かない方が良い……ヒヒヒ……」
「…………」
それは『答え』を言ったようなものだ、とリゼルは思う。が、容易に想像はつく。
「契約は……龍力者のタブーじゃ……おススメはせんがな……ヒヒヒ……」
「タブー……」
つまり、『契約』を知っている人間はいる。そして、その界隈では『タブー』として扱われる。
そういうことか。でないと、そのような言い回しにはならない。
個人で見つけた力なら、『龍力者の』や、『タブー』など言わない。素直に「勧めない」と言うだけだ。
(タブー……人格が変わる……死んだも同然になる……)
自分には、レイラを守り、幸せにする・幸せまで導くという(勝手に課している)使命がある。
『契約』とやらは、使う機会はないだろう。
「聞くだけ、聞かせてくれないか」
「ヒヒヒ……ボウズも『溺れる』タイプか?」
「フン。知識として留めるだけだ」
そう、思っていた。
そして、現在、リゼルは自分の闇龍と『契約』をしようとしていた。
ここは退き、レイラや四聖龍、団長の回復に集中するのが先決だ。
それは頭では分かっているが、レイラを傷付けたゴミクズへの怒りの感情が抑えられない。
「ボクに……チカラを……!!」
自分をも焦がすような、混沌とした闇のオーラ。
リゼルは力を欲し、相棒である闇龍に肉体を売った。自らの人格が、意識の底へと引きずり込まれていく感覚を感じながら、彼は小さく呟いた。
「レイラ……すまない……」
耳を覆いたくなるような深いな闇の悲鳴が鼓膜を刺してくる。
だが、リゼルにはどうすることもできない。意識が混沌とし、闇に落ちていく。
「ッ……!!」
苦しみながらも、微かに思い出される『あの時』の記憶。
彼は、『あの時』の記憶と、レイラとの思い出を交互に思い出していた。
時はかなり遡る。
レイズたちが、『個人研究者』の家を回っていた頃まで。
もう少し粘りたかったリゼルは、レイズたちを先に帰し、最後の望みとして歩みを進めていた。
目指すは、とある研究所。研究所と言っても、自宅兼研究所なため、外観は民家と変わらない。
「……ここか」
地図を見比べ、リゼルは敷地内に入っていく。
「好きに入れ」とのことで、研究所内にお邪魔するリゼル。
研究所内は散らかり、何年も掃除してない印象だ。生ごみも溜まっているようで、ニオイもキツイ。
悪臭に顔を歪めながらも、彼は主を探す。
程なくして見つかったそこの主は、かなり年齢がいったお爺さんだった。
(こいつか……)
今まで回った個人研究者には、正直期待していなかった。彼らは、『表』の研究者だからだ。
『裏』つまり、安全性を無視した研究をしている龍力者。当時のリゼルは、邪道と言われようとも力が欲しかった。
『表』の研究者への聞き込みで、ようやく掴んだこのライン。無駄にしたくない。
その男は、マルーキと名乗った。
「僕は、リゼルだ。実は、頼みがあってここまで来たんだ」
リゼルは今までの経緯と、力を欲する理由を簡単に伝えた。
「ヒヒ……龍と『契約』しちまいな」
「契……約……?」
彼が言うには、龍魂を宿している状態では、自身の意識と龍の意識が混在しており、綱引きをしている状態なのだという。
リゼルにも、その意味は理解できる。ある意味、龍魂の基礎だ。だが、契約している状態ではないらしい。
すなわち、宿している≠契約なのだ。
「契約すりゃぁ、何倍も大きな力が出せる……ヒヒヒ……」
「……何倍も……だと?」
「あぁ……敵との実力差はひっくり返るだろうさ……ヒヒヒ……」
気味の悪い笑みを浮かべるマルーキ。
『契約』すれば、何倍もの力を出せる?本当にその通りであれば、希望が見えてくるのだが。
「どうすれば、契約できる!?」
「なぁに……言葉で簡単にできる……ヒヒヒ……」
「は……?」
何の訓練もなしに、口で「契約する」と言えば力が手に入る?そんな方法があるなら、騎士団の戦力は大幅に上がる。
だが、引っ掛かる。目の前にいるマルーキからは、龍力を全く感じない。非戦闘時であると言えばそれまでだが、覇気というか、歴戦の強者を見たときのような威圧感がない。
「……あんたは、契約しているのか?」
「いんや…ヒヒヒ……」
「多くの龍力者は『契約』を知らない……あんたもその『契約』をしていない……」
「…………」
知らないのだから当然だが。と言いたいのを飲み込むリゼル。
代わりに別の質問を投げかける。
「その『契約』は簡単で、何倍もの力が出せる。が、あなたはそれをしていない」
個人レベルでそんな夢のような力を見つけたのなら、発表なりなんなりして世間に知らせれば、莫大な金や権力、地位が手に入る。
だが、マルーキはそれをしていない。
「その理由は、何だ?」
「ヒヒヒ……『契約』しちまったら、そいつの人格は無くなっちまう……ヒヒヒ……」
「!?」
「正確には、生前の龍の性格になる……」
それは……つまり……
「人間の人格は……?」
「消える。用は『闇堕ち』だな……ヒヒヒ……」
「!」
龍と契約すれば、何倍もの力が手に入る。
だが、そうなれば、個人の人格は闇の中。
つまり、姿形はリゼルでも、中身は全くの別物であるということだ。この場合で言うと、相棒であるはずの闇龍になる。
それは、元の人格は死んだも同然だ。
そのことをマルーキは知っている。ここまで具体出来に話せるのだ。データから見える想像の話ではないだろう。つまり、誰かでそれを行ったことになる。
『契約』の話を始めてから、マルーキはずっと気味の悪い笑みを浮かべている。
「あんた……まさか……」
「ここから先は、ボウズ。聞かない方が良い……ヒヒヒ……」
「…………」
それは『答え』を言ったようなものだ、とリゼルは思う。が、容易に想像はつく。
「契約は……龍力者のタブーじゃ……おススメはせんがな……ヒヒヒ……」
「タブー……」
つまり、『契約』を知っている人間はいる。そして、その界隈では『タブー』として扱われる。
そういうことか。でないと、そのような言い回しにはならない。
個人で見つけた力なら、『龍力者の』や、『タブー』など言わない。素直に「勧めない」と言うだけだ。
(タブー……人格が変わる……死んだも同然になる……)
自分には、レイラを守り、幸せにする・幸せまで導くという(勝手に課している)使命がある。
『契約』とやらは、使う機会はないだろう。
「聞くだけ、聞かせてくれないか」
「ヒヒヒ……ボウズも『溺れる』タイプか?」
「フン。知識として留めるだけだ」
そう、思っていた。
そして、現在、リゼルは自分の闇龍と『契約』をしようとしていた。
ここは退き、レイラや四聖龍、団長の回復に集中するのが先決だ。
それは頭では分かっているが、レイラを傷付けたゴミクズへの怒りの感情が抑えられない。
「ボクに……チカラを……!!」
自分をも焦がすような、混沌とした闇のオーラ。
リゼルは力を欲し、相棒である闇龍に肉体を売った。自らの人格が、意識の底へと引きずり込まれていく感覚を感じながら、彼は小さく呟いた。
「レイラ……すまない……」
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