龍魂

ぐらんじーた

文字の大きさ
231 / 469
崩壊龍

裏切り者の部下

しおりを挟む
「団長……良いんですか?」

レイラは震える声で聞く。

「……四聖龍に長く穴を空けるわけにはいきません」
「良いんですか、と聞いています」
「……はい」

厳しい顔でクラッツは『イエス』の回答をする。
それを聞き、レイラは椅子を直し、ゆっくりと座る。
座った後も、彼女の呼吸は荒い。何とか落ち着かせようと努力しているのが傍から見ていても分かるほどだ。

「……何だ?」
「さぁ……」

レイラは明らかに動揺している。が、その理由が分からず、レイズとバージルお互いを見合わせる。
深く聞きたい気持ちはあるが、彼女の様子から、これ以上は聞けないと判断する。
それは、マリナやミーネも同じだ。黙って場を見守っている。

「新生四聖龍です。アリシアさん、アレクが加わりました」

団長は軽く挨拶し、二人のことを紹介していく。

一人目のアリシアは、シャレムの馴染みである。
お互い光龍で、競い合う関係だった。
四聖龍を決める際も戦い、その結果、シャレムが現四聖龍となっていること。
今の実力は自分以上とシャレムは言っていることも知らせた。

「シャレムさんが実力を認めたってことか」
「……だな。で、表ではモデルと歌手か。神様ってのは不公平だな」

羨むような功績だ。
表では大成功を修めているし、裏では四聖龍の肩書を得ている。
現在の四聖龍の待遇云々は置いておいて、能力が高いことに変わりはない。

バージルの悪態も、レイズには理解ができない。
そのため、「ん?」としか返ってこなかった。

「……何でもない。ただの妬みだ」

いい意味で、レイズは純粋だ。
凄い物には凄いと言うし、そこに妬みはない。

が、全員が全員そう思うとは限らないのが人間である。
龍魂も使いこなせ、仕事も成功している。見た目も良い。これだけ揃えておきながら、致命的な欠点という欠点は見当たらない。
不公平だ、とバーバルは妬んでしまう。

「……つか、問題は白い方だろ?多分」

アレクとレイラを見比べながら、レイズは囁く。
それについては、バージルも同じ考えだ。

「あぁ、そうだな」

クラッツは続ける。

「次に、アレクを紹介します」

アレクは、騎士団が立てた四聖龍候補者。
属性は闇。団内の地位こそ高くはないが、実力は騎士団トップクラスだと。

「……アレクですが、隠さずに言っておきます」

ピク、とレイラの身体が反応する。
恐らく、彼女が動揺しているのは、彼が今から言うであろう事柄が関係していそうだ。

「…………」

マリナは彼女に視線を移す。
彼女は大人しく、団長の話を聞いている。呼吸は落ち着いているが、唇は結ばれたままだ。

「……アレクは、レイ=シャルトゥの部隊におりました」
「!!」

レイズたちに衝撃が走る。

「え……?」
「それ……って」
「レイ=シャルトゥの部下だった男です」

国を裏切り、このような事態を引き起こした張本人。
それの部下だとは。

レイズたちの反応を見ながら、ウィーンは思う。

(……慣れないな)

自分やシャレム、アリシアも例外ではない。初めて聞いたときは本当に驚いた。
レイの部隊は、以前は王都の最強戦力だったと聞いている。
レイが現場を好む人間であったため、肩書は隊長クラスであったが、実力は間違いなくトップクラスだったと。

そして、アレクは騎士団の裏切り者の部下だ。
気味の悪さの正体ではないが、そう感じさせる原因の片鱗。それを見た気がした。

「皆さん驚きの様で……この反応も飽きてきましたね」

面白いものを見かけ、それを知らせるかのような顔のアレク。当然、クラッツに抑えられる。

「アレク。黙っていろ」
「レイさんは本当に強かった……四聖龍様の動きは見ていませんが、それよりもおつよ……」
「アレク!」
「……はいはい」

クラッツに強めにいなされ、アレクは肩をすくめる。

「裏切り者は、あくまでもレイ個人です。アレクではありません……ので、推薦しました」
「…………」

言いたいことは分かる。
国を裏切ったのは、レイだ。その部下ではない。
だが、どうしても素直に「はいそうですか」と言えない部分もある。が、代役もいない。

「俺は……何とも」
「っす。分かりました……」
「わたしも……です」
「……あたしも、決定に従います」

仲間たちは、順番にクラッツに返事をする。
ただ一人、レイラを除いて。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

処理中です...