321 / 469
ある一族
リゼルとリルナ
しおりを挟む
実家を出て、足早に町を突き抜けていくリゼル。
仲間たちは、その後を追いかけることしかできない。
早歩きであるし、走ってまで追う必要はないのだが、レイズたちは激しい戦闘の直後である。
疲労感が足の進みを遅らせ、人とのすれ違いもうまくいかない。その結果、彼との距離が開いてしまう。
「…………」
レイラもいるし、今の彼は、初期リゼルほど自分たちに冷たくない。
距離が空きすぎたと判断したときは、進みが遅くなり、調整はしてくれた。
案の定、声掛けなどはなかったが。まぁ、彼らしい。
そんなこんなで、どこにも寄らず、リゼルが足早にヨルムンヘルから出ようとしたときだ。
後ろからリルナが走り寄ってきた。
「みんな、待って……!!」
「リルナ……」
急いで追いかけてきたのだろう。息が上がっている。
レイズたちは足を止め、振り返る。しかし、リゼルだけは振り向くことなく、足だけを止めた。
「どうした?」
「うん……」
ちら、とリルナはリゼルへと視線を移す。
「ねぇ、リゼル……兄さま」
「ブフッ……!!」
「にい、さま……!!」
レイズとバージルは同時に吹き出す。
兄なのだし、普段の両親の呼び方からして予測はできていたのだが、実際言われるとウケる。
「……何だ」
二人を無視し、リゼルは言う。
相変わらず背を向けたままだ。
「……お父様とお母様は、勘違いしてる」
「……?」
リゼルは、首だけを少し振り返る様に動かす。ただ、完全ではない。ほんの数度である。
「……何を、だ?」
「龍の価値は、属性なんかじゃない。リルナは分かったから」
「…………」
リルナは、レイズたち一人一人へと視線を移す。
「この人たちと一緒に戦って、アルナの小ささを思い知った!」
家では月龍が全てで、頂点だった。しかし、それは違う。龍魂の属性に優劣などない。
皆、自分に適応した龍魂で、研鑽を積んでいる。
宿る龍の生前の強さや性格など、不確定要素はあるが、ベースは変わらない。
そして、愚かなのは、属性にあぐらをかき、鍛錬を怠ることだ。
「……とにかく、リルナは分かってるから!」
「そうか」
そこで初めて、リゼルは振り返った。
その顔は、今までに見たことないくらい穏やかな表情をしている。
月光龍の関係か、それとも、心情の変化か。
「……いつかでいい。外に出ろ。価値観を広げろ。僕が言えるのは、それだけだ」
「……うん!!」
彼女が返事をすると同時に、リゼルは歩き出す。
(絶対、外に出る。強くなる。みんなに負けないくらい!!)
いつか必ず。
リルナはそう誓い、彼ら見送るのだった。
「……いいのか?」
歩みを止めないリゼル。バージルは何度も振り返りながら彼に言う。
「あぁ。少しでも早く離れるべきだ」
「そうじゃなくて。喋る時間くらい作るって」
「いい。僕が言いたいことは言った」
「ふ~ん……なら、いいけど」
バージルは最後に大きく手を振り、アルナに別れを告げる。
結局彼女は、自分たちが見えなくなるまで手を振っていた。
「でも、良かったです」
「あぁ。まさか、僕が闇以外の龍を使うとことになるとは、な」
先ほどから、仲間の言いたいこととリゼルの答えが微妙にズレている。
勘の良いリゼルだ。勘違いはないだろう。話題を強引にズラしているようにも思える。
これは、この町で受けた仕打ちのトラウマが影響していそうだ。
「……私が言いたいのは、リルナのことです」
「……あぁ」
「彼女、変わりましたよ。本当に」
レイラは、依頼時のことを思い出す。
最初はツンケンしていたのに、徐々に自分たちのことを認めてくれた。
そして、最後には、長年教えられてきたであろう考えをもひっくり返した。
「あぁ……そうだな」
「……来ますかね?彼女」
「あぁ。必ず」
リルナとは、必ず『外』で出会うだろう。
それがどこかは分からないし、いつ頃かも分からない。が、彼女は来る。
関わった時間で言えば、本当に短かった。
だが、リゼルはそう確信していた。
仲間たちは、その後を追いかけることしかできない。
早歩きであるし、走ってまで追う必要はないのだが、レイズたちは激しい戦闘の直後である。
疲労感が足の進みを遅らせ、人とのすれ違いもうまくいかない。その結果、彼との距離が開いてしまう。
「…………」
レイラもいるし、今の彼は、初期リゼルほど自分たちに冷たくない。
距離が空きすぎたと判断したときは、進みが遅くなり、調整はしてくれた。
案の定、声掛けなどはなかったが。まぁ、彼らしい。
そんなこんなで、どこにも寄らず、リゼルが足早にヨルムンヘルから出ようとしたときだ。
後ろからリルナが走り寄ってきた。
「みんな、待って……!!」
「リルナ……」
急いで追いかけてきたのだろう。息が上がっている。
レイズたちは足を止め、振り返る。しかし、リゼルだけは振り向くことなく、足だけを止めた。
「どうした?」
「うん……」
ちら、とリルナはリゼルへと視線を移す。
「ねぇ、リゼル……兄さま」
「ブフッ……!!」
「にい、さま……!!」
レイズとバージルは同時に吹き出す。
兄なのだし、普段の両親の呼び方からして予測はできていたのだが、実際言われるとウケる。
「……何だ」
二人を無視し、リゼルは言う。
相変わらず背を向けたままだ。
「……お父様とお母様は、勘違いしてる」
「……?」
リゼルは、首だけを少し振り返る様に動かす。ただ、完全ではない。ほんの数度である。
「……何を、だ?」
「龍の価値は、属性なんかじゃない。リルナは分かったから」
「…………」
リルナは、レイズたち一人一人へと視線を移す。
「この人たちと一緒に戦って、アルナの小ささを思い知った!」
家では月龍が全てで、頂点だった。しかし、それは違う。龍魂の属性に優劣などない。
皆、自分に適応した龍魂で、研鑽を積んでいる。
宿る龍の生前の強さや性格など、不確定要素はあるが、ベースは変わらない。
そして、愚かなのは、属性にあぐらをかき、鍛錬を怠ることだ。
「……とにかく、リルナは分かってるから!」
「そうか」
そこで初めて、リゼルは振り返った。
その顔は、今までに見たことないくらい穏やかな表情をしている。
月光龍の関係か、それとも、心情の変化か。
「……いつかでいい。外に出ろ。価値観を広げろ。僕が言えるのは、それだけだ」
「……うん!!」
彼女が返事をすると同時に、リゼルは歩き出す。
(絶対、外に出る。強くなる。みんなに負けないくらい!!)
いつか必ず。
リルナはそう誓い、彼ら見送るのだった。
「……いいのか?」
歩みを止めないリゼル。バージルは何度も振り返りながら彼に言う。
「あぁ。少しでも早く離れるべきだ」
「そうじゃなくて。喋る時間くらい作るって」
「いい。僕が言いたいことは言った」
「ふ~ん……なら、いいけど」
バージルは最後に大きく手を振り、アルナに別れを告げる。
結局彼女は、自分たちが見えなくなるまで手を振っていた。
「でも、良かったです」
「あぁ。まさか、僕が闇以外の龍を使うとことになるとは、な」
先ほどから、仲間の言いたいこととリゼルの答えが微妙にズレている。
勘の良いリゼルだ。勘違いはないだろう。話題を強引にズラしているようにも思える。
これは、この町で受けた仕打ちのトラウマが影響していそうだ。
「……私が言いたいのは、リルナのことです」
「……あぁ」
「彼女、変わりましたよ。本当に」
レイラは、依頼時のことを思い出す。
最初はツンケンしていたのに、徐々に自分たちのことを認めてくれた。
そして、最後には、長年教えられてきたであろう考えをもひっくり返した。
「あぁ……そうだな」
「……来ますかね?彼女」
「あぁ。必ず」
リルナとは、必ず『外』で出会うだろう。
それがどこかは分からないし、いつ頃かも分からない。が、彼女は来る。
関わった時間で言えば、本当に短かった。
だが、リゼルはそう確信していた。
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は“料理人”。
だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。
地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。
勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。
熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。
絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す!
そこから始まる、料理人の大逆転。
ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。
リアルでは無職、ゲームでは負け組。
そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収
ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。
彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。
だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。
自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。
「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」
契約解除。返還されたレベルは9999。
一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。
対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。
静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。
「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」
これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。
(本作品はAIを活用して構成・執筆しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる