龍魂

ぐらんじーた

文字の大きさ
351 / 469
新たなる龍

リング・オブ・ソル

しおりを挟む
(とった!!)

月の弧を描くようなリゼルの一撃。
彼の読み通り、避けられることなく、刃はソルに入った。

「ッ……!!」

ぐら、と彼女の身体がよろめき、膝をつく。

「やった……!!」

レイラは思わず声を上げる。
しかし、ソルの龍力に乱れはない。それに、全く量も減っていない。

「はぁ……はぁ……」

ただ、呼吸を乱すだけの攻撃力は出せていたようで、ソルの呼吸は荒くなっている。

ムーンフォースの攻撃も終わり、場に静寂が訪れる。
ソルはゆっくりと顔を上げ、リゼルを見る。視線がぶつかり、見つめ合う。
彼は、こちらを見たまま動かない。追撃はしてこないらしい。

「…………」

呼吸が整った彼女は、ゆっくりと立ち上がる。
傷口を押さえ、血を止める。本当に、見事な一撃だった。
僅かな時間で、ここまで追いついてくるとは。

本気の戦い。ならば、『奥の手』を使うことも許されるだろう。
彼女の口角が、僅かに上がる。

その後の変化に最初に気づいたのは、ミーネだった。

「あれ……?あの剣……」

気のせいか、リング・オブ・ソルの輝きが増している気がする。
チラ、と他の仲間を見るが、聞こえなかったのか、何も言わない。
「気がする」レベルの話であるし、視線を戻したミーネ。観戦を続ける。

息を長く吹くソル。

「ふ~~……」

彼女が感じた変化は、気のせいではなかった。

(……この剣も、求めている)

ソルは剣に目を落とす。
自分で心を込めて作ったから分かる。自分の龍力や彼の龍力に反応して、剣そのものが強くなっている。
そして、求めている。

(強者との戦いを)

ソルが再びリゼルを見たとき、彼は目の前にいた。

「……スキだらけだ」

ソルに向かって振り下ろされる剣。
しかし、彼の剣は弾かれてしまう。

「!?」

見ると、ソルは剣を振った後だった。

(ッ……)

咄嗟に距離を取ったリゼル。

(クソ……)

あの体勢から、あの一瞬でよく対応したものだ。
何をされてもいいように細心の注意を払っていたのに。
弾かれたのは衝撃的だったが、心を乱すな。龍は、人間の想像を超えてくる。

「残念。(今のは)スキのうちに入らないわ」
「…………」

無意識に、リゼルは利き腕を押さえる。

今、ソルに弾かれたときの剣。
ソルにとっては、ただの防御のそれだったのだろう。だが、それだけで腕が吹っ飛ばされそうだった。

今までの腕が痺れるとか、剣が重たいとか、そんな次元ではない。
彼女の剣の風圧だけで、彼方まで飛ばされてしまいそうだ。

(……リング・オブ・ソル……強いな)

おそらく、自身の能力と武器の力を増幅させる、言うなれば一種の強化状態に近いのだろう。
リゼルは、さすがに理解した。

(勝つのは……無理だな)

ちら、とレイズを見る。もちろん、視界にはソルは入ったままだ。

劣化の辛さは、自分もよく分かる。
徐々に動かなくなっていく身体。失われていく外界の感覚。
思考能力も落ちる。

太陽龍の魂を貰えるチャンスだったが、どうも勝てそうにない。
仮に、闇龍であれば、互角に戦えただろうか。

(クソ、無駄だ。僕はこの力で、戦うんだ!!)

たられば。

どうしてもそれが頭をよぎる。リゼルはそれを振り切り、戦う。
仲間のために。


考えを捨て、リゼルは走った。


「月堕!!」

空の月が落ちるほどの大きな技。

「甘い……陽炎……!」

だが、リング・オブ・ソルに弾かれる。それに技が加わり、比にならないほどの龍力がリゼルを襲う。

「が……は……」

十メートルは飛ばされただろうか。レイラを中心に、他のメンバーも息を呑むのが分かる。
「案ずるな」とい言いたいが、正直厳しい。

リゼルは飛ばされながらも体勢を整える。が、ソルはその飛ぶ速度よりも速かった。
もう目の前に距離を詰めてきている。

「く……!」

燃え上がるような髪を躍らせ、炎を操る

「炎帝!!」
「!!」

周囲を炎の海に支配される。
リゼルは身を焼かれぬように龍力を必死で高める。が、そもそもの地力が違う。
防御壁を破り、ジリジリと皮膚や衣類を焼かれているのが分かる。

「……これで終わりよ!!」

ソルは剣を振りかぶる。

「王龍烈火!!」
「……!!」

太陽龍王に相応しい巨大な力。龍圧が加わり、頭上に落ちてくる。
最大の龍力で、リゼルとの勝敗が決まった。


……はずだった。


「!!」

リゼルは、剣で彼女の一撃を防御していた。
周囲が炎の海だというのに、防御をそちらに回して。
その間、リゼルの身は炎に焼かれている。

「~~~~!!」

その痛みに耐えながら、リゼルは吠えた。

「月龍!!僕『と』戦え!!」
「!!」

耐えられた事実と、リゼルの迫力に、ソルは一瞬、本当に一瞬だけ力が抜ける。
脳内フル回転のリゼルに、そのスキは何十秒くらいに感じる。

「今だ!ムーン・ドラグーン!!」

ソルの足元に月龍の紋章。
そして、そこから月龍が具現化された。

生前の姿を想像したであろう『それ』に、ソルは襲われる。

「く……ッ!」

牙の攻撃をリング・オブ・ソルで防御、しかし、その攻撃は一度では終わらない。

「!!」

何度も、何度も何度も噛み付き攻撃。
それが終わったと思えば、強靭な肉体による攻撃。
具現化された月龍は、天を翔けるように飛び、粒子となって消えていく。

「…………」

攻撃が終わり、周囲に静寂が訪れる。
そして、どさ、という音とともに、ソルが落ちてきた。

「う……」

ソルは顔を歪めながらも、立ち上がる。
リング・オブ・ソルの輝きも眩いままだ。

「…………」

リゼルは、立ったまま動かない。乱れた前髪で、目は確認できない。
そのせいもあり、遅れたが、ソルは彼の様子がおかしいことに気付いた。

「まさか……」

「殺って」しまったか?

(……いえ、感じる)

いや、生命エネルギーはまだ感じる。龍力も、微弱だが、感じる。
しかし、これは。

ソルは彼に近づく。そして、理解する。

「立ったまま……気絶……」

ソル対リゼルは、粘りに粘ったリゼルの健闘も虚しく、ソルの勝ちで幕を閉じた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

「日常の呟き(雑談)」

黒子猫
エッセイ・ノンフィクション
日常のことを綴ってます✨

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月
恋愛
(週一更新になります。楽しみにしてくださる方々、申し訳ありません。) この物語の主人公、ソフィアは五歳の時にデメトリアス公爵家の養女として迎えられた。 両親の不幸で令嬢になったソフィアは、両親が亡くなった時の記憶と引き替えに前世の記憶を思い出してしまった。 この世界が乙女ゲームの世界だと気付くのに時間がかからなかった。 自分が悪役令嬢と知ったソフィア。 婚約者となるのはアレン・ミットライト王太子殿下。なんとしても婚約破棄、もしくは婚約しないように計画していた矢先、突然の訪問が! 驚いたソフィアは何も考えず、「婚約破棄したい!」と、言ってしまう。 死亡フラグが立ってしまったーー!!?  早速フラグを回収してしまって内心穏やかではいられなかった。 そんなソフィアに殿下から「婚約破棄はしない」と衝撃な言葉が……。 しかも、正式に求婚されてしまう!? これはどういうこと!? ソフィアは混乱しつつもストーリーは進んでいく。 なんとしてても、ゲーム本作の学園入学までには婚約を破棄したい。 攻略対象者ともできるなら関わりたくない。そう思っているのになぜか関わってしまう。 中世ヨーロッパのような世界。だけど、中世ヨーロッパとはわずかに違う。 ファンタジーのふんわりとした世界で、彼女は婚約破棄、そして死亡フラグを回避出来るのか!? ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体などに一切関係ありません。 誤字脱字、感想を受け付けております。 HOT ランキング 4位にランクイン 第1回 一二三書房WEB小説大賞 一次選考通過作品 この作品は、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

貧乏神と呼ばれて虐げられていた私でしたが、お屋敷を追い出されたあとは幼馴染のお兄様に溺愛されています

柚木ゆず
恋愛
「シャーリィっ、なにもかもお前のせいだ! この貧乏神め!!」  私には生まれつき周りの金運を下げてしまう体質があるとされ、とても裕福だったフェルティール子爵家の総資産を3分の1にしてしまった元凶と言われ続けました。  その体質にお父様達が気付いた8歳の時から――10年前から私の日常は一変し、物置部屋が自室となって社交界にも出してもらえず……。ついには今日、一切の悪影響がなく家族の縁を切れるタイミングになるや、私はお屋敷から追い出されてしまいました。  ですが、そんな私に―― 「大丈夫、何も心配はいらない。俺と一緒に暮らそう」  ワズリエア子爵家の、ノラン様。大好きな幼馴染のお兄様が、手を差し伸べてくださったのでした。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

処理中です...