龍魂

ぐらんじーた

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新たなる龍

紅蓮の炎と闇の炎

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倒れたまま、全く動かない黒焦げの男、ヒューズ。
あの技を近距離で受けて、無事では済まなかっただろう。

しかし、二人は構えを解かない。

男からは、龍力の気配もなく、身体の動きもない。
通常の戦闘であれば、勝負は決したと判断していいレベルだ。
だが、敵はレイのグループの一人だ。油断できない。

「「…………」」

時間が止まったかのような感覚。ウィーンもアレクも動かないままだ。
ただ、実際には時間は進んでいる。その時間にして、数秒。

「つつつつ……」

むく、と男は身体を起こした。案の定、まだ生きていた。
あんなにも黒焦げなのに、見た目ほどのダメージを受けていないように見える。

「!」

生きていた事実に加え、ダメージの少なさに衝撃を受けつつも、気をしっかりもつウィーン。
彼はすかさず、追撃しようと襲い掛かる。

「だぁッ!!」

しかし。

「……まぁ落ち着けよ」

男は、ウィーンの振り下ろされた短剣を、素手で掴んだ。

「な……!」

刃を素手で掴んだ行為にも驚きだが、ウィーンはすぐに別の問題に気づく。

(動かない……!?)

そう。全く動かないのだ。
押しても引いても、短剣はびくともしない。刃を握られているのに、男の手から血は流れない。
左手に持つ短剣はフリーだが、それを持っていることすら忘れるレベルの衝撃だ。
この精神的ショックは計り知れない。

(この野郎……!!)

ウィーンに緊張が走る。
次第に、ズズ、と毒々しい龍力が男に纏っていく。

「勝ったと思ったか?バカが」

そう言い、ウィーンを残酷な目で睨みつけた。

「!!」

それだけ。
ただ、それだけで、ウィーンは巨大な龍に睨まれたかのような気分になった。

「……演出ご苦労。絶望に落ちな」

掴んでいた短剣を、ヒューズは乱暴に押し返す。
勢いに負け、数歩後退る。顔を上げたとき、男の焦げはきれいさっぱりなくなっていた。

闇龍に治癒術はないはず。
なら、焦げは表面上だけのそれで、身体へのダメージが通っていないということか。

ウィーンは理解した。

「アレク。お前に託す」
「はい?」
「オレでは勝てん。だから、お前が倒せ」

先ほどの戦闘と、今の感じで、ウィーンは勝ち目がないことを悟った。
最高火力の攻撃が、通用していないのだ。シンプルに龍力不足だったことを認めるほかない。
『フル・ドラゴン・ソウル』に加え、『龍化』という、かなり負担がかかる勝負に出たのに、このザマ。
スゼイやフリアとは一味も二味も違う。ヒューズの真の強さは計り知れない。

それでも、四聖龍のプライドがある。
勝てないと分かっていても、撤退の文字はない。
出来る限りのチャンスを作り、試す努力をするだけである。

頼みの綱は、やはり……

「……オレが少しでも(龍力・体力を)削る。お前は力を温存しておけ」

ウィーンは「お前」の方向を見ないまま、告げる。

「……いきなり何です?」
「それほどの相手だ。普段偉そうにしているその実力、見せてもらうぞ」
「……お楽しみに。どうぞ」

一度頷き、ウィーンは飛び出す。

「はぁぁぁぁぁあああ!!」
「……来な」

ドン、と轟音を響かせながら、二人の戦いが再開する。

龍化により、地力が大幅に上がっているウィーン。それなのに、ヒューズには届かない。
互角に戦えているようで、気づけば押されているのだ。

相手は、その駆け引きが本当に上手い。圧倒的絶望感を与えるのではなく、ジリ貧の恐怖を感じさせている。
ウィーンの大技が効かなかったことで、その駆け引きは手抜き故のものだとバレているが、それを抜きにした場合の話。
それだけ戦闘経験があることでもあるし、龍力の調整が上手いことでもある。そして、自分が遊ばれていることである。

ヒューズは、まだまだ上の力を隠している。
それなのに、わざと力を抑え、自分より少し上の力だけで戦っている。
それは、アレクにも理解できる。肌で感じる力もそうだが、相手は龍化していない。

「あの男、どれだけの力を……」

ウィーンは決して弱くない。四聖龍の名に恥じない力を身につけている。
しかし、敵はそれを軽く凌駕している。問題に上がらなかっただけで、世界にはこんなレベルの龍力者がもっといるのだろう。

「ッ!!」
「ホレホレ!そんなんじゃ響かねぇぞ!?」

ウィーンの連撃を、簡単に弾いていくヒューズ。
脚の龍化を腕に回し、剛腕の一撃をお見舞いしても、このザマ。
龍化しても、届かないのか。それだけの「距離」が、ここにあるのか――――――

「紅蓮剛剣ッ!!」

ウィーンが技を放つ。その瞬間、ヒューズは構えを解除した。
龍力も一瞬感じられなくなる。エネルギー切れか?

(乱されるな!!バカか!!)

荒波の龍力が突然切れたのだ。驚くなと言う方が無理。
だが、ウィーンは精神を乱すことなく、刃を走らせ切った。

皮膚を斬る感覚が手に入力される。確実に、技が決まった。
刃が通った後の皮膚を、紅蓮の炎が包む。

「ぐわぁぁぁぁぁああああッ!!」

ヒューズの、耳を刺すような悲鳴が響く。炎の中で、人影が揺らぐ。
この悲鳴と影の揺らぎ。どこかわざとらしいのは気のせいだろうか。
ウィーンは舌を打つ。

「猿芝居を……」
「……ってな」

ヒューズの低い声が聞こえた。その直後。
彼を包んでいた紅蓮の炎が、闇色に変わっていく。

「!?」

自分が放った技の炎が、完全に闇に塗り替えられてしまう。

「闇の炎に……抱いてもらうか?」

炎の揺らめきの間から、ヒューズの顔が見え隠れする。その顔は、今日一凶悪な顔だった。

「ッ!!」

ぞく、と全身に鳥肌が立つ。体温が急に下がったような感覚に襲われる。
身体が「逃げろ」と警告している。が、その渓谷に反し、足は震えたままで思うように動かない。

「暗黒炎」

ヒューズに纏っていた闇の炎が、ウィーンに襲い掛かる。

「くたばれ!!」
「ッ……!!」

逃げは無理。なら、最大限の防御を。

(龍鱗……!!)

龍力の防御に加え、龍化による防御の上乗せ。
分厚い炎のオーラが、ウィーンを包む。防御態勢も、短剣を上手く十字に組んだもの。
動揺しつつも引き出せる龍の最大で、闇の炎に対抗する。

しかし。
炎のオーラに、ヒビが入る。

「ッ!!」

龍力の亀裂。

十字に組んだ刃の隙間から見える、その絶望。
この力でも、防げないのか。

「くそ……」

亀裂が入ってしまえば、あとは簡単だ。
ウィーンが放つ紅蓮の炎が、闇色に染まっていく。

「ッ……!」

明らかに自分の龍とは違う力に包まれていく。
闇の炎に呑まれる彼を見ながら、ヒューズは嗤う。

「……努力賞?いや、参加賞、だな」

言い終わると同時に、闇の炎に抱かれた炎龍使いは、力なくその場に倒れた。
紅蓮の炎の燃えカスを宙に散らしながら……
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