366 / 469
新たなる龍
頭の声
しおりを挟む
喜びを嚙み締めるレイラの心を知らずか、クラッツは粛々と続ける。
「ハーストの家は、完全に裏で行う。当然、少人数。強襲を受けた直後で申し訳ないが、アレクとウィーンをで行ってもらう。タイミングは、完全ランダム。ただ、治療は待つ」
「私達も……!」
レイラは自分の胸に手を当て、声を上げる。
しかし、ハーストはそれを了承しない。
「いや、リゼルはある種病み上がりだし、目立つ人間は相応しくない。丁度いいのがその二人なんだ」
「丁度いい……か」
完全なる言葉の綾だが、気になってしまうのは仕方ない。
適任とでも言えば良かったのだが。
勿論、アレクもその言い方に引っかかる。
「……なんか嫌な良い方ですね。まぁ、良いですけど」
ただ、いつもよりも穏やかである。気に入らないことがあれば、嫌な口を叩く癖に、いやに素直だ。
レイと会った報告以降、少し機嫌がいい気がする。
「治療後即行動、でも良いのかもしれないが、正解が分からん。いっそ、賽の目にでも頼るか」
「冗談……?」
シャレムの怪訝な表情に、クラッツは乾いた笑みを浮かべる。
「申し訳ない。裏の裏の裏を読むより、天に任せるのもありだと思ってしまっただけだ。聞き流してくれると助かる」
「…………」
それほどまでに、団長は精神的に疲れている。
何をしても、敵の掌の上な気がしてならない。内通者を疑うレベルだが、そいつは何を得るのか。
クラッツは即行動はしないと言うが、レイとヒューズが繋がっている以上、個人情報を主に、ある程度筒抜けである。
「でも、レイがハーストさんの家を知っていたら……!」
そう。レイがハースト宅の住所を知っており、ヒューズを向かわせた場合、ランダムに動こうが意味がない。
彼らに張り込まれてしまっては、裏で動く意味がなくなる。
二人が来たタイミングで姿を現し、グランズを奪えばいいだけ。簡単なことである。
「住所を知っているかは確かに不安要素だ。だが、既に知っているのなら、なぜクラウド宅を日時を合わせて襲撃した?騎士団を待たずに水面下で張り込めばいいことだろう?」
「……まぁ……そうだな?」
バージルは、顎を触りながら言う。
そこで気付いたのだが、何本か濃い毛が生えており、指に当たる。後で抜いておこう。
「敵の強大さは、私も直に感じた。更なる鍛錬が必要だ」
「団員のフルの状況はどうですか?」
「あぁ、チラホラ使える者がいるが、安定するにはまだまだ時間が必要だな。結局、団として大きな戦力アップには繋がっていない。残念だが……」
『フル・ドラゴン・ソウル』との出会いは、騎士団の空気を大きく変えた。
しかし、敵はその段階を超越している。フル・ドラゴン・ソウル『もどき』が扱えたとして、任務に出すことはできない。
ただ、普段の任務に関して言えば、だいぶ楽になった。そういう意味では、戦力アップにはなっているが。
「やはり、自分たちで……」
「そうだな。しかし、むやみやたらに特訓しても効果が小さいのが龍魂だ。過去にないレベルの龍力を求められているからな……」
龍魂の進化。
団内でも、雲を掴むような話なのか、実現できそうな話なのかが分かっていない。
もちろん、会得している者や、兆しがある者様々なのだが、どちらにせよ、絶対値は小さい。
やり方も『これがいい』という王道パターンがないのが実際だ。よって、量産できない。
「……やっぱ、限界を極めつつってのがいいんじゃないかな」
言いたい衝動も落ち着き、レイのことでイライラしているレイズは、違う話題に入っていく。
「……なんでそう思う?」
容易に実現できない案だが、妙に力がある。団長は、一蹴することなく、レイズに理由を聞く。
団長に拾われると思っていなかったレイズ。固まってしまう。バージル辺りが「バカか」とでも言い、終わると思っていた。
「ぁ……」
仲間だけでなく、四聖龍の視線まで集まる。
レイズは必死に頭を回し、言語化を試みた。
「……上手く言えないけど、マジで限界なときとか、すっげー集中しているときとか……『声』が聞こえるんだよな。その声って、すっげー冷静で、頭がスッキリする感じなんだ。『もう一人の自分』みたいで……」
「なんだそりゃ?」
「上手く言えないって言っただろ?もういいって。忘れてくれ」
「でも、それ、私も分かる気がします」
自分で話題提供したクセに、話を終わらせたくて仕方がなくなるレイズ。
しかし、(仲間内では)龍魂熟練者のレイラもそれが分かると言い、流れが変わる。
「え?」
「レイズ。具体的に、聞いても良いです……?」
知らない側からすれば、意味不明な会話だろう。
しかし、知っている側からすれば、かなり興味深い話。
だから、レイラは興味を持つ。そして、四聖龍も。
「ねぇ、シャレム……」
「えぇ。分かってるわ。アリシア……」
二人は頷き合い、目の前の会話を聞いている。
ウィーンとアレクも、声には出さないが、興味深そうに耳を傾ける。
全員が聞いていることにプレッシャーを感じるレイズ。
「え~……」
しかし、こうなっては引き返せまい。だから、その時の状況を思い浮かべ、話し始める。
「つってもな……まぁ、その声が聞こえると、いつも以上に力が出せてる気がするだけだ。スレイと戦った時も、デスのときも聞こえてた。戦況を冷静に見れてる自分っつーか……」
「ですよね?私も、全く同じです。ですが、次同じように力を出そうと思っても、上手くいかなくて……」
「……幻聴じゃないのか?」
仲間内では、全く共感が得られない二人の会話。
バージルに首を傾げられ、言葉が止まる。
「う……」
「そう言われると、自信ないけど……」
リゼル、マリナ、ミーネも、何かしら情報があれば提示したいのだが、出せるモノがない。
「幻聴」の言葉に、しっくりきてしまう。
そろそろか、とシャレムは口を開く。
「アンタたち」
「はい」
「自信を持ちなさい。それは、『龍の声』よ」
「ハーストの家は、完全に裏で行う。当然、少人数。強襲を受けた直後で申し訳ないが、アレクとウィーンをで行ってもらう。タイミングは、完全ランダム。ただ、治療は待つ」
「私達も……!」
レイラは自分の胸に手を当て、声を上げる。
しかし、ハーストはそれを了承しない。
「いや、リゼルはある種病み上がりだし、目立つ人間は相応しくない。丁度いいのがその二人なんだ」
「丁度いい……か」
完全なる言葉の綾だが、気になってしまうのは仕方ない。
適任とでも言えば良かったのだが。
勿論、アレクもその言い方に引っかかる。
「……なんか嫌な良い方ですね。まぁ、良いですけど」
ただ、いつもよりも穏やかである。気に入らないことがあれば、嫌な口を叩く癖に、いやに素直だ。
レイと会った報告以降、少し機嫌がいい気がする。
「治療後即行動、でも良いのかもしれないが、正解が分からん。いっそ、賽の目にでも頼るか」
「冗談……?」
シャレムの怪訝な表情に、クラッツは乾いた笑みを浮かべる。
「申し訳ない。裏の裏の裏を読むより、天に任せるのもありだと思ってしまっただけだ。聞き流してくれると助かる」
「…………」
それほどまでに、団長は精神的に疲れている。
何をしても、敵の掌の上な気がしてならない。内通者を疑うレベルだが、そいつは何を得るのか。
クラッツは即行動はしないと言うが、レイとヒューズが繋がっている以上、個人情報を主に、ある程度筒抜けである。
「でも、レイがハーストさんの家を知っていたら……!」
そう。レイがハースト宅の住所を知っており、ヒューズを向かわせた場合、ランダムに動こうが意味がない。
彼らに張り込まれてしまっては、裏で動く意味がなくなる。
二人が来たタイミングで姿を現し、グランズを奪えばいいだけ。簡単なことである。
「住所を知っているかは確かに不安要素だ。だが、既に知っているのなら、なぜクラウド宅を日時を合わせて襲撃した?騎士団を待たずに水面下で張り込めばいいことだろう?」
「……まぁ……そうだな?」
バージルは、顎を触りながら言う。
そこで気付いたのだが、何本か濃い毛が生えており、指に当たる。後で抜いておこう。
「敵の強大さは、私も直に感じた。更なる鍛錬が必要だ」
「団員のフルの状況はどうですか?」
「あぁ、チラホラ使える者がいるが、安定するにはまだまだ時間が必要だな。結局、団として大きな戦力アップには繋がっていない。残念だが……」
『フル・ドラゴン・ソウル』との出会いは、騎士団の空気を大きく変えた。
しかし、敵はその段階を超越している。フル・ドラゴン・ソウル『もどき』が扱えたとして、任務に出すことはできない。
ただ、普段の任務に関して言えば、だいぶ楽になった。そういう意味では、戦力アップにはなっているが。
「やはり、自分たちで……」
「そうだな。しかし、むやみやたらに特訓しても効果が小さいのが龍魂だ。過去にないレベルの龍力を求められているからな……」
龍魂の進化。
団内でも、雲を掴むような話なのか、実現できそうな話なのかが分かっていない。
もちろん、会得している者や、兆しがある者様々なのだが、どちらにせよ、絶対値は小さい。
やり方も『これがいい』という王道パターンがないのが実際だ。よって、量産できない。
「……やっぱ、限界を極めつつってのがいいんじゃないかな」
言いたい衝動も落ち着き、レイのことでイライラしているレイズは、違う話題に入っていく。
「……なんでそう思う?」
容易に実現できない案だが、妙に力がある。団長は、一蹴することなく、レイズに理由を聞く。
団長に拾われると思っていなかったレイズ。固まってしまう。バージル辺りが「バカか」とでも言い、終わると思っていた。
「ぁ……」
仲間だけでなく、四聖龍の視線まで集まる。
レイズは必死に頭を回し、言語化を試みた。
「……上手く言えないけど、マジで限界なときとか、すっげー集中しているときとか……『声』が聞こえるんだよな。その声って、すっげー冷静で、頭がスッキリする感じなんだ。『もう一人の自分』みたいで……」
「なんだそりゃ?」
「上手く言えないって言っただろ?もういいって。忘れてくれ」
「でも、それ、私も分かる気がします」
自分で話題提供したクセに、話を終わらせたくて仕方がなくなるレイズ。
しかし、(仲間内では)龍魂熟練者のレイラもそれが分かると言い、流れが変わる。
「え?」
「レイズ。具体的に、聞いても良いです……?」
知らない側からすれば、意味不明な会話だろう。
しかし、知っている側からすれば、かなり興味深い話。
だから、レイラは興味を持つ。そして、四聖龍も。
「ねぇ、シャレム……」
「えぇ。分かってるわ。アリシア……」
二人は頷き合い、目の前の会話を聞いている。
ウィーンとアレクも、声には出さないが、興味深そうに耳を傾ける。
全員が聞いていることにプレッシャーを感じるレイズ。
「え~……」
しかし、こうなっては引き返せまい。だから、その時の状況を思い浮かべ、話し始める。
「つってもな……まぁ、その声が聞こえると、いつも以上に力が出せてる気がするだけだ。スレイと戦った時も、デスのときも聞こえてた。戦況を冷静に見れてる自分っつーか……」
「ですよね?私も、全く同じです。ですが、次同じように力を出そうと思っても、上手くいかなくて……」
「……幻聴じゃないのか?」
仲間内では、全く共感が得られない二人の会話。
バージルに首を傾げられ、言葉が止まる。
「う……」
「そう言われると、自信ないけど……」
リゼル、マリナ、ミーネも、何かしら情報があれば提示したいのだが、出せるモノがない。
「幻聴」の言葉に、しっくりきてしまう。
そろそろか、とシャレムは口を開く。
「アンタたち」
「はい」
「自信を持ちなさい。それは、『龍の声』よ」
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は“料理人”。
だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。
地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。
勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。
熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。
絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す!
そこから始まる、料理人の大逆転。
ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。
リアルでは無職、ゲームでは負け組。
そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。
剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。
彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。
「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。
これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。
【カクヨムでも掲載しています】
表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる