龍魂

ぐらんじーた

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新たなる龍

頭の声

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喜びを嚙み締めるレイラの心を知らずか、クラッツは粛々と続ける。


「ハーストの家は、完全に裏で行う。当然、少人数。強襲を受けた直後で申し訳ないが、アレクとウィーンをで行ってもらう。タイミングは、完全ランダム。ただ、治療は待つ」
「私達も……!」

レイラは自分の胸に手を当て、声を上げる。
しかし、ハーストはそれを了承しない。

「いや、リゼルはある種病み上がりだし、目立つ人間は相応しくない。丁度いいのがその二人なんだ」
「丁度いい……か」

完全なる言葉の綾だが、気になってしまうのは仕方ない。
適任とでも言えば良かったのだが。
勿論、アレクもその言い方に引っかかる。

「……なんか嫌な良い方ですね。まぁ、良いですけど」

ただ、いつもよりも穏やかである。気に入らないことがあれば、嫌な口を叩く癖に、いやに素直だ。
レイと会った報告以降、少し機嫌がいい気がする。

「治療後即行動、でも良いのかもしれないが、正解が分からん。いっそ、賽の目にでも頼るか」
「冗談……?」

シャレムの怪訝な表情に、クラッツは乾いた笑みを浮かべる。

「申し訳ない。裏の裏の裏を読むより、天に任せるのもありだと思ってしまっただけだ。聞き流してくれると助かる」
「…………」

それほどまでに、団長は精神的に疲れている。
何をしても、敵の掌の上な気がしてならない。内通者を疑うレベルだが、そいつは何を得るのか。

クラッツは即行動はしないと言うが、レイとヒューズが繋がっている以上、個人情報を主に、ある程度筒抜けである。

「でも、レイがハーストさんの家を知っていたら……!」

そう。レイがハースト宅の住所を知っており、ヒューズを向かわせた場合、ランダムに動こうが意味がない。
彼らに張り込まれてしまっては、裏で動く意味がなくなる。
二人が来たタイミングで姿を現し、グランズを奪えばいいだけ。簡単なことである。

「住所を知っているかは確かに不安要素だ。だが、既に知っているのなら、なぜクラウド宅を日時を合わせて襲撃した?騎士団を待たずに水面下で張り込めばいいことだろう?」
「……まぁ……そうだな?」

バージルは、顎を触りながら言う。
そこで気付いたのだが、何本か濃い毛が生えており、指に当たる。後で抜いておこう。

「敵の強大さは、私も直に感じた。更なる鍛錬が必要だ」
「団員のフルの状況はどうですか?」
「あぁ、チラホラ使える者がいるが、安定するにはまだまだ時間が必要だな。結局、団として大きな戦力アップには繋がっていない。残念だが……」

『フル・ドラゴン・ソウル』との出会いは、騎士団の空気を大きく変えた。
しかし、敵はその段階を超越している。フル・ドラゴン・ソウル『もどき』が扱えたとして、任務に出すことはできない。
ただ、普段の任務に関して言えば、だいぶ楽になった。そういう意味では、戦力アップにはなっているが。

「やはり、自分たちで……」
「そうだな。しかし、むやみやたらに特訓しても効果が小さいのが龍魂だ。過去にないレベルの龍力を求められているからな……」

龍魂の進化。
団内でも、雲を掴むような話なのか、実現できそうな話なのかが分かっていない。
もちろん、会得している者や、兆しがある者様々なのだが、どちらにせよ、絶対値は小さい。
やり方も『これがいい』という王道パターンがないのが実際だ。よって、量産できない。

「……やっぱ、限界を極めつつってのがいいんじゃないかな」

言いたい衝動も落ち着き、レイのことでイライラしているレイズは、違う話題に入っていく。

「……なんでそう思う?」

容易に実現できない案だが、妙に力がある。団長は、一蹴することなく、レイズに理由を聞く。
団長に拾われると思っていなかったレイズ。固まってしまう。バージル辺りが「バカか」とでも言い、終わると思っていた。

「ぁ……」

仲間だけでなく、四聖龍の視線まで集まる。
レイズは必死に頭を回し、言語化を試みた。

「……上手く言えないけど、マジで限界なときとか、すっげー集中しているときとか……『声』が聞こえるんだよな。その声って、すっげー冷静で、頭がスッキリする感じなんだ。『もう一人の自分』みたいで……」
「なんだそりゃ?」
「上手く言えないって言っただろ?もういいって。忘れてくれ」
「でも、それ、私も分かる気がします」

自分で話題提供したクセに、話を終わらせたくて仕方がなくなるレイズ。
しかし、(仲間内では)龍魂熟練者のレイラもそれが分かると言い、流れが変わる。

「え?」
「レイズ。具体的に、聞いても良いです……?」

知らない側からすれば、意味不明な会話だろう。
しかし、知っている側からすれば、かなり興味深い話。
だから、レイラは興味を持つ。そして、四聖龍も。

「ねぇ、シャレム……」
「えぇ。分かってるわ。アリシア……」

二人は頷き合い、目の前の会話を聞いている。
ウィーンとアレクも、声には出さないが、興味深そうに耳を傾ける。

全員が聞いていることにプレッシャーを感じるレイズ。

「え~……」

しかし、こうなっては引き返せまい。だから、その時の状況を思い浮かべ、話し始める。

「つってもな……まぁ、その声が聞こえると、いつも以上に力が出せてる気がするだけだ。スレイと戦った時も、デスのときも聞こえてた。戦況を冷静に見れてる自分っつーか……」
「ですよね?私も、全く同じです。ですが、次同じように力を出そうと思っても、上手くいかなくて……」
「……幻聴じゃないのか?」

仲間内では、全く共感が得られない二人の会話。
バージルに首を傾げられ、言葉が止まる。

「う……」
「そう言われると、自信ないけど……」

リゼル、マリナ、ミーネも、何かしら情報があれば提示したいのだが、出せるモノがない。
「幻聴」の言葉に、しっくりきてしまう。

そろそろか、とシャレムは口を開く。

「アンタたち」
「はい」
「自信を持ちなさい。それは、『龍の声』よ」
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