龍魂

ぐらんじーた

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新たなる龍

限界からの一歩

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リゼルは吠え、『それ』に力強く技を叩き込む。

「月弧剛斬!!」
「!」

初めて、『それ』が技の衝撃で交代した。
手に伝わる手ごたえも、先程までとは比較にならない。

すかさず、リゼルは前進し、剣を叩き込んでいく。

「はぁッ!」
「ッ!」

剣劇の中で、龍力の精度が上がっていくのが分かる。
(無意識下の動揺はあったかもしれないが)手を抜いていたとか、絶対量が小さかったとか、そんなものはなかった。
本人の感覚としては、「歯車が噛み合った」ようなものだ。

自分のマックスの龍力。それを引き出すには、精神面や身体面の調子がどうしても重要となる。
龍力者本人の調子の良し悪し、自分の波長と龍の波長が合う合わないは、実力でカバーしきれない部分はある。
そして、環境・状況変化により、調子が整うきっかけ、乱れるきっかけは千差万別だ。

彼の場合、『それ』の龍力コントロールを不細工ながらも真似れていること、自分の弱さを認め、殻を破ろうと鼓舞していることが大きいだろう。
本人は、認めないだろうが。

(……悪くない)

頭がスッキリしている。そして、いつもより視野が広い気がする。
単に広くなっただけではなく、相手の細かい部分も、よく見えている気がする。

相手の呼吸。龍力の波。筋の収縮の度合い。
大きく言えば、相手の戦闘能力。

だが、これでやっと『互角』だ。

こちらの攻撃が通ったからと言って、倒れる訳でもないし、反撃も食らう。
その度に、技の威力・龍力の繊細さを思い知る。
彼は、その全てを取り込み、可能な範囲で吸収しようと藻掻いている。

「ッちぃ……!」
「……!」

剣とがぶつかる音、地面を強く蹴る音、滑る音が遺跡に響く。
一進一退の攻防。

このままでは、ただ体力を無駄にすり減らしていくだけだ。
『それ』を倒すには、今の限界からの一歩が要る。

「だぁッ!!」
「オォっ!!」

全く同じ力量の、二つの力。
それらが盛大にぶつかり、龍圧や衝撃波を生む。

(あと一歩……!!)

目の前の『それ』に勝つには、あと一歩、何かが要る。
リゼルは頭を回し、ひたすらに考える。

自分の波長と龍の波長。
どう調整すれば、先のステージに進めるのか。どうすれば、パートナーと共鳴できるのか。

「どうだッ!!」
「ッ!!」

何十回と剣を交えていく。その中で、たまに『それ』に押し勝てる瞬間がある。

(これか……だが)

その瞬間だけ、最大龍力を超えて力を出せている気がした。
だが、一瞬だ。今までと何を変えたがために、その瞬間を迎えられたのか理解に乏しい。
掴みかけている。指先だけが、「その先」に触れている。

『それ』は数歩下がり、距離を取った。
向こうから距離を確保してくるのは珍しい。
が、今まで同様に突っ込んでも、埒が明かないのも事実。

(ち……)

リゼルは、心の中で舌を打つ。
自分は、体力が多い方ではない。故に、長期戦は不向きである。
それも、アップダウンが激しい長期戦は。

激しい戦いで息が上がり、剣を握る力が弱っている。
だが、充実した戦いができているのも事実。フリア戦のような一方的な学習もない戦闘ではない。

「ふぅ……」

調子も気分も上がっているリゼルだが、長くはもたない。
龍力コントロールを真似て、龍力ロスが少なくなったとはいえ、コントロールに意識を割いているために、別の部分で削られている。

その影響か、集中力が切れているのが自分でも分かる。
少しでも気を抜けば、この状態が解除されてしまう。

(だから何だ!!僕はまだまだ強くなる!!)

瞬間的、かつ、限定的だが、瞬間最大火力は『それ』を超えている。
悲観する必要もないだろう。

龍力と集中力の最大到達点。
それと技のインパクトの瞬間に合わせる。
今勝てる要素があるとすれば、それだ。

(……集中しろ)

彼を纏う龍力オーラが強く、濃くなっていく。
疲労感はあるが、それを帳消しにできてしまうだけの龍力の高ぶりを感じる。

(最後の一撃。二度目はない)

『それ』を睨み、走り出す。
敵もこちらに向かって走り出した。

(……よく見える。気を抜くな。ここで、決める!!)

『それ』の動きがゆっくりに見える。
防御のクセも、剣をどう使うのか、次どう動き出すのかも分かる。

リゼルは渾身の龍力を込め、振りかぶる。
まだだ。まだピークは早い。

「今だ!!」

自分と龍魂の波長が、一気に近付く。そして、強く絡み合うのが分かった。
その瞬間、偶に感じていた龍力の最大瞬間レベルを感じた。

そして。

「月華閃裂衝!!」
「!!」

『それ』の身体を切り裂き、技の勢いのままスライディングしたリゼル。
敵が倒れるのを視認した直後、全身から力が抜けた。

「く……!」

龍力を使いきった。
あの高揚感も、この空間を支配していた龍力の嵐も、全く感じられなくなる。
シン、と遺跡内は静まり返り、小さな呼吸音くらいしか聞こえてこない。

「はぁ……はぁ……」

正直、クールな勝ち方ではない。だが、彼は最高の気分を味わっていた。
片目が隠れた前髪の下で、僅かに口角が上がるのだった。
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