龍魂

ぐらんじーた

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世界の変化

黒雷と獣と光と

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混沌とした戦場。そこに舞うは、レイラとマリナ。そして、ウォルフ・ルーラー。
当然、女性陣二人は味方同士。しかし、事情が事情。
レイラは、マリナとウォルフ・ルーラーを同時に相手しなければならない状況になっている。

ウォルフ・ルーラーにしてみれば、敵同士が一方通行で争っているように見える。
ただ、味方同士で一方通行なだけで、人間二人はこちらに攻撃をしかけてくるときもあり、魔物の脳では処理できない事象となっている。

悪いタイミングが重なれば、レイラからマリナに攻撃するだけの状況が生まれ、ウォルフ・ルーラーに時間を与える時もある。
そうなれば、マリナは一人と一体から攻撃を食らう形が出来上がる。それは、非常にマズい。
当然、脳内で光龍から激が飛ぶ。

(ウォルフ・ルーラーをフリーにしないで!!)
(分かってます!!)

急遽マリナを落とすことを避け、ウォルフ・ルーラーに龍力を放つレイラ。

「!」

間一髪、マリナへの攻撃を止めることに成功。

(く……時間が……!)

乱れるレイラの精神。時間は、刻一刻と迫っている。
しかし、マリナを落とそうとばかり動いていても、肝心のウォルフ・ルーラーがいたのでは、先がない。

理想は、三分内にウォルフ・ルーラーを仕留め、残りの時間でマリナを落とす。
だが、それができれば苦労はしない。

「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁッ゛!!」
「!」

煌めく黒い稲妻。戦場を駆け巡る、黒き雷。

黒雷へと変化してから、明らかに攻撃が通っている。
被ダメージ時のリアクションが大きくなり、裂く皮膚も、舞う血の量も増えてきた。
しかし、なかなか倒れない。

「黒雷イィッ!!」

喉が壊れそうな声で、吠えるマリナ。
腕を大きく振り、黒い雷を放つ。

「!!」

凄まじい音と熱を発生させながら、雷がウォルフ・ルーラーに襲い掛かった。
当然、雷の速度も上がっており、スカることもない。全弾命中である。

技を放った後の硬直を狙い、レイラはマリナに攻撃しようとするが、感覚が超過敏になっているのか、「こちらを見ていないのに」その場から離れている。

「くっ……」

マリナとは逆に、レイラの攻撃はスカってばかりである。
仲間への攻撃という、躊躇は間違いなくある。しかし、それをしなければ、マリナは死んでしまう。

「龍に支配される」でもなく、「死ぬ」とパートナーは表現した。
それは、事の重大さを表している。だから、一秒でも早く、気絶させなければ。
マリナは既に、別の場所からウォルフ・ルーラーへ攻撃を飛ばしている。

「黒雷・波斬ンッ!!」

アクロバティックに移動した直後の、雷の斬撃。
剣で弧を描いた雷が、一瞬でウォルフ・ルーラーを貫通する。

「!!」

耳を突く咆哮。
痛み故か、四肢をばたつかせて藻掻いている。
その暴れ方は尋常ではなく、気付けば目の前まで敵の図体が迫っていた。

「うわっ!」

マリナに気を取られていたレイラは、慌てて場所を離れる。

(適当に暴れてないわ。注意して)

光龍の読み通り、ただ単に藻掻いているのではなく、キッチリとこちらを狙っている。
期待値的に、ワンチャン当たればラッキー程度だろうが、あの巨体でそれをやられると、人間サイドとしては厳しい。
マリナに集中を割いていた割合を変え、ウォルフ・ルーラーにウエイトを置かないといけなくなる。

その間にも、マリナは黒い稲妻を迸らせながら、戦場を駆けていく。

(もうあんなと所に!?)

このままでは、追いかけっこで三分が経過してしまう。
かと言って、レイラ自身、あの龍力に追いつけるレベルの力は残っていない。

ただ、ウォルフ・ルーラーの近くに陣取っていれば、彼女は来る。問題は、そのウォルフ・ルーラーが危険すぎることと、どこに来るかが分からないことだが。
それに、先程のように飛ぶ斬撃重視の戦術を取られると、近くにいても彼女を捉えられない。

(モタモタしないで!!見殺しにする気!?)
(分かってますよ!!焦らさないでください!!)

光龍にしてみれば、歯がゆくて仕方がないのだろう。
しかし、人間と龍とを同じ土俵で比べてもらっては困る。
ただ、パートナーの言うように、時間がないのも事実。

「マリナ……次はどこへ……!?」

レイラに見えるのは、マリナが残す黒いオーラの軌跡と、稀に見える残像。
残像のため、既にその場にはいないが。それの繰り返しが続いている。
一人で「あっち向いてホイ」を高速でやっている状態だ。

(……目で見ないで。感じて)
(!)

人間が受ける情報の8割は、視覚が占める。
しかし、ドラゴン・ソウル状態では、視覚に頼らなくとも、情報は得られる。
ドラゴンは、人間よりも多くの情報を、視覚以外から得ているのだ。

(ドラゴンの感覚を感じなさい)

わざわざ言わせるな。と言った声だが、レイラにとってはありがたい。
どんな基礎の基礎でも、焦りは視野を狭め、思考を鈍くする。
そのアドバイスで、少しだけ冷静さを取り戻した。

「ふ~~~~~~……」

レイラは大きく、長く息を吹き、目を閉じる。
視覚に頼らず、マリナの龍を、ウォルフ・ルーラーの動きを察知するために。

「……いた!!」

開眼し、黒雷を見つけるレイラ。

高速移動する力が、急に高度を上げた。当然、その先にはマリナが。
それに、いつの間にか納刀しているではないか。
両手を目一杯左右に伸ばし、黒い雷を溜め込んでいる。

そして。

「覇空黒雷イィッ!!」

両腕を思い切り振り、その黒い雷を飛ばしたマリナ。
その雷は、文字通り空の覇者、ドラゴンが飛翔するかのような動きで、ウォルフ・ルーラーに食らいついた。

「!!」

地響きと、周囲を走る黒い稲妻。
散々龍を放ち、動き回った後なのに、ここに来て技の威力が上がっている。

「マリナ!!」

地響きに堪え切れず、一瞬だけ目を離してしまうレイラ。
再び空を見上げたが、もうそこにはおらず、軌跡だけが薄く残っていた。
大技の直後だと言うのに、もう動けるのか。

(ダメ……!感じるのよ……!!)

攻撃後の稲妻、その残像にも、龍力はある。
即ち、マリナを捕捉しようとしても、それが阻害因子となる。

(焦らないで!マリナの力だけ、意志だけを感じるのよ……!!)

残像に意志はない。気持ちが乗っている力は、一つだけだ。

ウォルフ・ルーラーに食らいついた龍が消える。
敵は、膝をつき、体勢が大きく崩れる。

戦闘中にできた、大きなスキ。戦闘ど素人でも、狙いに来るタイミングだ。
決めに来るのだから、遠距離攻撃の線も薄くなった。今しかない。

(ここだ!狙いに来る!!)

問題は、敵のどこの位置にマリナが降り立つか。
考えるのではなく、力を感じて、予測しなければならない。

彼女の意志を。
と、チクリと脳が何かを拾った。


『完璧に、勝ってみせるから!!』


脳内に感じた、マリナの声。
暴走状態に近しい力を見せつつも、強く残る彼女の気持ち。

「マリナ!!」

完璧に、勝つ。ならば、後方に降り立つことはしない。
そして、左右も薄い。
ならば。

(真正面!!)

レイラが走り出した瞬間、マリナは黒い稲妻を走らせながら、ウォルフ・ルーラーの真正面に立っていた。

「黒雷龍閃ッ!!」

黒いオーラの大量帯電したまま、ウォルフ・ルーラーの身体を貫くマリナ。
刃は背中まで貫通し、鮮血が噴き出した。

その状態のまま動かない両者。力尽きてしまったのか……?

「ッ……!?」

微かに見えた、彼女が剣を抜こうとした仕草。
しかし、動かない。筋肉で絞められたのか、剣が抜けないのだ。

僅かに動く、ウォルフ・ルーラーの顎。

(間に合えッ!!)

ウォルフ・ルーラーは動けるようだが、ここを逃せば、次はない。

「スキだらけですよ!!マリナ!!」

レイラは剣の柄で、思いっきり彼女の腹を殴った。
それも、なるべく力の流れの中心に近い部分を狙って。

「が、ふ……なん、で……」
「……ごめんなさい。あなたのためです」

レイラの肩に掴まり、倒れるのを耐えているマリナだったが、力を短時間で使いすぎたこと、流れを大きく乱されたことで、一気に意識が闇の中へと落ちていく。
ずる、と崩れる身体を、抱き寄せるレイラ。

しかし――――――

「ガァァァァァアアアアッ!!」

迫り来る、ウォルフ・ルーラーの口。
生えそろった牙と、涎。戦闘中のダメージか、鮮血も垂れ流しながら、食らいつこうとしてくる。

(ダメ!終わっ……!!)

マリナを抱いているため、リゼルのように剣をガードに使えない。
彼女を守る様に背を向け、目を閉じるレイラ。


しかし、牙が背中に突き刺さり、砕かれることはなく、代わりに、強い光のエネルギーを感じた。

「ッ!?」

薄く目を開けると、ウォルフ・ルーラーがその光に貫かれ、ゆっくりと倒れるところだった。
しかも、身体には、大きな穴が。流石に致命傷となるだろう。

(勝っ、た……?)

安心感から、フラ、と倒れそうになるレイラ。
しかし、倒れる直前、誰かに抱きかかえられる感覚になる。
その人物の顔を見て、レイラは大きく目を見開いた。

「え……?」
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