龍魂

ぐらんじーた

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世界の変化

具現する雷龍

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胸に激痛と稲妻が走る。
この稲妻は、明らかに自分の稲妻とは違う力で発生しているもの。
外ハネ金髪メスガキの力だ。

「ッ……!?」

一瞬の出来事で、訳が分からなくなるスゼイ。
頭が混乱している間にも、皮膚は裂かれ、血が迸る。
空いていた方の手で、思わず胸元を押さえる。

間違いなく、斬られているし、血が出ている。

しかし、何故。
あの程度の力で、何故。

ただ、戦場でゆっくり考える暇はない。
そして、この「狙ってください」と言わんばかりのこのスキを、見逃す龍力者はいない。

「何驚いてるの?」

そんな声が聞こえたかと思うと、更に激痛が。

「がッ!?」

メスガキマリナの連続斬りだ。
完全なる油断からの動揺で、思考が鈍っている。
そんなスゼイは彼女の攻撃を見切れず、どうすることもできない。



そんな姿を、遠く離れた建物の上から眺める影が一つ。
白けた「てい」で場を去った、ヒューズ。
面白い龍力変化が感じられたため、一応見える範囲に移動していたのだ。

距離はあるが、龍力者には龍眼がある。別に不自由はない。
さて、あの様子では、アイツは何も見えていない。

「あいつ……見えてないのか?」

突然のことで、あの小娘のスピードについてこれないらしい。
確かに突然だったし、あの小娘にここまでの戦闘技術があったのは驚きだが、その程度で心揺さぶられるとは。

いい所で邪魔されたヒューズは、スゼイの無様さに、にやりと口角を上げる。
ざまぁみやがれ。このままぶっ倒されろ。



場面は戻り、マリナの猛攻が続いている。
最初の一発はかなり鮮血が待っていたが、攻撃が続くにつれ、血の量が減ってきた。
こちらの龍力が減り、攻撃力が落ちたこと、龍力オーラによる防御壁が機能し始めたことで、ダメージ量が下がってしまった。

マリナの力が、より引き出せるようになったとはいえ、スゼイは最強の雷龍使いを名乗っている。
持ち直しも、素晴らしいスピード。

(ッ……これ以上は……!!)

流石に、短期的に力を使いすぎた。
腕もしんどいし、龍力も急激に使ってしまった。

呼吸を整える意味でも、マリナは距離を取る。
龍力を維持しながら、再度それを充填する。そこで感じる違和感。

(あれ?もう?)

今までよりも、明らかに充填スピードが速くなっている。
気のせいではなく、明らかな変化だ。

「…………」

その間、マリナは手を握ったり開いたりする。
見慣れた雷龍のオーラも、分厚い気がする。それに、帯電量も多い。
確かに、今までとは力の発揮の仕方が違う。が、ここまで変わるか。
絶対量が増えたにもかかわらず、龍力の調整が今までよりスムーズになっている。
いつもは、力と意識のバランスを考えながら調整していたが、その不安も今はない。
頭もスッキリしているし、ボディイメージも寸分の狂いなく理解できる。

(これが……龍界の成果?)

そう頭を過るが、ハッキリと確証はない。
しかし、乗り越えた試練や心当たりがある出来事はそれくらいだ。
ただ、王の力が「コレ」なのは、拍子抜け感はあるが……

「まぁ良いわ。とにかく……!!」

よく分からないが、戦える。仲間を、守れる。

調子を戻したスゼイ。重点を終えたマリナ。飛び出すのは、同時だった。
稲妻の軌跡を描きながら、二人は同時に武器を振る。

「だぁっ!!」
「おらァッ!!」

剣と大剣が激しくぶつかった。
彼の大剣は物体以上の攻撃範囲を持つが、激突したのはマリナの剣であった。
その辺の力の調整は、まだテキトーなのだろうか。

ぶつかった二つの刃は、激しく龍圧を生み、大気を揺らす。
そして、マリナの瞳も。その後、涙がじわりと浮かんできた。

「ッ~~~~~~~!!」

いくら龍力で力を底上げしているとはいえ、彼女の細腕に、スゼイの大剣の威力は鬼畜だ。
攻撃自体は受けれても、衝撃は身体全体を伝う。当然、ダメージも。
たった一発。それだけで、筋が、骨が悲鳴を上げ、脳が拒絶反応を示した。

(……回避一択!!剣を受けない!!)

受けて泣くくらいなら、無理な体勢でもいい。避けて体力を温存しろ。

幸い、スゼイの剣の振りは大きく、軌道が見えやすい。
龍力で速度を底上げしているが、目が慣れてしまえば、避けることは容易い。しかし、避けているだけでは戦いには勝てない。
龍力消費を待つ長期戦に持ち込むのも、こちらとしては望んでいない。スキを見て、斬る。

マリナは彼の大剣の動きに集中し、蓄積された経験と照らし合わせ、瞬時に行動へと移していた。
それを行うこと数回。

(分かってきた……!)
(……そんな頃だと思ったぜ?)

スゼイの剣の軌道が見えてきたころ。それは同時に、スゼイがマリナの攻撃を理解し始めたころでもある。
集中のし過ぎは、不意に来るフェイントに対応できない。

ぐわ、とスゼイはわざとらしく大剣を上げる。
これは、一直線に振り下ろされる前触れ。龍力もそれ用に流動している。間違いない。
だから、左右に避ければ回避可能。

(今!!)

マリナが身体を動かした瞬間。

「……なんちゃって」
「!?」

大剣を振り下ろすモーションの途中から、急に薙ぎ払いへと動きを変えた。

(嘘……ッ!!)

マズい。
そんな芸当も出来るのか。ただ、スゼイ自身がその技術に長けていないため、龍力コントロールは通常の攻撃とは比にならないくらい拙い。
が、大剣の軌道は間違いなく自分を捉えている。

「く……!!」

不十分なことは分かり切っているが、思い切りの龍力と精一杯の体術で、防御体勢を取る。

「は!!せぇんだよ!!」
「!!」

防御も虚しく、圧倒的な攻撃力で吹っ飛ばされるマリナ。
自分の中でだが、刃の餌食にならなかっただけでも、正直及第点だと思う。
しかし、スゼイの攻撃は終わらない。

吹っ飛んでいる最中に、彼が大剣に凄まじいエネルギーを溜めているのが見えた。

「!」

スゼイを中心に、雷の龍が具現化される。
これは、ただの龍術?それとも、スゼイが全体を龍化した?そんなレベルで、彼の雷龍は強大な力を放っていた。
そして、スゼイには珍しく、小さく唇を動かした。

「……天上天下斬雷帝」

突き詰めれば、ただの飛ぶ斬撃だ。
しかし、威力範囲共にえげつない。極太の雷の刃が、凄まじい大きさと速度で襲い掛かってくる。

(でか……!!マズいっ……!!)

吹っ飛ばされた直後で、自由が利かないマリナ。当然、突然の範囲攻撃に対応できない。
腕を十字に、龍力を前面に押し出し、最大限防御に回す。できる最大限を、尽くす。
後ろには逃げない。なぜなら、仲間たちがいる。

(ここで受ける!!これで少しでも威力を削る!!)

龍界で感じた力にも引けを取らない。ライジーちゃんよりも強いのでは?と過るレベルだ。
そんな力の塊が、マリナを襲う。

「~~~~~~!!」

スゼイの強大な龍力から繰り出される、大技。奥義と言って良いレベル。
龍力の扱いを工夫し、一段階進化したとはいえ、工夫の壁を越えている。マリナの龍力では、耐えられない。

ビキ、と龍力の壁にヒビが入る。

(く……!!)

ここまでか。

「…………」

ちら、と、マリナは後方に倒れている仲間を見る。

(ごめん……げん、かい……!!)

マリナの龍力の壁が弾ける。
そして、彼女はスゼイの雷塊に呑まれてしまう。

予測も常識も大きく超えた力に、彼女は又、散る運命なのか。
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