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第5話 家賃の行方
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葡萄酒は空になり、途中まで談笑していたことまでは覚えているが、シェーナはいつの間にか眠ってしまった。
目覚めると、簡易ベッドに寝かされて毛布をかけられていた。
頭痛はするが、幸いなことに吐き気まではしなかった。
周囲を見渡すと、キシャナの姿はどこにもない。
シェーナは簡易ベッドから立ち上がると、テーブルにコップ一杯の水と手紙が添えられているのを見つけた。
『おはよう。昨晩は久々に楽しい酒が飲めたよ。仕事を片付けてくるから、シェーナはゆっくり休んでいてくれ』
どうやらキシャナは仕事に出かけたらしい。
シェーナは用意してくれた水を飲み干すと、気分は幾らか楽になった。
そして自分の身に重大なことに気付く。
騎士鎧は脱がされて簡易ベッドの横に置いてあり、鎖帷子の姿だった。
枕元には通気性が良い布製の下着が畳んで置いてあり、キシャナが気を利かせて用意してくれたのだろう。
前世から面倒見がいい性格をしていたから、自然と友人の輪を広げることが上手だった。それだけに、女ダークエルフとして異世界転生した経緯を知ったときはショックだった。今後、キシャナには幸せな人生を歩んで欲しいし、シェーナができることは協力するつもりだ。
窓の外から陽が差し込んで景色を眺めると、雲一つない青空とそよ風が出迎えてくれた。
北方のハシェル王国やプライデンは気候に恵まれて、飢饉に見舞われることは滅多になかった。
異世界特有のモンスターによる襲撃の被害は報告されているが、ハシェル王国では地方領主が自警団を設立、本国から騎士団を派遣して柔軟な対策をしていた。
シェーナも以前は地方に派遣されることがあった。仲間内では地方に派遣されることは出世コースから外されると敬遠されがちだったが、シェーナにとっては力を振るう機会が用意されて有難かった。
その実績を騎士団長の目に留まってしまったのは不幸の始まりだと思ったが、こうしてキシャナと出会うきっかけになったと思えばよかったのかもしれない。
新鮮な空気を吸って気分が良くなってきた時に、玄関の扉をノックする音が聞こえる。
キシャナの知り合いでも訪ねて来たのだろうと思って、シェーナは扉を開けて応対する。
扉の前に立っていたのは、恰幅のいい男だった。
「失礼します。あれ? キシャナさんはいらっしゃいませんか?」
「彼女は留守にしていますが、私で良ければ用件を伺いますよ」
「私はここの大家で彼女は家賃を半年分も滞納しているんですよ。そろそろ耳を揃えて払ってもらわないと困ります。ここの部屋は一人用として貸しているんですが、あなたまさか住み込んでいないでしょうね?」
シェーナは驚いて否定したが、大家は疑いの眼差しを向ける。
まさか家賃を滞納しているとは思わず、キシャナの生活基盤に不安を覚える。
「……少々お待ちください。半年分の家賃は私が払います」
シェーナは簡易ベッドの横に置かれた騎士鎧を大家に渡す。
「これは北方のハシェル王国が正式に採用している魔法付与された騎士鎧です。売れば金貨百枚はする代物です」
「ダメダメ! ちゃんと家賃はお金で支払うのが決まりです。払えないなら退去してもらうよ」
「では鎧を売って換金してきます。少々お時間を……」
「そう言って逃げるつもりだろ! 一人用として提供したのに契約違反は衛兵に通報させてもらいますからね」
騎士鎧が駄目だと、路銀で半年分の家賃は払えないし困った。
シェーナは説得を続けて試みるが、大家は聞く耳を持たないつもりで足早に詰め所へと駆け込もうとする。
「私でよければ金貨百枚と鎧を交換しよう」
二人の会話に割って入って来たのは、昨日キシャナの隣で装飾品の露店を開いていたエルフの娘だった。
目覚めると、簡易ベッドに寝かされて毛布をかけられていた。
頭痛はするが、幸いなことに吐き気まではしなかった。
周囲を見渡すと、キシャナの姿はどこにもない。
シェーナは簡易ベッドから立ち上がると、テーブルにコップ一杯の水と手紙が添えられているのを見つけた。
『おはよう。昨晩は久々に楽しい酒が飲めたよ。仕事を片付けてくるから、シェーナはゆっくり休んでいてくれ』
どうやらキシャナは仕事に出かけたらしい。
シェーナは用意してくれた水を飲み干すと、気分は幾らか楽になった。
そして自分の身に重大なことに気付く。
騎士鎧は脱がされて簡易ベッドの横に置いてあり、鎖帷子の姿だった。
枕元には通気性が良い布製の下着が畳んで置いてあり、キシャナが気を利かせて用意してくれたのだろう。
前世から面倒見がいい性格をしていたから、自然と友人の輪を広げることが上手だった。それだけに、女ダークエルフとして異世界転生した経緯を知ったときはショックだった。今後、キシャナには幸せな人生を歩んで欲しいし、シェーナができることは協力するつもりだ。
窓の外から陽が差し込んで景色を眺めると、雲一つない青空とそよ風が出迎えてくれた。
北方のハシェル王国やプライデンは気候に恵まれて、飢饉に見舞われることは滅多になかった。
異世界特有のモンスターによる襲撃の被害は報告されているが、ハシェル王国では地方領主が自警団を設立、本国から騎士団を派遣して柔軟な対策をしていた。
シェーナも以前は地方に派遣されることがあった。仲間内では地方に派遣されることは出世コースから外されると敬遠されがちだったが、シェーナにとっては力を振るう機会が用意されて有難かった。
その実績を騎士団長の目に留まってしまったのは不幸の始まりだと思ったが、こうしてキシャナと出会うきっかけになったと思えばよかったのかもしれない。
新鮮な空気を吸って気分が良くなってきた時に、玄関の扉をノックする音が聞こえる。
キシャナの知り合いでも訪ねて来たのだろうと思って、シェーナは扉を開けて応対する。
扉の前に立っていたのは、恰幅のいい男だった。
「失礼します。あれ? キシャナさんはいらっしゃいませんか?」
「彼女は留守にしていますが、私で良ければ用件を伺いますよ」
「私はここの大家で彼女は家賃を半年分も滞納しているんですよ。そろそろ耳を揃えて払ってもらわないと困ります。ここの部屋は一人用として貸しているんですが、あなたまさか住み込んでいないでしょうね?」
シェーナは驚いて否定したが、大家は疑いの眼差しを向ける。
まさか家賃を滞納しているとは思わず、キシャナの生活基盤に不安を覚える。
「……少々お待ちください。半年分の家賃は私が払います」
シェーナは簡易ベッドの横に置かれた騎士鎧を大家に渡す。
「これは北方のハシェル王国が正式に採用している魔法付与された騎士鎧です。売れば金貨百枚はする代物です」
「ダメダメ! ちゃんと家賃はお金で支払うのが決まりです。払えないなら退去してもらうよ」
「では鎧を売って換金してきます。少々お時間を……」
「そう言って逃げるつもりだろ! 一人用として提供したのに契約違反は衛兵に通報させてもらいますからね」
騎士鎧が駄目だと、路銀で半年分の家賃は払えないし困った。
シェーナは説得を続けて試みるが、大家は聞く耳を持たないつもりで足早に詰め所へと駆け込もうとする。
「私でよければ金貨百枚と鎧を交換しよう」
二人の会話に割って入って来たのは、昨日キシャナの隣で装飾品の露店を開いていたエルフの娘だった。
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