10 / 110
第10話 温泉②
しおりを挟む
居住地区の一画を整備するために大規模な工事に着手したが、そこから温泉が掘り起こされたことで人々に解放した。この異世界で温泉が掘り起こされることは珍しく、各国から温泉目当てに訪れる人もあるという。
男女の脱衣所が設けられているので、キシャナはシェーナの手を引っ張って女性用の脱衣所へと入っていく。
「どうやら他に先客もいないし、私達の貸し切りだな」
「やっぱり俺は……」
「気持ちは分かる。でも今のシェーナが男湯に入ったら、パニックになるだろ?」
「それはそうだけど、何というか罪悪感が芽生えて……」
「私もここに何度か温泉に入っているけど、慣れてしまうものだよ」
キシャナは一糸まとわぬ姿でシェーナの前に立つと、シェーナも覚悟を決めて後に続く。
幼少の頃、シェーナは姉二人と風呂に入ることはあったが、前世で男子高校生だった浩太には刺激が強かった。姉二人からは恥ずかしがり屋な妹と見られて、騎士団に入団する頃には女騎士はシェーナ一人だったので風呂は人目を気にせずに入ることができた。
シェーナが想像していた以上に広い露天風呂で開放感がある外の景色にうっとりする。男湯と女湯には仕切りが立てられて、男湯からは先客が誰かいるようで話し声が聞こえてくる。
掛け湯を済ませると、二人は温泉に浸かる。
「なかなか気持ちがいいなぁ」
「ああ、異世界で温泉は初めてだよ」
シェーナは身体に溜まっていた疲労感が抜けて気分が高揚になる。
隣にいるキシャナは褐色の良い肌と縦長の耳を立てて、温泉を堪能している。
しばらくすると、キシャナは空を見上げてしみじみした声でシェーナに語りかける。
「本来なら修学旅行先の大浴場で浸かっていたんだよな」
「……そうだな。まさか親友が女ダークエルフになって温泉に入ることになるとは思わなかったよ」
「それを言ったら私もだよ。美人な女騎士とこうして並んでいるなんて思春期な前世の俺だったら羨ましい展開だな」
「今は違うのか?」
「さっきも言ったけど、慣れてしまったよ。十八年も女性をやっていると前世のような感覚はだんだん薄れてくるよ。最初は毎日鏡を見れば妖艶な女ダークエルフが拝めてラッキーだと思えたけどね」
そんなものなのかとシェーナは思った。
シェーナは異世界転生して、しばらくは自身の身体を鏡で見る度に恥ずかしさと罪悪感で現実を直視できない時期があった。時が経つにつれて自身が女性であることはある程度受け入れることはできたが、他の女性の裸体や男性からの告白や求婚は受け付けなかった。
キシャナは温泉からあがると、シェーナにアドバイスを送る。
「しばらく私と温泉に通っていればシェーナも慣れるよ。経験者の私が言うのだから間違いないよ」
「その辺は努力してみるけど……」
シェーナはキシャナの豊満な胸を見ると、温泉に浸かって赤く火照った顔に恥ずかしさを重ねて脱衣所まで駆け足で走り去った。
男女の脱衣所が設けられているので、キシャナはシェーナの手を引っ張って女性用の脱衣所へと入っていく。
「どうやら他に先客もいないし、私達の貸し切りだな」
「やっぱり俺は……」
「気持ちは分かる。でも今のシェーナが男湯に入ったら、パニックになるだろ?」
「それはそうだけど、何というか罪悪感が芽生えて……」
「私もここに何度か温泉に入っているけど、慣れてしまうものだよ」
キシャナは一糸まとわぬ姿でシェーナの前に立つと、シェーナも覚悟を決めて後に続く。
幼少の頃、シェーナは姉二人と風呂に入ることはあったが、前世で男子高校生だった浩太には刺激が強かった。姉二人からは恥ずかしがり屋な妹と見られて、騎士団に入団する頃には女騎士はシェーナ一人だったので風呂は人目を気にせずに入ることができた。
シェーナが想像していた以上に広い露天風呂で開放感がある外の景色にうっとりする。男湯と女湯には仕切りが立てられて、男湯からは先客が誰かいるようで話し声が聞こえてくる。
掛け湯を済ませると、二人は温泉に浸かる。
「なかなか気持ちがいいなぁ」
「ああ、異世界で温泉は初めてだよ」
シェーナは身体に溜まっていた疲労感が抜けて気分が高揚になる。
隣にいるキシャナは褐色の良い肌と縦長の耳を立てて、温泉を堪能している。
しばらくすると、キシャナは空を見上げてしみじみした声でシェーナに語りかける。
「本来なら修学旅行先の大浴場で浸かっていたんだよな」
「……そうだな。まさか親友が女ダークエルフになって温泉に入ることになるとは思わなかったよ」
「それを言ったら私もだよ。美人な女騎士とこうして並んでいるなんて思春期な前世の俺だったら羨ましい展開だな」
「今は違うのか?」
「さっきも言ったけど、慣れてしまったよ。十八年も女性をやっていると前世のような感覚はだんだん薄れてくるよ。最初は毎日鏡を見れば妖艶な女ダークエルフが拝めてラッキーだと思えたけどね」
そんなものなのかとシェーナは思った。
シェーナは異世界転生して、しばらくは自身の身体を鏡で見る度に恥ずかしさと罪悪感で現実を直視できない時期があった。時が経つにつれて自身が女性であることはある程度受け入れることはできたが、他の女性の裸体や男性からの告白や求婚は受け付けなかった。
キシャナは温泉からあがると、シェーナにアドバイスを送る。
「しばらく私と温泉に通っていればシェーナも慣れるよ。経験者の私が言うのだから間違いないよ」
「その辺は努力してみるけど……」
シェーナはキシャナの豊満な胸を見ると、温泉に浸かって赤く火照った顔に恥ずかしさを重ねて脱衣所まで駆け足で走り去った。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる