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第25話 誓い
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ルトルスはシェーナを手招きすると、シェーナは彼女に近付いて椅子に座る。
「認めたくなかったが、お前の言うとおりだよ。ガフェーナに裏切られた私はハルセンティス大陸全土を敵に回したようなものだ。勇者が興した中立国家の噂は聞いていたが、奴等と剣を幾度と交えた私を受け入れる筈もない。暗黒騎士として一矢報いて散ってやろうと思ったが……姉であり団長カルラは生き延びろと私に命じた。無茶な命令を下した当人は私を庇って死んで、私は失意のどん底でここまでやってきたのさ」
ガフェーナは勇者と五大国に対抗するために、魔王より強力な魔神の復活を企てた。
魔神の復活には強力な戦士の血と魂が必要で、ルトルスとカルラが選定された。
戦場で死ねるのなら騎士として本望だが、生け贄にされるのは我慢ならなかった。
抵抗を続けたが、ほとんどの暗黒騎士は壊滅させられてルトルスは単身で追手を振り切るが道中で毒を盛られて、中立国家プライデンまで辿り着いた。
ルトルスの話を最後まで耳を傾けていると、シェーナはルトルスの頭を軽く撫でる。
「ここは安全だから大丈夫。怪我の治療はリィーシャさんが頼んだことだし、悪いようにはしないと思うよ。お姉さんもきっとルトルスが無事で喜んでいるよ」
「わ……私を子供扱いするな! 貴様、恥を知れ!」
ルトルスは頬を赤らめてベッドに潜ると、シェーナは替えの下着をベッドの隅に置いておく。
心身ともに衰弱している様子だったが、元気を取り戻せるきっかけができてよかった。
サリーニャは朝食を済ませると、シェーナに率直な感想を述べて階下に足を運ばせる。
「君の料理は美味しかったよ。まさか、私のお腹と頭の中を満腹にさせるなんて罪な女騎士様ね」
「それはどうも。ところで冷蔵庫の方は平気なのか?」
「それは問題ないわ。今日中に仕上げて明日にはテスト稼働をするつもりよ」
一人で冷蔵庫を作り上げるサリーニャには感謝したい。
食材の保存は勿論だが、試作できる料理のレシピを増やせることは有難いことだ。
サリーニャを正面玄関まで見送ると、入れ替わりに行政地区からリィーシャが姿を現す。
「やあ、彼女の容体はどうだい?」
「おはようございます。まだ本調子ではありませんが、容体は安定しています」
「それはよかった。彼女の処遇だけど、本人から事情聴取をした後は、私の監督下に置くことで正式に決定した」
上層部の一部にはルトルスを断罪しようとする意見もあったらしいが、勇者一行のメンバーであるリィーシャの発言力は絶大で、ガフェーナの内政や動向の情報を引き出すことを条件に話はまとまったらしい。
「それで一つ相談だが、彼女を君達の料理店に置いておくことはできないかな?」
「それは……私達は全然構いませんが、本人が拒否したらお断りします」
リィーシャの目が届くところにルトルスを監視したいのだろうが、シェーナは無理強いさせるつもりはない。
それを決めるのは彼女自身だ――。
「私はそれでいい。お前に……シェーナにこの身を預けよう。私にはもう帰る場所もなければ、誓いを立てる人もいない。真正面から私に剣と言葉を交えて、本気で私とぶつかり合うシェーナの気持ちは嬉しかった。そしてあの絵は情熱的なものだった」
階下に下りて一連の話を聞いていたルトルスは同意する。
最後の一文はとてつもない勘違いをしているようだが、シェーナは敢えて訂正する。
「剣と言葉は私の率直な意見だよ。でも、あの絵は誤解だからね」
「ああ、あの絵は構図が逆なのだろ? あんなに必死で隠さなくても、シェーナの真意は理解している」
ルトルスはシェーナの手の甲にキスをする。
新たな門出を歩む決心をしたルトルスを素直に応援したいところだが、一方でシェーナの心労が重なって胃が痛くなってきた。
「認めたくなかったが、お前の言うとおりだよ。ガフェーナに裏切られた私はハルセンティス大陸全土を敵に回したようなものだ。勇者が興した中立国家の噂は聞いていたが、奴等と剣を幾度と交えた私を受け入れる筈もない。暗黒騎士として一矢報いて散ってやろうと思ったが……姉であり団長カルラは生き延びろと私に命じた。無茶な命令を下した当人は私を庇って死んで、私は失意のどん底でここまでやってきたのさ」
ガフェーナは勇者と五大国に対抗するために、魔王より強力な魔神の復活を企てた。
魔神の復活には強力な戦士の血と魂が必要で、ルトルスとカルラが選定された。
戦場で死ねるのなら騎士として本望だが、生け贄にされるのは我慢ならなかった。
抵抗を続けたが、ほとんどの暗黒騎士は壊滅させられてルトルスは単身で追手を振り切るが道中で毒を盛られて、中立国家プライデンまで辿り着いた。
ルトルスの話を最後まで耳を傾けていると、シェーナはルトルスの頭を軽く撫でる。
「ここは安全だから大丈夫。怪我の治療はリィーシャさんが頼んだことだし、悪いようにはしないと思うよ。お姉さんもきっとルトルスが無事で喜んでいるよ」
「わ……私を子供扱いするな! 貴様、恥を知れ!」
ルトルスは頬を赤らめてベッドに潜ると、シェーナは替えの下着をベッドの隅に置いておく。
心身ともに衰弱している様子だったが、元気を取り戻せるきっかけができてよかった。
サリーニャは朝食を済ませると、シェーナに率直な感想を述べて階下に足を運ばせる。
「君の料理は美味しかったよ。まさか、私のお腹と頭の中を満腹にさせるなんて罪な女騎士様ね」
「それはどうも。ところで冷蔵庫の方は平気なのか?」
「それは問題ないわ。今日中に仕上げて明日にはテスト稼働をするつもりよ」
一人で冷蔵庫を作り上げるサリーニャには感謝したい。
食材の保存は勿論だが、試作できる料理のレシピを増やせることは有難いことだ。
サリーニャを正面玄関まで見送ると、入れ替わりに行政地区からリィーシャが姿を現す。
「やあ、彼女の容体はどうだい?」
「おはようございます。まだ本調子ではありませんが、容体は安定しています」
「それはよかった。彼女の処遇だけど、本人から事情聴取をした後は、私の監督下に置くことで正式に決定した」
上層部の一部にはルトルスを断罪しようとする意見もあったらしいが、勇者一行のメンバーであるリィーシャの発言力は絶大で、ガフェーナの内政や動向の情報を引き出すことを条件に話はまとまったらしい。
「それで一つ相談だが、彼女を君達の料理店に置いておくことはできないかな?」
「それは……私達は全然構いませんが、本人が拒否したらお断りします」
リィーシャの目が届くところにルトルスを監視したいのだろうが、シェーナは無理強いさせるつもりはない。
それを決めるのは彼女自身だ――。
「私はそれでいい。お前に……シェーナにこの身を預けよう。私にはもう帰る場所もなければ、誓いを立てる人もいない。真正面から私に剣と言葉を交えて、本気で私とぶつかり合うシェーナの気持ちは嬉しかった。そしてあの絵は情熱的なものだった」
階下に下りて一連の話を聞いていたルトルスは同意する。
最後の一文はとてつもない勘違いをしているようだが、シェーナは敢えて訂正する。
「剣と言葉は私の率直な意見だよ。でも、あの絵は誤解だからね」
「ああ、あの絵は構図が逆なのだろ? あんなに必死で隠さなくても、シェーナの真意は理解している」
ルトルスはシェーナの手の甲にキスをする。
新たな門出を歩む決心をしたルトルスを素直に応援したいところだが、一方でシェーナの心労が重なって胃が痛くなってきた。
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