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第65話 炊飯器とご対面
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昼頃になると、二人は依頼していた炊飯器を受け取りに商業地区の工房へと向かっていた。
「まさか炊飯器が手に入るなんて夢のようだよ」
「冷蔵庫を含めて家電製品を異世界で使えるとは思っていなかったからね」
「そうだね。ご飯物の料理はだいぶ時短できるようになるから、今から楽しみ」
鼻歌交じりでテンションを上げていくキシャナは長耳を上下に揺らしてご機嫌のようだ。
キシャナを見ていると、ルトルスに斬られそうになったり、リィーシャさんに説教されたりと苦労した甲斐はあるなとシェーナは思い返して苦笑いする。
「ご飯物だと、やっぱり牛丼や親子丼もいいけど、海鮮丼も作ってみたいね」
「海鮮丼か。プライデンは内陸国だから魚は無理だろ」
前世なら空路、海路、陸路を駆使して当たり前に運送できるだろう。
異世界だと、運送方法が馬車を引いて荷を運ぶのが基本になっているので、内陸国のプライデンで鮮魚を卸すことはできない。
「グラナの瞬間魔法を使えば、魚は手に入るかもしれないね」
「それは俺も考えたが、魚が獲れる国はスエード、リンスル、ハシェルぐらいだろうな」
「どの国も厄介なところだね」
キシャナはグラナの瞬間魔法を提案するが、肝心の魚が獲れる国々が問題だった。
スエードは国柄、リンスルはカリューの件でシェーナはマークされている可能性があるし、キシャナやルトルスを送り込むことはできない。最後に残ったハシェルだが、同僚や古参の騎士に姿を見られたら一発でアウトだろう。母国を捨てた理由やキシャナ達と一緒にいることを問い質されれば、シェーナを含めてウラバルト家の処分は免れない。
「こればかりは仕方ないね」
「……すまないな」
「シェーナが謝ることないよ。魚が駄目でも、肉や野菜は十分に使えるからね」
意気消沈する二人はそんな会話をしている間に、サリーニャの工房へ辿り着いた。
営業中の立て札があるのを確認して中を覗くと、サリーニャは中央の釜を使用して錬金術の作業に没頭しているようだ。
作業中に声をかけるのは気が引けたので、タイミングを見計らってシェーナはサリーニャに声をかける。
「錬金術の作業中にすまない。炊飯器を受け取りに来たんだけど、完成しているかい?」
「ああ……君と人妻ダークエルフか。夫婦揃って家電製品の下見か」
「はは、相変わらずだね。昨日は夕食のお釣りを受け取らないで帰るなんて」
「夕食? 私は昨日ずっと工房で仕事をしていたから、君のところで食事はしてないわよ」
サリーニャは釜から離れると、シェーナの言葉に首を傾げる。
どうやら昨日は錬金術の作業が溜まっていたらしく、一歩も外へ出ていなかったと言う。
「疑うなら、アシスタントの子達にも聞いていいわよ。昨日は仕事で忙しかったのよ」
「そんな……じゃあ、あれは一体誰だったんだ?」
「考えられるのは二つ。一つは寝ぼけて夢を見ていたか。もう一つは神様の気まぐれか悪戯じゃないかしら?」
いや、提供した中華丼の食材は綺麗になくなっていたし寝ぼけていたと言うのは考え難い。
神様がサリーニャの姿に化けて訪れていたなら、グラナの変身魔法を見れば完成度は高い。
そういえば、グラナが意味深なことを呟いていたが、もしかしたら本当に神様だったのかもしれない。
「それより炊飯器だけど、人妻ダークエルフに炊飯器の使い心地を確かめてもらうために、ここでご飯を炊いてみましょうか」
「それって自分がご飯を食べたいだけだろ?」
「女騎士は黙っていなさい。お米はこちらで用意するから頼めるかしら?」
「私は全然構わないよ! むしろ早く使ってみたい」
キシャナは快諾すると、長耳が荒ぶったような動きを見せる。
その様子をサリーニャは感心したように見つめると一言。
「……『絶頂のダークエルフ』って同人誌でも描こうかしら」
「いいから、早く炊飯器を頼むよ」
「はいはい、せっかちな女騎士だね」
サリーニャは二人を以前ルトルスと入った地下の仕事まで案内すると、部屋の奥に炊飯器らしき形をした物が見受けられた。
「まさか炊飯器が手に入るなんて夢のようだよ」
「冷蔵庫を含めて家電製品を異世界で使えるとは思っていなかったからね」
「そうだね。ご飯物の料理はだいぶ時短できるようになるから、今から楽しみ」
鼻歌交じりでテンションを上げていくキシャナは長耳を上下に揺らしてご機嫌のようだ。
キシャナを見ていると、ルトルスに斬られそうになったり、リィーシャさんに説教されたりと苦労した甲斐はあるなとシェーナは思い返して苦笑いする。
「ご飯物だと、やっぱり牛丼や親子丼もいいけど、海鮮丼も作ってみたいね」
「海鮮丼か。プライデンは内陸国だから魚は無理だろ」
前世なら空路、海路、陸路を駆使して当たり前に運送できるだろう。
異世界だと、運送方法が馬車を引いて荷を運ぶのが基本になっているので、内陸国のプライデンで鮮魚を卸すことはできない。
「グラナの瞬間魔法を使えば、魚は手に入るかもしれないね」
「それは俺も考えたが、魚が獲れる国はスエード、リンスル、ハシェルぐらいだろうな」
「どの国も厄介なところだね」
キシャナはグラナの瞬間魔法を提案するが、肝心の魚が獲れる国々が問題だった。
スエードは国柄、リンスルはカリューの件でシェーナはマークされている可能性があるし、キシャナやルトルスを送り込むことはできない。最後に残ったハシェルだが、同僚や古参の騎士に姿を見られたら一発でアウトだろう。母国を捨てた理由やキシャナ達と一緒にいることを問い質されれば、シェーナを含めてウラバルト家の処分は免れない。
「こればかりは仕方ないね」
「……すまないな」
「シェーナが謝ることないよ。魚が駄目でも、肉や野菜は十分に使えるからね」
意気消沈する二人はそんな会話をしている間に、サリーニャの工房へ辿り着いた。
営業中の立て札があるのを確認して中を覗くと、サリーニャは中央の釜を使用して錬金術の作業に没頭しているようだ。
作業中に声をかけるのは気が引けたので、タイミングを見計らってシェーナはサリーニャに声をかける。
「錬金術の作業中にすまない。炊飯器を受け取りに来たんだけど、完成しているかい?」
「ああ……君と人妻ダークエルフか。夫婦揃って家電製品の下見か」
「はは、相変わらずだね。昨日は夕食のお釣りを受け取らないで帰るなんて」
「夕食? 私は昨日ずっと工房で仕事をしていたから、君のところで食事はしてないわよ」
サリーニャは釜から離れると、シェーナの言葉に首を傾げる。
どうやら昨日は錬金術の作業が溜まっていたらしく、一歩も外へ出ていなかったと言う。
「疑うなら、アシスタントの子達にも聞いていいわよ。昨日は仕事で忙しかったのよ」
「そんな……じゃあ、あれは一体誰だったんだ?」
「考えられるのは二つ。一つは寝ぼけて夢を見ていたか。もう一つは神様の気まぐれか悪戯じゃないかしら?」
いや、提供した中華丼の食材は綺麗になくなっていたし寝ぼけていたと言うのは考え難い。
神様がサリーニャの姿に化けて訪れていたなら、グラナの変身魔法を見れば完成度は高い。
そういえば、グラナが意味深なことを呟いていたが、もしかしたら本当に神様だったのかもしれない。
「それより炊飯器だけど、人妻ダークエルフに炊飯器の使い心地を確かめてもらうために、ここでご飯を炊いてみましょうか」
「それって自分がご飯を食べたいだけだろ?」
「女騎士は黙っていなさい。お米はこちらで用意するから頼めるかしら?」
「私は全然構わないよ! むしろ早く使ってみたい」
キシャナは快諾すると、長耳が荒ぶったような動きを見せる。
その様子をサリーニャは感心したように見つめると一言。
「……『絶頂のダークエルフ』って同人誌でも描こうかしら」
「いいから、早く炊飯器を頼むよ」
「はいはい、せっかちな女騎士だね」
サリーニャは二人を以前ルトルスと入った地下の仕事まで案内すると、部屋の奥に炊飯器らしき形をした物が見受けられた。
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