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第77話 頑固者

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 休憩を終えたペトラと入れ違いになってルトルスが休憩に入ると、シェーナはお茶をルトルスに差し出した。

「お疲れ様。一息入れなよ」
「ありがとう。ペトラとすれ違ったが、随分と嬉しそうだったな」
「まあ……色々とね。それより、ルトルスにも三種のおにぎりを作るよ」

 シェーナは手際良くおにぎりを三角の形で握っていく。

「へぇ……改めて見ると、綺麗な三角に握ってあるな。これも前世で培った技術なのか?」
「まあね。丸でもいいけど、三角が主流だね。コツさえ掴めばルトルスも三角に握れるよ。塩むすびも上手にできてたし、今夜が楽しみだよ」
「ふふ……頂くとしよう」

 ルトルスは梅干しのおにぎりを口に入れると、慣れない梅干しの酸っぱさに表情を曇らせると種を吐き出して冷えたお茶を流し込む。
 シェーナはルトルスの背中をさすって介抱する。

「そういえば、梅干しは初めてか。酸っぱいのが苦手だったら、すまなかった」
「いや……最初の一口は驚いたけど、ご飯の甘みと梅干しの酸っぱさが絡み合って美味しいよ」

 もう一度、ルトルスは食べかけのおにぎりを口に入れると右手の親指と人差し指で丸を作ってみせる。
 残っている高菜と唐揚げのおにぎりを平らげると、お茶を一口飲んで満腹になる。

「ごちそうさま。どれも美味しかったが、私は唐揚げが好みだな。シェーナの好きな具は?」
「この中なら高菜かな。一番好きな具は鮭だけど、魚は獲れないからなぁ」
「魚類か。ガフェーナは海に面して主食だったが、プライデンは内陸国か。私がガフェーナに赴いて魚を獲りに行ってもいいぞ?」
「そんな危険なことはさせないよ。また毒を盛られたら大変だし、死にかけのルトルスを介抱するのはもう御免だよ!」

 シェーナは悲痛な叫びでルトルスを引き止める。
 ガフェーナはリンスルと戦争を継続中で、そこにルトルスを送り込めば生還できる保証はない。ガフェーナの残党勢力かリンスルの神官戦士団に討たれるかもしれないのだ。

「……冗談だ。シェーナを悲しませることをする筈がないだろ? ほら、綺麗な顔に涙は似合わないぞ」
「オッサンをからかうもんじゃないぞ。全く……困った女騎士だな」
「ふっ、それはお互い様だろう」
「頑固で冗談好きな女騎士はお互い様か」

 ルトルスは笑いを堪えながら突っ込みを入れると、シェーナは釣られて豪快に笑い出す。
 休憩時間がそろそろ終わろうとすると、グラナが休憩室に入って交代する。
 二人は持ち場に戻ると、頑固者同士で夕方の営業まで仕事を続けた。
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