群雄割拠した異世界では訳アリな人物で溢れていた

霧矢風月

文字の大きさ
79 / 110

第79話 好感度の数値化

しおりを挟む
 受付の順番が回ってくると、受付嬢に必要な書類を提出して申請が通るまで二人は椅子に腰を掛けて待機する。

「こうして二人で話していると、周囲からどんな風に見られていると思います?」
「……さあな。そんなこと意識して考えていなかったから」
「シェーナさんは美人ですから、人目を惹いて目立っていますよ。男性の視線は勿論ですが女性からも目に留まって、一緒にいる女性は羨ましいなと」
「人の心を盗み聞きするのは感心しないぞ。それにペトラも美人だろ」

 ペトラが神様と言う立場上、シェーナは心を読めることに別段驚かなった。
 シェーナの性別や容姿について他者から見れば贅沢な悩みかもしれないが、本人にとっては苦労の連続だった。特に思春期を迎える頃は女性らしい肉体と容姿が備わっていくことに動揺して、神様を恨んだりした時期もあった。
 その神様が目の前に現れると、罵声や怒りをぶつけても心に虚しさしか残らなかった。
 ペトラが懸命に尽くそうと努力しているのはシェーナやキシャナに伝わっているので、今できることは現状を受け入れるしかない。

「他人の心を読むのは神様の特権ですよ。いざ願い事を叶えようとした時に相手の考えが分からないと、困るじゃありませんか。シェーナさんやキシャナさんの心も私は理解しているつもりですし、私に対するお怒りの気持ちは分かります」
「……なるべく他人の心は読まないようにしてくれ。人は誰しも聞かれたくない秘密を胸に閉まっている」

 神界では仕事上の都合で仕方ないかもしれないが、地上にいる間はシェーナやキシャナの支援が目的であって、その間に他人の心を盗み聞きされるのは気分が悪い。

「分かりました。そういうことでしたら控えるようにします。シェーナさんのために好感度を数値化したグラフを用意していたのですが、それも破棄します」
「好感度を数値化?」
「ええ、シェーナさんに対する好感度を数値化したグラフです。こういう分析は神界の事務作業で得意なんですよ」

 まるで恋愛ゲームみたいだなとシェーナは思う。
 自分の好感度について興味はないと言ったら嘘になるが、覗いてみたい気持ちはある。

「そのグラフってすぐに見れる物なの?」
「ここでは目立つので、シェーナさんの自室でモニターしますよ」
「……後で誰もいなくなった食堂でこっそり頼むよ」
「了解しました。二人だけの秘密ですね」

 悩んだ末に、シェーナは自身の好感度を確かめることにした。
 それを参考に今後から人の接し方を考える良い機会かもしれない。

「シェーナさんって堅物の女性かと思いましたが、意外とノリがいいですね」
「前世を引きずっている堅物のオッサンだよ」
「すみません。嫌な事を思い出させて……」
「そこは笑って流してくれ。うっかり女神様」
「ははっ、そんな風に呼ばれたのは生まれて初めてですよ。否定できないのが辛いですね」

 シェーナの口元がほころびると、それに釣られてペトラは笑みを浮かべる。
 緊張も良い感じで解れたようなので、これなら大丈夫だろう。
 受付嬢がペトラの名前を呼び出すと、書類を広げて待ち構える。
 シェーナはペトラの背中を押して、書類の審査に臨んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...