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クエストを受けよう!
第76話 クエストを受けよう! 『警戒レベル4発令』
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この夜のご飯は、ミニ・アイの指示で、イシカとホノリ、それにアユさんやアーリくん、オリンもみんなが手伝ってくれた。
もちろんメニューはカレーだ。
この世界で初めて食べるカレーだな。
うん。5千年ぶり? いや、56億7千万年ぶりかもしれないけど……。
うん。もちろん、オレも手伝ったよ? スナイモの皮むきとか、西王母の桃をしぼったりとか……。
「マスター! 完成しました! アイ特製のスパイスたっぷり愛情たっぷりの愛カレーです! お召し上がりくださいませ!」
「おお! すごい! いい香りだ! このウコンの香りがいいね! 食欲をそそる!」
「マスター! ウコンではなく、ソン・ウーコンの肉です。」
「お……おぅ……。ま、どっちでもいいよ。それにしても美味しそうだね!」
カレーに欠かせないお供の漬物は、ラッキョウ魔神漬けが定番とのことだ。
いや……。福神漬けじゃねーのかよ!
なんだよ!? ラッキョウ魔神って……。
味は完全にラッキョウじゃあねぇか!
まあ、ラッキョウも嫌いじゃないけどな。
カレーはこの世界でも一般的な料理らしい。
アーリくんもオリンも、アユさんもみんな知ってるとのことだ。そして大好きと―。
カーロたち黒猫たちには、別にロプノールフィッシュを持ってきていたので、それを炊いたウケモチ米と混ぜて、猫まんまにしたものを作ってあげた。
目を光らせて喜んでいたので、やはり猫は魚が好物みたいだ。
それにマタタビ酒をふんだんに振る舞ったので、しばらく庭の森は黒猫の酔っぱらいがところかまわず寝ていたのだが、まあ、いいだろう。
「いやぁ。わたしもごちそうになっちゃってよかったのかしら?」
アユさんがその大きな体のわりに細やかな気遣いをしてくる。
「いや。ぜんぜん構わないよ。つかむしろ大勢のほうがにぎやかでいいだろ?」
「あらぁ。うれしいこと言ってくれるのね。カーロちゃんもあんなに喜んじゃってるし。ホント、ジンさんみたいないい借り手がついてありがたいわぁ。」
「ジン様……。このスパイス! おいしいでチュね! サソリパウダー入れてもよかったかなぁ。」
「アーリ様! なんでもサソリパウダーかけりゃいいってものじゃあーりませんよ?」
「おお! でもアーリくんの言うようにサソリパウダーかけたら、よけいに辛さがピリピリ増しそうだねぇ。そっちが好みならそれもあーりじゃないか?」
「……オリンもジン様も僕の名前で遊ぶのやめてくれます?」
「イシカもこのカレー美味であると思うゾ!」
「ホノリもこのカレー美味しいと思うのだ!」
あれ? イシカもホノリもカレー食べちゃっていいのか?
(回答します! イシカもホノリも、その内蔵されているエンジンが内臓のようにあらゆる物質を素粒子分解して、高エネルギーに変換することができます。)
(え? じゃあ、前になにかロボットの材料みたいなのを食べてたのは?)
(基本的になんでも食べられます。)
(そうなのか! しかし、内蔵されているエンジン、すごい高性能だね。)
(イエス! その名も『内臓エンジン』と言います。ライブメタル同様に、生きたエンジンです。)
内蔵された『内臓エンジン』って、ダジャレかよ!?
そんなこんなで、オレたちはみんなで美味しく夕食のカレーを食べたのだった。
◇◇◇◇
翌日―。
オレたちはさっそく、バロン男爵の農園に向かうことにした。
朝食は昨日の夕食のカレーをパンに挟んだ、カレーサンドだった。
カレーは2日目が美味しいっていうよね。
うん。実証されたな。カレーサンド、めちゃくちゃ美味しかったよ。
南の門に向かって大通りを進んでいくと、何だか門のあたりに人だかりができていた。
何か騒ぎになっているらしい。
「なんだろう? なにか事件かな?」
「マスター! 周囲の者の会話を解析しました。街の外に魔物が現れた様子です。」
「魔物だって!? これは、冒険者としては見過ごせないよね?」
「ジン様! あそこに門番のテンさんがいます! 事情を聞いてみましょう!」
おお! オリン、さすがに忍者。目がいいね。
「テンさーん!!」
「おお! ジンさん! 危険です! この門の外にAランクの魔物が現れて、警戒レベル4が発令されました! この門の付近から速やかに避難してください!」
「警戒レベル4っていうのは?」
「はい! 警戒レベルは都市に定められた警戒の危険度のレベルです。全部で1から5まであって、警戒レベル4は、対象地域住民のうち危険な場所にいる人は全員避難するレベルです。
都市から警戒レベル4『避難勧告』や『避難指示(緊急)』が発令された段階なんです! 今、冒険者ギルドと女王の宮城からの対策の指示を待っているところです!」
かなり危険な状況らしい……。
「Aランクの魔物だって言ったよね!? どんな魔物なんだ?」
「サンドドラゴンです! 砂竜……しかも今までにみたことがないほど巨大ボスクラスの砂竜が現れました! 今、『イラム』にはSランクの冒険者はいません!
Aランクの冒険者たちを集めているところでしょう! ジンさんたちもできればこのまま待っていてください!!」
あ……!! これ、なんだかまずい展開だ……。
砂竜のボスクラスって……。あいつだよね? 砂竜のボス・ガレオンだよね……。やっぱり。
そういえば、おとなしく待ってろって言ってそのまま放置プレーだったっけ……。
(マスター! ガレオンは地中で待機しているはずですが……。)
(そ……そうだよね。なにかあったのかな?)
「あーあー。テンさん。ちょっとオレに心当たりがあるから、門、通してくれないかな?」
「なんですって!? いくらジンさんでも一人では危ないですよ!」
「まあまあ。そこをなんとか……。砂竜に心当たりがあるんだよ。」
「ええ!? 砂竜にですか!? 災害Aランクの砂竜ですよ!」
「テン。マスターがこうおっしゃっているのです。門を開けなさい。ワタクシたちが外へ出たら閉めて構わないですから。」
「アイさん……。わかりました。そこまでおっしゃるなら、責任は取りませんよ?」
こうして、テンさんはオレたちだけを外に出して、門をまた閉めた。
オレは砂嵐が起きている目の前の荒野をじっくり目を凝らして見る。
砂風の中、大きな竜の姿が見える……。
それともうひとつ、巨大な影が見える。
どうやら、2匹の巨大な魔物が戦っているようだ。
「ジン様! あれはガレオンです! それともう1匹巨大な魔物が!」
「あれは! オオムカデ! しかも大きいです!」
アーリくんとオリンが口々に叫んだ。
オオムカデ……か。
「マスター! オオムカデは妖怪の1種で、三上山に山を七巻き半するほどの超巨大な百足の妖怪が出没し、平将門を討伐する藤原秀郷の武勇伝の一つとして知られています!」
「なるほど! そんな妖怪がアレだというわけか……。」
「ジン様! イシカに任せるのであるゾ!」
「ジン様! ホノリに任せるのだ!」
イシカとホノリがそう言ってオレをじっと見る。
なるほどね。巨大生物には、やはりアラハバキだよね。
「よし! アラハバキ! あのオオムカデを取り押さえろ!」
「「了解である! なのだ!!」」
二人が元気よく返事をして、前に走っていく。
「フュージョン!!」
と二人が叫んだ途端、周囲の超ナノテクマシンが巨大な機械のパーツとなって、どんどん合体していき、巨大な全長100mの超巨大土偶の姿になったのだ。
「なんと! これが噂に聞いていたイシカ様とホノリ様のゴーレム!!」
「お……おっきぃ……ですね……。」
アーリくんとオリンは丸い目をさらに丸くしている。
巨大土偶戦士アラハバキよ! 行け! 戦うのだ!!
……って違う話に変わってない? これ!
~続く~
この夜のご飯は、ミニ・アイの指示で、イシカとホノリ、それにアユさんやアーリくん、オリンもみんなが手伝ってくれた。
もちろんメニューはカレーだ。
この世界で初めて食べるカレーだな。
うん。5千年ぶり? いや、56億7千万年ぶりかもしれないけど……。
うん。もちろん、オレも手伝ったよ? スナイモの皮むきとか、西王母の桃をしぼったりとか……。
「マスター! 完成しました! アイ特製のスパイスたっぷり愛情たっぷりの愛カレーです! お召し上がりくださいませ!」
「おお! すごい! いい香りだ! このウコンの香りがいいね! 食欲をそそる!」
「マスター! ウコンではなく、ソン・ウーコンの肉です。」
「お……おぅ……。ま、どっちでもいいよ。それにしても美味しそうだね!」
カレーに欠かせないお供の漬物は、ラッキョウ魔神漬けが定番とのことだ。
いや……。福神漬けじゃねーのかよ!
なんだよ!? ラッキョウ魔神って……。
味は完全にラッキョウじゃあねぇか!
まあ、ラッキョウも嫌いじゃないけどな。
カレーはこの世界でも一般的な料理らしい。
アーリくんもオリンも、アユさんもみんな知ってるとのことだ。そして大好きと―。
カーロたち黒猫たちには、別にロプノールフィッシュを持ってきていたので、それを炊いたウケモチ米と混ぜて、猫まんまにしたものを作ってあげた。
目を光らせて喜んでいたので、やはり猫は魚が好物みたいだ。
それにマタタビ酒をふんだんに振る舞ったので、しばらく庭の森は黒猫の酔っぱらいがところかまわず寝ていたのだが、まあ、いいだろう。
「いやぁ。わたしもごちそうになっちゃってよかったのかしら?」
アユさんがその大きな体のわりに細やかな気遣いをしてくる。
「いや。ぜんぜん構わないよ。つかむしろ大勢のほうがにぎやかでいいだろ?」
「あらぁ。うれしいこと言ってくれるのね。カーロちゃんもあんなに喜んじゃってるし。ホント、ジンさんみたいないい借り手がついてありがたいわぁ。」
「ジン様……。このスパイス! おいしいでチュね! サソリパウダー入れてもよかったかなぁ。」
「アーリ様! なんでもサソリパウダーかけりゃいいってものじゃあーりませんよ?」
「おお! でもアーリくんの言うようにサソリパウダーかけたら、よけいに辛さがピリピリ増しそうだねぇ。そっちが好みならそれもあーりじゃないか?」
「……オリンもジン様も僕の名前で遊ぶのやめてくれます?」
「イシカもこのカレー美味であると思うゾ!」
「ホノリもこのカレー美味しいと思うのだ!」
あれ? イシカもホノリもカレー食べちゃっていいのか?
(回答します! イシカもホノリも、その内蔵されているエンジンが内臓のようにあらゆる物質を素粒子分解して、高エネルギーに変換することができます。)
(え? じゃあ、前になにかロボットの材料みたいなのを食べてたのは?)
(基本的になんでも食べられます。)
(そうなのか! しかし、内蔵されているエンジン、すごい高性能だね。)
(イエス! その名も『内臓エンジン』と言います。ライブメタル同様に、生きたエンジンです。)
内蔵された『内臓エンジン』って、ダジャレかよ!?
そんなこんなで、オレたちはみんなで美味しく夕食のカレーを食べたのだった。
◇◇◇◇
翌日―。
オレたちはさっそく、バロン男爵の農園に向かうことにした。
朝食は昨日の夕食のカレーをパンに挟んだ、カレーサンドだった。
カレーは2日目が美味しいっていうよね。
うん。実証されたな。カレーサンド、めちゃくちゃ美味しかったよ。
南の門に向かって大通りを進んでいくと、何だか門のあたりに人だかりができていた。
何か騒ぎになっているらしい。
「なんだろう? なにか事件かな?」
「マスター! 周囲の者の会話を解析しました。街の外に魔物が現れた様子です。」
「魔物だって!? これは、冒険者としては見過ごせないよね?」
「ジン様! あそこに門番のテンさんがいます! 事情を聞いてみましょう!」
おお! オリン、さすがに忍者。目がいいね。
「テンさーん!!」
「おお! ジンさん! 危険です! この門の外にAランクの魔物が現れて、警戒レベル4が発令されました! この門の付近から速やかに避難してください!」
「警戒レベル4っていうのは?」
「はい! 警戒レベルは都市に定められた警戒の危険度のレベルです。全部で1から5まであって、警戒レベル4は、対象地域住民のうち危険な場所にいる人は全員避難するレベルです。
都市から警戒レベル4『避難勧告』や『避難指示(緊急)』が発令された段階なんです! 今、冒険者ギルドと女王の宮城からの対策の指示を待っているところです!」
かなり危険な状況らしい……。
「Aランクの魔物だって言ったよね!? どんな魔物なんだ?」
「サンドドラゴンです! 砂竜……しかも今までにみたことがないほど巨大ボスクラスの砂竜が現れました! 今、『イラム』にはSランクの冒険者はいません!
Aランクの冒険者たちを集めているところでしょう! ジンさんたちもできればこのまま待っていてください!!」
あ……!! これ、なんだかまずい展開だ……。
砂竜のボスクラスって……。あいつだよね? 砂竜のボス・ガレオンだよね……。やっぱり。
そういえば、おとなしく待ってろって言ってそのまま放置プレーだったっけ……。
(マスター! ガレオンは地中で待機しているはずですが……。)
(そ……そうだよね。なにかあったのかな?)
「あーあー。テンさん。ちょっとオレに心当たりがあるから、門、通してくれないかな?」
「なんですって!? いくらジンさんでも一人では危ないですよ!」
「まあまあ。そこをなんとか……。砂竜に心当たりがあるんだよ。」
「ええ!? 砂竜にですか!? 災害Aランクの砂竜ですよ!」
「テン。マスターがこうおっしゃっているのです。門を開けなさい。ワタクシたちが外へ出たら閉めて構わないですから。」
「アイさん……。わかりました。そこまでおっしゃるなら、責任は取りませんよ?」
こうして、テンさんはオレたちだけを外に出して、門をまた閉めた。
オレは砂嵐が起きている目の前の荒野をじっくり目を凝らして見る。
砂風の中、大きな竜の姿が見える……。
それともうひとつ、巨大な影が見える。
どうやら、2匹の巨大な魔物が戦っているようだ。
「ジン様! あれはガレオンです! それともう1匹巨大な魔物が!」
「あれは! オオムカデ! しかも大きいです!」
アーリくんとオリンが口々に叫んだ。
オオムカデ……か。
「マスター! オオムカデは妖怪の1種で、三上山に山を七巻き半するほどの超巨大な百足の妖怪が出没し、平将門を討伐する藤原秀郷の武勇伝の一つとして知られています!」
「なるほど! そんな妖怪がアレだというわけか……。」
「ジン様! イシカに任せるのであるゾ!」
「ジン様! ホノリに任せるのだ!」
イシカとホノリがそう言ってオレをじっと見る。
なるほどね。巨大生物には、やはりアラハバキだよね。
「よし! アラハバキ! あのオオムカデを取り押さえろ!」
「「了解である! なのだ!!」」
二人が元気よく返事をして、前に走っていく。
「フュージョン!!」
と二人が叫んだ途端、周囲の超ナノテクマシンが巨大な機械のパーツとなって、どんどん合体していき、巨大な全長100mの超巨大土偶の姿になったのだ。
「なんと! これが噂に聞いていたイシカ様とホノリ様のゴーレム!!」
「お……おっきぃ……ですね……。」
アーリくんとオリンは丸い目をさらに丸くしている。
巨大土偶戦士アラハバキよ! 行け! 戦うのだ!!
……って違う話に変わってない? これ!
~続く~
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