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黙示録戦争後に残された世界でたった一人冷凍睡眠から蘇ったオレの日常

ありふれた日常 第2話『セラエノ図書館で』

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 黙示録の最終戦争は実際に起きてしまった……そして、人類は一度滅亡した。

 だが、もう一度世界は創生され、新しい魔法文明が栄えた世界となっていた。

 ところが、そんな中、冷凍睡眠されていたジンはなんと蘇生されてしまったのだ。


 ジンを目覚めたのは自分の自宅が魔改造された超人工頭脳のアイが管理する『霧越楼閣』。

 そして、ジンの部屋はその膨大なアニメの円盤やマンガの蔵書、フィギュアのコレクションなどから、知恵の宝庫『セラエノ図書館』と呼ばれているのであったー。



 さて、ある日のオレの自宅『霧越楼閣』でのこと……。


 「おーい。ラバン教授、いるかい?」

 「ああ。その声はヒルコ様ですね? 図書館会員ナンバー003、確認致しました。どうぞ! お入りくださいませ。」


 真ん中に座していた奇妙な円錐型の生物は、ラバン教授と呼ばれる。この『セラエノ図書館』の管理人なのだ。




 「へへぇ。僕が会員ナンバー001のジン様と、会員ナンバー002のアイ様に続いて初めての会員なんだよねー。」

 「はい。ヒルコ様。そのとおりでございます。会員が増えて私、ラバンも嬉しく思います。」


 「あれ? ズッキーニャじゃぁない?」

 「あ! ヒルコたん! おはよう!」

 「うんうん。ズッキーニャもマンガを読みに来てたの?」

 「うん。だって……。とっても面白いんですもん!」





 「あ! ヒルコ様。おはようございます!」

 「おー! モルジアナぁー! そっか! 君はズッキーニャの先生だったねぇ!」

 「はい。そうなんです! でも、このジン様の『セラエノ図書館』はすごいですね! 感動の宝石箱です!」



 「まあ! みなさん、ここにいたのね?」

 「おー! アイ様。」

 「あ! アイ様ぁ!」

 ズッキーニャも笑顔でアイを迎える。



 「アイ様。たしかに会員ナンバー002確認致しました。どうぞ。お入りください。」

 ラバン教授が案内してくる。


 「おー! 会員ナンバー002! すごい! すごい! 私は会員ナンバー007だよ!」

 「はい。ズッキーニャはワタクシたちマスターの下僕に続いて初めての会員よ? 誇りに思うことね?」

 「うん! わーい! わーい!」

 「モルジアナは何番なんだぁい?」

 「ええ。私は会員ナンバー011ですわ。」

 「僕、003なんだよ? いいでしょぉ?」

 「ええ。ヒルコ様。羨ましいですわ。」

 「えっへん!」



 「あのね! あのね! アイ様! おら……。あ、わたしは『もろこし姫』が好き!」

 「あら? そうね。『もろこし姫』はいいお話でしたわね。宮崎パヤオ監督の最高傑作のひとつと言われてましたわ。」

 「私は『おそ丸さま』の声優さんが素敵だと思いましたわ。」

 「ほぉ? モルジアナ。貴女もそっちの世界に目覚めたのかしら?」

 「まあ? アイ様ったら。ふふふ……。」





 「僕は『ハムスター×ハムスター』の続きが知りたいなぁ……。」

 「ああ。ヒルコ。それはワタクシもですよ。暗黒大陸編がどうなったか、知りたいですよねぇ……。」

 「続きはないんだっけ? ラバン教授?」

 「ええ。数億年かけて探しましたが、どうも見当たりませんでした。」

 「あーあ。原作者のトガッシー・ヨシ先生、未完のままだったんだねぇ……。」

 「そうね。完成していないだなんて……。本当に罪深いことですわ。」



 「今、彼の思考の痕跡や作風の解析、さらに彼の精神情報を解析しています。解析完了したら、AI・トガッシー・ヨシ先生を完成させ、続編を書かせたいと考えてますわ。」

 「おお! アイ様。それはすごい! 楽しみだぁ!」

 「わぁ! 私も読みたぁい!」

 「それは、私も読みたいです!」

 「恐れながら、ワタシも読みとうございますな。」

 ラバン教授も楽しみのようだ。

 たしかにこの『セラエノ図書館』に新作がはいるなんて56億7千万年ぶりになるんだからな。





 頼みます! トガッシー先生! 完結させてください!


 なんてね。


~続く~

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