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取ラバガニ (完結)
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野奈は、大きなおなかをドスンとおしつけて、ベッドの上にうつぶせに寝ました。そして、布団の下にかくしてあったチョコバーを、口にくわえて、漫画本を開きました。
「なにやっているの。はしたない!」
「な、なにさママ。ノックぐらいしてよ」
「そんなんだから太るのよ。間食はひかえるようにって、学校からも言われたんでしょ。五年にもなって、少しは自覚しなさいよ!」
ママはチョコバーを取り上げると、出て行きました。
「ふーんだ。お菓子はまだあるんだから」
立ち上がって、本棚へ向かいました。すると、そのときです。
「こんにちは」
野奈の小さな目が、大きく見開かれました。窓辺に、だいだい色をしたカニがいたのです。
「か、カニがしゃべった」
「私は取ラバガニ。税務署の方《ほう》から参りました」
「方《ほう》からって……。ははあサギね。消火器ならお断りだからね」
「違います。ゼイですよ。ゼイ!」
「税ぇ? それって働いている大人が払うものでしょ。私、お金稼いでないよ」
「いいえ! ゼイはここにあります」
カニは、ピョンと飛び跳ねて、野奈のウエストにくっつきました。そして、シャツの上から、ふくらんだお腹に右手のハサミをあてて、ゆっくりと横に動かしました。
「な、なに?」
おなかがひっこんでいくと同時に、
チョコボールが、ポロン。
ショートケーキが、ポロリ。
ポテトチプッスが、ポテッ。
と、カニの右手から出てきたのです。
しばらくすると、おなかはぺっちゃんこになりました。
「……ど、どういうこと」
「肥満の原因となった食べ物ですよ」
カニは、用意した袋にお菓子をつめると、
「どうも、お納めいただきごくろう様でした。じゃ、これで失礼します」
といって、背を向けました。
「ちょ、ちょっと、まちなさいよ」
野奈は、カニの甲羅をつかみました。
「フトモモのゼイもとっていきなさいよ」
「それじゃ。ゼイのとりすぎになりますよ」
「本人が納めたいっていうの! 素直にとっていきなさいよ」
「で、でも……」
「やらないんなら、このままかまゆでにして、足をむしって食べちゃうわよ!」
「ひ~。わ、わかりました。それじゃ、来期分の前納ということで……」
しぶしぶ、野奈のフトモモに張り付くと、ハサミをかざします。
「あ、そうだ。アゴの下と二の腕もお願いね」
「はいはい」
「いっとくけど、胸はダメよ」
『あんたの胸に、余分なゼイはない!』と言いたいのを、カニはぐっとこらえます。
はてさて、はさみをふるって約三十分。
疲れはてて、ぐったりとしたカニを尻目に、野奈は、満面笑顔でとびはねました。
「やったあ。やせた。腕も脚もこんなに」
「それじゃ、ぼくは帰らせていただきますね」
お菓子を袋にいっぱい詰め込むと、カニは出て行きました。
「カニさ~ん。また来年来てね。いっぱい納めちゃうから」
「もう、けっこうです!」
その夜、野奈は、にやけながらフトンの中にもぐりこみました。
へへっ。明日学校にいったら、みんな驚くだろうな。
『野奈ってば、やせたら可愛いわね』
なんて、言われたりして。
ふふ。楽しみ、楽しみ。
にやつきながら、眠りました。
翌朝です。
目を覚ました野奈は、あっと声をあげそうになりました。
お腹が、元通り太鼓腹になっていたのです。
「どういうことよ。まさか、夢?」
けれど、腕と太ももは細いままです。
気がつくと、枕元にブルーの手紙が置いてありました。
野奈さんへ
上司に「ゼイの取り過ぎだぞ!」と、おこられてしまいました。
というわけで、余分なゼイをお返ししておきました。
また来年以降、いただきにまいりますね。
取ラバガニ
「も~ぉ。だからって、まとめておなかにくっつけなくてもいいでしょ! バカバカ!」
野奈は、ぷーっと、顔をふくらませると、細くなった手足をばたつかせて、くやしがるのでした。
「なにやっているの。はしたない!」
「な、なにさママ。ノックぐらいしてよ」
「そんなんだから太るのよ。間食はひかえるようにって、学校からも言われたんでしょ。五年にもなって、少しは自覚しなさいよ!」
ママはチョコバーを取り上げると、出て行きました。
「ふーんだ。お菓子はまだあるんだから」
立ち上がって、本棚へ向かいました。すると、そのときです。
「こんにちは」
野奈の小さな目が、大きく見開かれました。窓辺に、だいだい色をしたカニがいたのです。
「か、カニがしゃべった」
「私は取ラバガニ。税務署の方《ほう》から参りました」
「方《ほう》からって……。ははあサギね。消火器ならお断りだからね」
「違います。ゼイですよ。ゼイ!」
「税ぇ? それって働いている大人が払うものでしょ。私、お金稼いでないよ」
「いいえ! ゼイはここにあります」
カニは、ピョンと飛び跳ねて、野奈のウエストにくっつきました。そして、シャツの上から、ふくらんだお腹に右手のハサミをあてて、ゆっくりと横に動かしました。
「な、なに?」
おなかがひっこんでいくと同時に、
チョコボールが、ポロン。
ショートケーキが、ポロリ。
ポテトチプッスが、ポテッ。
と、カニの右手から出てきたのです。
しばらくすると、おなかはぺっちゃんこになりました。
「……ど、どういうこと」
「肥満の原因となった食べ物ですよ」
カニは、用意した袋にお菓子をつめると、
「どうも、お納めいただきごくろう様でした。じゃ、これで失礼します」
といって、背を向けました。
「ちょ、ちょっと、まちなさいよ」
野奈は、カニの甲羅をつかみました。
「フトモモのゼイもとっていきなさいよ」
「それじゃ。ゼイのとりすぎになりますよ」
「本人が納めたいっていうの! 素直にとっていきなさいよ」
「で、でも……」
「やらないんなら、このままかまゆでにして、足をむしって食べちゃうわよ!」
「ひ~。わ、わかりました。それじゃ、来期分の前納ということで……」
しぶしぶ、野奈のフトモモに張り付くと、ハサミをかざします。
「あ、そうだ。アゴの下と二の腕もお願いね」
「はいはい」
「いっとくけど、胸はダメよ」
『あんたの胸に、余分なゼイはない!』と言いたいのを、カニはぐっとこらえます。
はてさて、はさみをふるって約三十分。
疲れはてて、ぐったりとしたカニを尻目に、野奈は、満面笑顔でとびはねました。
「やったあ。やせた。腕も脚もこんなに」
「それじゃ、ぼくは帰らせていただきますね」
お菓子を袋にいっぱい詰め込むと、カニは出て行きました。
「カニさ~ん。また来年来てね。いっぱい納めちゃうから」
「もう、けっこうです!」
その夜、野奈は、にやけながらフトンの中にもぐりこみました。
へへっ。明日学校にいったら、みんな驚くだろうな。
『野奈ってば、やせたら可愛いわね』
なんて、言われたりして。
ふふ。楽しみ、楽しみ。
にやつきながら、眠りました。
翌朝です。
目を覚ました野奈は、あっと声をあげそうになりました。
お腹が、元通り太鼓腹になっていたのです。
「どういうことよ。まさか、夢?」
けれど、腕と太ももは細いままです。
気がつくと、枕元にブルーの手紙が置いてありました。
野奈さんへ
上司に「ゼイの取り過ぎだぞ!」と、おこられてしまいました。
というわけで、余分なゼイをお返ししておきました。
また来年以降、いただきにまいりますね。
取ラバガニ
「も~ぉ。だからって、まとめておなかにくっつけなくてもいいでしょ! バカバカ!」
野奈は、ぷーっと、顔をふくらませると、細くなった手足をばたつかせて、くやしがるのでした。
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