元魔法少女は魔王に食される

アジサイ

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喪女でもストーカーがつく

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数週間前からポストに入っていた手紙の封が開けられているようになった
私の手元に来る前に、まるで選別をしたあとに重要な書類とそうでないものに区別され、あらかじめチラシなどの類は捨てられていた
気味が悪いとは思ったが、魔法少女の職を引き継いだ頃から変な手紙が来ていたので、それを読む前に処分してくれている誰かにほんの少しだけ感謝していた

特に家までつけられている気配もなく、家の中を荒らされ、、あぁ、部屋の掃除はしてくれていたな
とにかく私に対してプラスにしか働かないストーカー?を通報するほどの元気はない
10年近く務めていた会社に新しい常務が来てから、それまでホワイトだった業務が身を削るほどのブラックに転身してしまった
日をまたぐほどの残業はほぼ毎日、身も心も些細な生活につぎ込むほどの体力が残っていない
そんな所に掃除、洗濯、ご飯までを用意してくれるストーカーについつい甘えてしまっている

「はぁ、疲れた」

部屋に入り、電気をつければ今日の朝脱ぎっぱなしにした下着や寝巻き、靴下なども綺麗に畳まれていた
もちろん柔軟剤香る洗濯済み
どうしようもなく、この数週間が楽すぎて、ついついだらしなく過ごしてしまっている

「ありがとう、ストーカーさん」

誰もいない部屋で呟く言葉が相手に伝わっているのかは分からないが
心から感謝している
そして、習慣のように私は今日あった出来事を部屋の中で愚痴るのだ
なにぶん防犯対策のしっかりした部屋に引っ越してから、隣人のことを気にすることなく話している
気味の悪いのは、むしろ私の方だろうか

「、、、で、その上司、私の尻を撫で回すわ揉むわで、、、はぁ、伊藤課長が恋しい」

今日の話題はセクハラ上司の話だ
後輩のミスをわざわざ私を呼びつけては説教し、その度に私の尻を触るのだ
ハゲの肥えたおっさんに触られるのは最悪以上に地獄
しかし喪女たる私の意見なんてないようなもの、ただひたすら耐え、心にとどめる
伊藤課長は入社当初からいた上司で40代のわりに若くてカッコイイ優男だった
密かに恋心を持っていたのは私だけではなく、女子社員のほとんどが彼に酔いしれていた
そんな彼はある日突然、地方の子会社へ飛ばされてしまったのだ
その代わりに今のセクハラ上司が居座っている

「明日は新入社員が来るのに、納期溜め込んだやつ回してくるクソ上司、明日の朝、電車に遅れちゃえ!!」

テーブルに用意されていたご飯を食べつつ、グラスごと丁寧に冷やされていたビールを飲み干し
ふらつく足でシャワーを浴びに浴室へと向かう途中
ピンポーンとインターホンがなった
日付を超えたこの時間に来るなんてどんな非常識なやつだと思って一言言ってやるつもりで玄関ホールのドアを開けてしまった
よく良く考えれば、そんな時間に来たやつを部屋へと通したバカはこんなことになっても言い訳は出来ないだろう
そう、目の前に刃物を持って立ちすくむ男を部屋の前まで通してしまったのだから




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