元魔法少女は魔王に食される

アジサイ

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突然の悪寒!夢じゃないとか怖すぎ

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始発で来たとしても、大体の社員が揃っていることにゾッとしながら
納期間近の仕事を片していく

「はよございまーす」

やる気のない挨拶で
出社ギリギリの時刻に五條ごじょう 雅隆まさたかはやってくる
ブランド物であろうスーツを着こなし、天使の輪が艷めく黒髪を少量のワックスで遊ばせ、仏人の血を引いている顔はモデルが顔負けするほど整っている
そんな彼は同期として仕事はできるがやらない人
伊藤課長がいた頃はそれはもう柴犬のようについて回っていたのに
今の上司になってから、彼もまた変わってしまった

「はよ、田中」

「五條くん、おはよう」

そんな彼は陰キャな私にも分け隔てなく接してくれる数少ない同僚である
隣あったデスクの横へ五條は腰掛けると黒のお洒落なビジネスバックの中を探りだした
そして目当てのものをつかんだのか
私の方へ微笑みを向け
何か掴んでいる手を私に差し出した

「田中これやるよ」

「わっ!これって、限定版プリキュエのはるかちゃんじゃない!どうしたの??」

私の手の中に落とされた一つのキーホルダーは毎週日曜に放送しているアニメのヒロインだ
放送当初からのファンで私の変身姿は彼女に似た衣装にしていた
ピンクのフリルをふんだんに使ったそれは普段の私なら着れない
密かに魔法少女の威を借りて堂々とコスプレできていたのでそれなりに魔法少女を満喫していた

「あー、妹がくれたんだけど俺興味ないし、田中ってオタクだろ?そういうの好きなんじゃないかと思って、、、」

「ありがとう!すごく嬉しい、でも本当にいいの?妹ちゃんがくれたやつでしょ?」

気持ちは嬉しいが、それでは妹ちゃんが報われないのではないか
キーホルダーから視線を外し、五條を見上げるとやっぱりバツの悪そうな顔をしている
社内でぼっち活動をしている私を哀れんでの行動からそうなってしまったのだろう
心苦しいがこれは返そう
手に握っていたキーホルダーを五條の手の中に返すと驚いたように目を見開き私を凝視した

「あ、いや妹じゃ、、、とにかくこれ田中にやるって!」

「いやいや、悪いって、妹ちゃんプリキュエ好きだからきっとお兄さんにも分けてあげたかったんだよ、だから、いっつ!!」

五條と押し問答していると、不意に手首を握られびりりとした痛みが走った

「わりぃ、痛かったか、、、ってなんだこれ!」

私のスーツの袖をまくりだす五條、露わになった手首にはくっきり指の跡が付いていた
今さっき握られたものじゃない、けど手首をこんな強く握られた記憶、、、、

「夢じゃ、なかった、、、」

「夢?」

昨夜の記憶がもし夢でなく、本当のことだったら
ぞっと背筋に悪寒が走った
生々しく残る赤い内出血の痕が昨夜の男の顔をちらつかせた

「な、なんでもないの!これは、最近始めたヨガがあまりにもハードでちょっとしたかすり傷だから、大げさに声上げてごめんね気にしないで、さっ!新入社員が来る前に仕事終わらせなきゃ、必要な資料取ってくるね」

下手な言い訳だと自分でも思う
ヨガでこんな痕つくわけないのに、もうちょっとましな嘘ぐらいつけたらよかった
それでもこれ以上詮索されるよりはマシだ
私にストーカーが付いていた、襲われそうになったなんて、痛い女だと思われてしまう
是非ともそれは避けたい、ただでさえオタク女として浮いているのに
逃げるように自分のデスクから離れ資料室へと足を運んだ

「夢じゃないとして、あの天井は一体、、、まさか本当に魔王だったりして、、はは」

もう乾いた笑みしかでてこない
学生時代から何度も顔を合わせ互いに罵り合いながら戦い続けた魔王とは
なんというか腐れ縁なのだ
魔王と魔法少女になるずっと前からの、、、
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