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第二章
3 ※
しおりを挟む宿に戻り、夜着に着替えて、ベッドの端に腰掛けて、ルカ君を待っていた。
遠慮がちに、ドアを叩く音がする。
「どうぞ」
と、答えると、ドアが開いて、ルカ君が部屋に入ってくる。
「横に座っても良い?」
と、聞かれたので、頷くと、そっと隣に腰掛ける。
「疲れてないかな?」
「うん、大丈夫。温泉で温まったし、元気だよ」
「それなら、良かった」
「ルカ君は? 元気?」
「うん。元気だよ」
「ルカ君、……大きくなってるよね。背も伸びてるし、声も変わってきてるね」
「うん、ミアさんのおかげで、ちゃんと成長できてるよ」
「……良かった」
ルカ君の役に立てている実感があり、しみじみと嬉しくなる。
ルカ君と目が合い、顔が近づく。
「…………触れても良い?」
「うん」
そっと、触れる様にキスをされ、ぎゅっと抱きしめられた。
「良い匂いがする……」
「温泉にあった、良い香りの石鹸を使ったから」
ルカ君が、首筋に顔を埋める。
「……ミアさんは、無防備過ぎるよ」
温泉での事を言ってるのかな……?
「あ、あれは、本当に気づいてなくて……」
「危なっかしくて、どこかに閉じ込めておきたくなる」
「……ルカ君の前だからだよ? 知らない人の前では、簡単に気を許さないよ」
「僕にだって、………簡単に気を許さない方がいいよ」
「……どうして?」
「…………だって、とてもいやらしい事を、ミアさんで、考えてしまうんだ」
思わず顔が熱くなってしまう。
「やらしい事って、いつもしてるみたいな事……?」
「いいや、もっと酷い事」
「……ルカ君は、酷い事なんて、しないよ」
……今日の、温泉でのルカ君を思い出し、色々と我慢させてしまっているのかな。と思う。
未婚の男女が「交わる」場合は、婚約している必要がある。
ルカ君の相手が、本当に私で良いのか分からないまま、最後まではできない、とも思う。
もう、でも、いっそ身を委ねてしまえたら、楽なのにな。と、ずるい事を考えてしまう。
「ルカ君の、……好きにして良いんだよ?」
「っ、そんな事、言っちゃ駄目だよ……」
ベッドの上に、縫いとめる様に押し倒される。
深く口づけられ、そのまま首筋へと舌を這わせる。
「ん……」
鎖骨の窪みに沿って、吸いつく様に口づけられ、
「ぁ、んっ」
夜着の上から、人差し指の爪で、胸の先をかりっと引っ掻かれる。
「んっ」
胸を鷲掴む様に揉まれながら、再び口づけられる。
水音を立てて、口の中を、舌で掻き回されてしまう。
「んっ、は、……ンッ」
夜着の裾をたくし上げ、下着の横から、指を入れられ、ぐちゅぐちゅと音を立てて、激しく動かされる。
「あっ、ゃ、ぁあ、んッ」
下着を剥ぎ取られ、靴を脱がされる。
ルカ君が床に膝をついて、太腿を抱える様に足を開かされた。
「や、」
割れ目に舌を這わせ、小さく粒立った所を、舌先で舐められ、ちゅと吸われる。
「アッ、ん、」
身体が、びくりと反応する。
割れ目を執拗に舐めながら、骨張った手で、夜着の裾を更にたくし上げて、胸を下から形が変わるくらいに揉まれてしまう。
とろとろに溶け切った中に、舌が入り込んで掻き回す様に動かされ、同時に胸の先を弄られる。
「ッ、ンッ」
あまりの刺激に、声も上げられず、身体だけが痙攣する様にびくびくと震える。
中から溢れる様に何かが出てきて、お尻の方まで濡らしてしまっている。
それを、ルカ君が舌で丁寧に舐め取り、内腿に吸いつかれ、ピリッとした刺激が走った。
「ンンッ」
反対側の内腿にも、同じ様に強く吸いつかれる。
「んッ」
ルカ君が身体を起こし、ベッドの上に膝をついて、胸を掴まれる。
胸の先を舌で弄られ、じゅっと吸いついたあとに、扱く様に離された。
「あッ」
「…………ミアさん、いつもより、甘い……」
「や……」
羞恥心で、顔が燃える様に熱くなってしまう。
反対側の胸の先にも、吸いつかれる。
唇を離し、胸を持ち上げる様にして、ルカ君が胸元にキスをする。
「……ミアさんが、僕のものだって分かる様に、痕をつけたいんだ。……どこなら良い?」
「え?」
「ごめん。もう、ここにはつけてしまった」
と、言いながら、内腿に指を這わせる。
「あ……」
内腿の付け根の辺りに、うっすらと赤く色づいているのが見える。
恥ずかしくて、顔が熱くなる。
「や、だめ、胸は、だめ」
「……どうして?」
「セオドアさんに、見られてしまう、から」
「なぜ、セオドアに、見られたら駄目なの?」
攻める様な口調で聞かれてしまう。
「だって、……ルカ君と、そんな事してるって分かっちゃう……」
「…………それの、何が駄目なの?」
ルカ君が、絞る様に声を出す。
「……だって、……セオドアさんには、そんな目で、見られたく、ない、から……」
「……………………性的な、目でって事?」
こくりと頷く。
「……こういう事、ミアさんに出来るのは、僕だけってこと……?」
「そう、だよ。だから、痕は、つけないで、欲しい」
「………………分かった」
ルカ君が、顔を赤らめ、困った様に言う。
ぎゅっと覆いかぶさる様に、抱きしめられた。
「…………ミアさん、大好き」
耳元で、呟く様に言われる。
「うん、私もだよ」
◇◇◇
次の日、温泉の街トロトを後にし、辺境領へと向かう。
辺境領の都タロンは、城塞都市だ。
魔物の森を背にし、街を守る様に城が建てられている。
堅牢なお城の様なお屋敷に到着すると、玄関であろう立派な扉の前に、人が沢山並んでいた。
「ル、ルカ君、沢山の人がいるよ」
「ああ、ミアさんが来てくれたし、僕も久しぶりに帰って来たからじゃないかな」
「私、こんな格好なんだけど、……良いのかな?」
持ってる中で一番いい服だからと、制服で来てしまった……。
「とても可愛いよ。……でも、多分、母さんがいらないって言うほど、色々用意してると思うから、もしミアさんが気に入ったら、着てあげてくれる?」
「え……?」
「さあ、着いたよ!」
ルカ君が、先に馬車を降りて、手を取ってくれる。
執事の様な人が、笑顔で扉を開けてくれる。
大きな扉が開くと、赤髪の美女が、いた。
「いらっしゃい!! こんな辺鄙な所まで、よく来てくれたわね、ミアさん! お聞きしてた通り可愛いらしい方!!」
赤髪の美女に、ぎゅっと手を握られる。
「私はマルティナ。ルカの母よ」
「ミア・カーソンと言います。この度は、お招き下さり、ありがとうございます」
満面の笑みで、手を握られている。
……迫力ある美女だけど、温かい雰囲気の方だな。
「……母さん、手を離して。ミアさんが困ってるよ」
「あら! 一人前に嫉妬かしら?! 度量の狭い男は嫌われるわよ?」
「……父さんには負けるから」
「……まあ、そうね。クレア家の男は、独占欲が強すぎるのが、玉に瑕よね。ミアさん、もし、ルカが無茶をして、困る様な事があったら、すぐに、私に言ってちょうだい。懲らしめてあげるから。ね?」
「は、はい。ありがとうございます」
「ごめんなさい。長旅で疲れてるわよね。お部屋に案内するわね。また、夕食の時に会いましょう。ルカ、ミアさんのお相手、お願いね?」
「もちろん」
笑顔で手を振りながら、執事の様な人と、足早にどこかへ行かれた。
「ルカ様、お帰りなさいませ。ミア様も良く来て下さいました。私は、メイド長のターラと申します。お部屋にご案内いたしますね」
「あ、ありがとうございます」
「ただいま、ターラ」
「坊ちゃん……大きくなられましたね」
ターラさんが、感慨深げに呟く。
「……みんなには、心配をかけたね」
「……ミア様には、……本当に皆、感謝しております」
ターラさんに、目の端を赤くしながら言われる。
「い、いえ、私はただ……」
「その話は、また後でね。早く部屋に行こう」
「はい、そうですね! 申し訳ありません。ご案内いたしますね」
ターラさんが、どこまで知っているか分からないけれど、大っぴらには話しにくい事なので、ルカ君が切り上げてくれてホッとする。
通された部屋は、落ち着いた雰囲気の、素敵なお部屋だった。
「母さんは、もっと女の子らしい、可愛い部屋の方が良いんじゃないかって、内装を変えようとしてたらしいんだけれど、ミアさんの好みと違う気がして、止めたんだ」
「あ……、うん。家具も壁紙も絨毯も、色合いが落ち着いてて、素敵なお部屋だね。というか、私には勿体ないくらい。ありがとう。そんなに、色々と考えて下さって」
「……ごめんね。楽しみにし過ぎてて……」
「ううん。素敵なお母さんだね。明るくて、温かくて、優しくて」
「優しい……、うん、女の子にはそうかもしれない」
ルカ君が、何故か遠い目で呟く。
「ミアさん、荷物が片付いたら、コンサバトリーでお茶しようか」
「あ、うん」
「そうだ、ここにいる間、慣れないかもしれないけど、メイドをつけておくから、何かあれば声をかけてね。ターラの娘の、ナタリーだよ」
「ナタリーと申します。よろしくお願いいたします」
「あ、はい! こちらこそ、よろしくお願いします」
私より少し上位かな? ダークブラウンの髪の、落ち着いた感じのメイドさんだ。
「じゃあ、また後でね」
「うん、ありがとう」
持って来た服を、衣裳ダンスに入れようとしたら、もうすでに沢山の服が入っている……
「……あの、ナタリーさん、これは……」
「こちらは、奥様が、ミア様にとご用意なさったものになります。もし、気に入ったものがあれば、仰って下さい。……今、お召しになりますか?」
「……随分と沢山ありますが……これ全部?」
「はい。ミア様にと。……こちらのデイドレスでしたら、コルセットもつけなくて良いですし、お召しになりやすいかと思います」
淡いグリーンのエンパイアラインの、シンプルなドレスを見せてくれる。
……可愛い。え、こんな素敵なドレスを着ていいの……?
「本当に、良いんでしょうか……?」
「はい。もちろんです。奥様が、ミア様にと張り切ってご用意なさったものですので」
と、ナタリーさんに微笑んで言われる。
せっかく準備して下さったものを、着ないのも失礼になる気がして、お言葉に甘えさせてもらう事にする。
「……じゃあ、着るのを手伝ってくれますか?」
「もちろんです。それが、私の仕事ですので」
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