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コミュニケーション依存
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チャートに示した例題として「コミュニケーションが取れない」と書いたが、
これは多くの人が抱えている悩みであろう。
金銭面や健康面でなければ、だいたいの人は人間関係の悩みに苛まれる。
哺乳動物として、そして群で生活する生き物であるわれわれ人間は、
周りの個体との関係には敏感にならざるを得ない。
まず、母親から授乳してもらうために、自分をアピールしなければならない。
母に忘れられれば、子は飢えて死んでしまう。だから必死に母を呼ぶ。
これを基本にして、自分を生かしてくれている環境を知り、それと付き合って行くのがわれわれの生き方である。それぞれが弱い個体である種族が持つ、生き延びる知恵だ。
ただしこのシステムには欠点がある。
個体が完全に自立できないまま、一生を終えてしまう。
別に問題はないのだが、だがそれは、自分自身もそうだという事なのである。
では自立をするために、社会と縁を切って山奥で暮らす、などという選択は馬鹿げている。やったとしても、怪我や病気になったら人里へ戻ろうとするだろう。
それに、サバイバル生活ができればそれがすなわち自立なのではない。精神的な自立ができなければ意味がないのだ。
精神的な自立とは何か。
周りと繋がっていないと不安であるという、コミュニケーション依存を克服することである。
言葉にするとまったく簡単だ。
では例えば、携帯電話を今すぐ捨てろと言われたらどうなるか。
いろいろデータは入っているし、仕事や交流には欠かせないものだし、捨てた理由も周りに説明しないといけない。試しにやってみたと言っても、周りは変に思うだろう。なくなったと嘘をついても、またすぐに持たなければならなくなる。
と、コミュニケーションに関する心配が一気にあふれる。
特に若い世代には、携帯電話依存と括っていいほどの病的な依存も見受けられる。
自分は一人ではない、誰かが自分を見てくれているはずだという気持ちが常にある。
その人が一人であろうが集団の一員であろうが、まったくどうでもいいことである。
体に不自由がないなら、家族や友人がいなくても、人は普通に生きていける。
だが実際には、誰の支えもなく一人でいることは相当の苦痛である。
理由は上でも言った通り、われわれは生まれたときから周囲の仲間に保護されてきたからである。保護がないと自分で食事もできないという体験を、実際に味わってきたからである。
しかし、成人して知識も体力も備えた個体なら、自分で食料・水を確保して生きていくことなど別段難しくはない。たとえ山で遭難したところで、環境さえ過酷でなければ自ら水を探し、木の実を食べて生き延びようとするだろう。
コミュニケーションに対する依存は、すでに不要になっているのだ。
しかし、何かヘマをやらかすと周囲の対応は冷たくなるし、誰かに恨まれたりすると面倒で、労力も裂かなければならない。
結果的にコミュニケーションに敏感にならざるを得ず、依存が残ってしまうのである。
がんばって依存をなくそうと試みても、周囲の環境が作用して、上乗せされるように依存がぶり返す。
社会生活の利点と欠点は、同じところに存在しているのである。
逆に、周囲とのコミュニケーションを最小限にして偏屈な暮らしをする人もいる。
こういう人も、実際にはコミュニケーション依存から脱却していない。
コミュニケーションを取らなければ、関係が悪化する危険が少ないからである。
「何もしていない自分が悪いはずがない」という理屈なのかもしれない。
この依存を脱するのは難しい。
脱しなくても構わないんじゃないか、と思う気持ちがある人には、まず無理だろう。
しかし、人は一人なのだ。物質的には繋がっているが、それは互いの便宜のためである。
愛がどうこう、と持ち出されるかもしれない。だが、互いの便宜、こうやって集団社会を営んでいること自体が、種族としての愛から成り立っているのだ。殊更に個人の愛情を言う必要はない。
その種族愛も隔離的なものだから、自営の為に武器を作ったりしているのだ。
武装していないと怖くて仕方ないのである。
コミュニケーション依存を脱却できないまま、偏った同胞愛で発展を続けてしまったのが人類だ。
人間関係が理由で起きる犯罪が絶えないのも、この依存に支配されているからである。
これは多くの人が抱えている悩みであろう。
金銭面や健康面でなければ、だいたいの人は人間関係の悩みに苛まれる。
哺乳動物として、そして群で生活する生き物であるわれわれ人間は、
周りの個体との関係には敏感にならざるを得ない。
まず、母親から授乳してもらうために、自分をアピールしなければならない。
母に忘れられれば、子は飢えて死んでしまう。だから必死に母を呼ぶ。
これを基本にして、自分を生かしてくれている環境を知り、それと付き合って行くのがわれわれの生き方である。それぞれが弱い個体である種族が持つ、生き延びる知恵だ。
ただしこのシステムには欠点がある。
個体が完全に自立できないまま、一生を終えてしまう。
別に問題はないのだが、だがそれは、自分自身もそうだという事なのである。
では自立をするために、社会と縁を切って山奥で暮らす、などという選択は馬鹿げている。やったとしても、怪我や病気になったら人里へ戻ろうとするだろう。
それに、サバイバル生活ができればそれがすなわち自立なのではない。精神的な自立ができなければ意味がないのだ。
精神的な自立とは何か。
周りと繋がっていないと不安であるという、コミュニケーション依存を克服することである。
言葉にするとまったく簡単だ。
では例えば、携帯電話を今すぐ捨てろと言われたらどうなるか。
いろいろデータは入っているし、仕事や交流には欠かせないものだし、捨てた理由も周りに説明しないといけない。試しにやってみたと言っても、周りは変に思うだろう。なくなったと嘘をついても、またすぐに持たなければならなくなる。
と、コミュニケーションに関する心配が一気にあふれる。
特に若い世代には、携帯電話依存と括っていいほどの病的な依存も見受けられる。
自分は一人ではない、誰かが自分を見てくれているはずだという気持ちが常にある。
その人が一人であろうが集団の一員であろうが、まったくどうでもいいことである。
体に不自由がないなら、家族や友人がいなくても、人は普通に生きていける。
だが実際には、誰の支えもなく一人でいることは相当の苦痛である。
理由は上でも言った通り、われわれは生まれたときから周囲の仲間に保護されてきたからである。保護がないと自分で食事もできないという体験を、実際に味わってきたからである。
しかし、成人して知識も体力も備えた個体なら、自分で食料・水を確保して生きていくことなど別段難しくはない。たとえ山で遭難したところで、環境さえ過酷でなければ自ら水を探し、木の実を食べて生き延びようとするだろう。
コミュニケーションに対する依存は、すでに不要になっているのだ。
しかし、何かヘマをやらかすと周囲の対応は冷たくなるし、誰かに恨まれたりすると面倒で、労力も裂かなければならない。
結果的にコミュニケーションに敏感にならざるを得ず、依存が残ってしまうのである。
がんばって依存をなくそうと試みても、周囲の環境が作用して、上乗せされるように依存がぶり返す。
社会生活の利点と欠点は、同じところに存在しているのである。
逆に、周囲とのコミュニケーションを最小限にして偏屈な暮らしをする人もいる。
こういう人も、実際にはコミュニケーション依存から脱却していない。
コミュニケーションを取らなければ、関係が悪化する危険が少ないからである。
「何もしていない自分が悪いはずがない」という理屈なのかもしれない。
この依存を脱するのは難しい。
脱しなくても構わないんじゃないか、と思う気持ちがある人には、まず無理だろう。
しかし、人は一人なのだ。物質的には繋がっているが、それは互いの便宜のためである。
愛がどうこう、と持ち出されるかもしれない。だが、互いの便宜、こうやって集団社会を営んでいること自体が、種族としての愛から成り立っているのだ。殊更に個人の愛情を言う必要はない。
その種族愛も隔離的なものだから、自営の為に武器を作ったりしているのだ。
武装していないと怖くて仕方ないのである。
コミュニケーション依存を脱却できないまま、偏った同胞愛で発展を続けてしまったのが人類だ。
人間関係が理由で起きる犯罪が絶えないのも、この依存に支配されているからである。
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