善悪を超えて行く者

べんぞう

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不可逆な消滅

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二重演算の必要性に気がつくと、実際に労力演算がふっと止まるようになってくる。
プロト反射やそれに続く思考が、短いところで打ち切られる感覚を味わう。
しかしそれに伴い、今までぼんやりと考えていたような思考も減ってくる。
真の意味で労力が節約されているのだが、ここに恐怖がある。
自分が消えていくのだ。
本当に必要なことにしか思考を回さない、怖いくらいシンプルな頭になってくる。
だが、記憶は残っているので、自分がいなくなるわけではない。

そして、またこれも恐怖かもしれないが、ここまで進むと不可逆となり、もうもとの自分に戻ることはできない。
せっかく無駄を省けるようになったのだから、わざわざ無駄に戻るようなことはしてくれないのだ。
二重演算ができてくると思考のシステムが変わり、今までは「こうやってみよう」としていたのに、「こう変わりました」という報告を知るような感覚になる。ちょっと空恐ろしい。
しかも、その恐怖すらも深く追えなくなってくる。省かれる。

自由とは、ピンポイントで言うと、何も選択していない状態を指す。
だから、あらゆる比較が消え、ものごとを断定することがなくなる。
そして思考そのものが消え、自分が消え、世界が消える。
有るも無いも消える。
消えるも消えないも消える。

そして、生きている。

おつかれさまでした。
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