善悪を超えて行く者

べんぞう

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自分自身のイメージは固定できない

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我々の心の中にはたくさんの人がいるが、それはすべて本人ではなくイメージの産物である。イメージは、記憶を元に構成される。だから、情報の少ない人物のイメージは薄い。

生まれたばかりの赤ん坊には自我がない。
まず自分の周りにいる人の言動を記憶し、そのイメージを作る。そして、その人たちからの反応を頼りに、自分の立場を探り知るのだ。
そうしてできるのが、自分自身のイメージである。ソナーのように、外部との反射で形を作る。

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生きるとは何か?
色気のない言い方をするなら、環境に適応する、ということだろう。この場合の環境とは、自分をとりまく世界のすべてであり、気候風土のことだけではない。
環境に良く適応していれば、労力が少なくて済む。
周囲の人からの評価というのは、絶好のバロメータになる。悪く思われているなら、適応できていないことになるわけだ。
悪く思われている場合は、不適応の問題点を探すのに必死になる。あるいは、不適応ではないと訂正させるために相手に怒りを向ける。(あからさまには怒れないのでイライラが残る場合もある。)

これは、自分では自分自身を明確にイメージできないからだ。
他人の反応を頼らないと、自分が見えない。
なぜ、自分のイメージは完成できないのか?
それは、環境に適応するというテーマが在る以上、常に変わっていく環境に自分を対応させ、常に自分も変化しているから、自分を限定できないのである。
だが、環境に不適応でいいというのは、死を選ぶことに等しい。
完全な適応は無理だけど、なんとか適当に、という人がほとんどだろうが、セオリーがあるわけではない。だから結局、周囲を気にする。

条件が出そろったのでまとめると、
環境に適応するため、自分を限定できない→自分のイメージが曖昧→
他人の反応で適応を判断→自分の安定(※完成ではない)→現状を学修→記憶として残る

大事なところは、この記憶である。
これを忘れないから、その人に合った人生ができてくるのだ。
しかし、この記憶は強力に働くので、間違いがあったと分かっても、訂正を受け付けにくい。
一度できあがった思考パターンをやりなおすには労力がかかるため、それを動かすほどに上質な情報がないと難しい。
つまり、
自分とは完成を目指すイメージであり、他者の反応をネタにするので、コミュニケーション依存が顕わになる。
学修は上手だが、変更は苦手である。
この、あまりしっかりしていない枠組みが、自分だと思ってきたものだ。
周囲に寄せられて、その結果できた型みたいなもの。ひどい表現かもしれない。
ただ、すべての人は自分が描くイメージであるし(自分の理想とする自分像も、師的なイメージとして描くので結局同じ)、決して真実ではない。マインドはイメージしか扱えない。

ついでに言うと、他人を批判するのも同じ意味がある。
自分なら絶対にこうはしない、という気持ちが批判へと繋がるのだが、他者の言動に対するリアクションは、非常にストレートで、自分のイメージ作りにとても役に立つ。
筋の通った批判意見は、それだけ自分を明確にしてくれるので、気持ちがいい。
だが結局はそれも断片的な情報であり、自分のすべてではない。

自分で自分のイメージを固定できない以上、自分は明確には存在しない。
といって他者からの評価をすべて断って独断を通すと、ナルシストになるだけだ。
自分を消そうにも、消せるほど明確なものではなかった。状況に合わせた記憶の適用というシステムが存在するだけだ。

だから、自分を消すなんてことも、やらなくてよい。
環境への適応をやめたら、生きものですらなくなってしまう。そんなことが目的ではないはずだ。
ただ、これらのことを、知っているだけで大きな違いがある。
それを胸に置いて、寄せ型になっている自分を見、気づこうと思えるだろう。
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