善悪を超えて行く者

べんぞう

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「お母さんを怒らせてはいけない」

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私が幼少期を共に過ごした母は二人目の母だが、明るい性格ではあったものの、私がきかん坊だったのもあってかなり暴力的であった。
教育などにも関心は普通で、こちらの好きなものを理解し、習い事もさせてくれたし、勉強も運動もそこそこできれば厳しくは言わない、適切な態度だった。この加減の良さには感謝している。
ただ、怒り出すと暴力を振るい、口汚く罵るので、子供心にこれがつらかった。しかし、一人目の母(と父)から捨てられる経験は積んでいたので、切られる怖さが身に付くことはなく、ただ機嫌の悪いときには近付かなかったり、母の怒りが強くならないように先回りして詫びたりと、いろいろ計算するようになった。暴力には対抗できないので、そこは必死に考えて行動するしかなかった。
これが、今の私に残っている「危険に対する恐怖→誘導、管理、支配」の欲である。

母に褒められよう、もっともっと認められよう、とは思わなかった。多くを望まなかった。何かをうまくやって褒められても、子供のうちは精度も低くて次の機会には失敗したり忘れたりすることも多く、母は横着なので「一度出来たらずっとできる」と思い込んでいたので怒られることも多く、それが嫌だった。なので、過度に期待されると失敗したときの反動が強いので、自分の能力を高めようとする努力はしても、自分のやりたい範囲で止め、親の評価を求めようとは思わなかった。結果的にそれが、認められたい欲の増長を防ぐことになったので、やはり母には感謝している。褒められて高いところに上げられると、落とされたときのダメージも大きいので、極力ニュートラルな関係を意識した。それは、この母が家を出て三人目の母が来てからも同じように続いた。現在も続くこの母と父は、どちらも子供を褒めて伸ばすというやり方を取らない減点方式の人だったので、悪いことをチェックされるだけの監視下生活になった。自立心が芽生え、社会的な成長に飢えていた私にはとてももどかしく、しかし親も学校も監視するだけで、具体的に子供を導く力が弱かった。私は自分の中に、とにかく厳しく否定する人格を設けて自分を見張り、己を律するしかなかった。その方法は間違ってはいなかったが、やはり偏りがあり、しばしば周囲との衝突に発展した。

今は、「お母さんを怒らせてはいけない」を妻や他人に投影し、欲を走らせている状態である。そしてそれは、自分を律し、高め鍛えようという気持ちの継続である。
しかし、今はマインドのステータスはカンストしている。欲を走らせ高速の思考をしても何ら解決はせず、ホルモンの無駄遣いである。欲の高速道路には、たくさんのインターチェンジを作って入りやすくしてしまったので、その道路をどんどん壊しているのが今の修養である。
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