過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
34 / 492
第2章

33話 シクの末路

しおりを挟む
 デグという大柄の男はシクの事知っているのか?!

「デグさん! シクの事知っているのか?!」
「あの獣人はシクさんって言うのか……。もちろん知っているぜ! その事について俺たちはアトスの事を探していた」

 ここに来て、シクの情報はありがたい!
 ……興奮して言葉遣い崩れたな。

「シクについて、教えてください!」
「もちろんだ。それと敬語は要らないぜ。さっきみたいに話してくれていい」
「そうそう、シクさんの子供なんだから私たちに敬語なんて要らない……」

 さっきから、命の恩人とか言っているが、何のことだ?
 言葉使いに関しては、本人達が良いと言っているんだしいいか。

「分かった。シクについて教えてくれ」
「あぁ……」
「……」

 そこからは、デグとベムがここまで来た経緯と、仲間を失って、裏切られた事、更にシクがデグ達を助けた事、そしてシクの最後を聞いた……。

「そ、そんな……。シクが食われた……?」

 俺は目眩がして地面に座り込み、いつのまにか泣いていた。

「俺が、俺が弱いから……。シクは俺のせいで……」
「それは違う! シクさんは一人だったら恐らく逃げ切れたと思う。だが、俺たちを助けた為に……。クソ……」

 俺が自分自身を責めていたら、デグが否定した。確かにシクはデグ達を助けて結果的に食われたのかもしれないが、根本的な理由は俺が小型に食われない様に囮になった為だ。

 やっぱり、俺のせいだ……。

 それから、俺は一歩も歩けず一晩中、泣き崩れる。
 デグ達はその間ずっと無言で俺の側を離れなかった。


 シクが小型に食われたと聞いてから、俺は一週間程塞ぎ込み、その場を動かなかった。
 デグやベムは心配して話しかけてきたり、慰めたり、ご飯の用意をしてくれたが、応える余裕も無くご飯だけ食べて一日中これまでのシクとの生活を思い出して居た。

 シクは俺にとても良くしてくれて、優しかった。常に俺のお世話をしていた。
 だが、訓練の時だけは厳しかったな……。
 でも、訓練終わった後は必ず頭を撫でてくれて褒めてくれた。そして、毎日美味しい料理を作ってくれたな。
 
 この十年間を振り返っていると、また涙が溢れて来た……。

 だが、シクは寝る前に必ず俺に言い続けていた事がある。

「アトス、これからの人生をより一層幸せになってくれ……」

 シクは寝る前にいつも言っていた。それは俺に聞こえる様に言う日もあるし、呟く様に言う日もあった。だが、毎日俺が幸せになれる様にと祈ってくれた……。

 このまま、ずっと塞ぎ込んでてもダメだよな……。
 こんなんじゃ、シクに叱られる。
 俺は俺自身の為に、シクの為に幸せにならないとな!

 幸せに生きていくと決意すると、ここ一週間ショックで立ち上がれなかった俺だったが、今はスクッと立ち上がる。

 デグとベムが驚いてこちらを向くのが見える。

「デグさん、ベムさん、この一週間見守っててくれてありがとう」
「へへ! 気にすんな! シクさんの子供なら当然だぜ! あと呼び名もデグでいいからよ!」
「私もデグと同じ意見……。そして、アトスだけは特別に私の事を呼び捨てにしてもいい……」

 優しい……。最初シクが人間を助けた事に疑問を持ったが、こういう優しい気持ちの持ち主なら納得だ。

 とりあえず、俺は幸せになる。その為に何をすれば良いのか、まだ分からないがまずはスキルの儀式を受けに行くか!
 
 スキルを手に入れてチートして異世界ウハウハしてやるぜ!

 多少無理やり感があるが、今は無理やりでも気分を上げていけばいい。

「ならデグ、良ければ俺を人間族の住処に連れてってくれないか?」
「あぁ、いいぜ! 何か目的があるのか?」
「スキル儀式を受けたいんだ」
「そうか、アトスは十歳か」
「アトスなら、凄いスキルを得ることが出来る……」
「ベム、ありがとう!」
「……可愛い……」

 何故かベムに抱きつかれた……

「や、やめろよ」
「照れている……可愛い……」
「ベムは俺と同じくらいだろ?」
「っぶあはははは!!」

 デグが凄い笑っているな。

「ベムちゃんは、確かに見た目十歳だよなーー! ぷっ!!」
「ッカチン……。デグを私は許さない……」

 ベムが弓矢を構えてデグに狙いを定める。

「あ! ベム、やめろ! あぶねー」
「何か言う事がきっとあるはず……」
「わ、悪かった。ベムさんは俺と同じ歳だったな」

 え?! そうなの?! 俺と同じくらいの背丈だったし顔つきも幼いから同じだし、同じ歳くらいだと思っていたな……。

「ベム、俺勘違いしていたよ。ごめん」
「アトスは可愛いから許す」
「おい! 俺とアトスの扱い違いすぎるだろ!」
「……」
「無視すんな!」

 明るいデグに、毒舌のベムと話していたら、俺も少しづつ明るい気持ちになって来た。

「ははは! デグとベムは面白いね」
「「笑った!」」

 俺が笑った事が嬉しかったのか二人はとても良い笑顔を俺に返してくれた。

「よーし! アトス、俺に付いて来い! 人間族の住処に導いてやる!」

 そう言って、デグは肩で風を切る様に歩き出す。

「アトス、バカには付いていかないでいい……。こっちだから、付いて来て……」
「べ、ベム手を繋がなくても迷わないよ」
「ふふ、アトス可愛い……」

 そう言って、ベムはデグの歩き出した方向と逆に歩き出す。

「お、おい! なんで付いてこないんだよ! そっちか? そっちなのか?!」

 誰も付いてこない事が分かったのか、デグは慌てて戻ってきた。

 そんなやり取りを見て、この一週間俺の事を面倒見てくれた二人。
 そして、俺を十年間育ててくれた母親。

 なんだかんだ俺は人運に恵まれているな……
 よし! まずは人間族の住処でスキルを手に入れるぞ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」 唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。 人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。 目的は一つ。充実した人生を送ること。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

処理中です...