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第8章

318話

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 朝早い時間、まだ村の住人が寝静まり返っている時に、いきなりカンカンと鐘の音が鳴り響いた。
 
 ん? なんだ?

 最初は気のせいかと思っていたが、鐘の音は鳴り続ける。

「気のせいじゃねぇ!?」

 俺は直ぐに飛び起きて部屋を出ると、ちょっど同じくして、部屋からチルとリガス、シャレも出てきた。

「シャレ、何が起きている!?」
「恐らく、敵襲だ!」
「「「──ッ!?」」」

 シャレの言葉に緊張が走る。

「私は、直ぐに向かうから、アトス達も用意が出来たら直ぐに来てくれ!」

 そう言って、シャレは早々と家を出て行った。

「俺達も直ぐ準備するぞ──チル、ロピを起こしてくれ」
「はい!」

 俺は急いで部屋に戻り着替えを済ます。

 そして、直ぐにチル達の元に戻ると、妹に無理やり起こされたロピも居た。

「お兄さん……おはよー」

 まだ、寝ぼけているようだな……

「姉さん、起きて。戦いが始まるよ?」
「んー……私、戦いたく無いよ……まだ眠いんだよー」

 ロピは目を瞑りながらチルに持たれ掛かる。

「チル、流石に危ないから起こしてやってくれ」
「分かりました」

 すると、チルは身体を少しだけ動かした。

 チルに全体重を預けていたロピは、そのまま重力に従い床に向かって顔面から倒れ込む。

「──ッイタい!」

 もちろん、ロピは痛みで一瞬で目が覚める。

「姉さん、起きた?」
「ん? なんで私ここに居るの? 寝てたはずなのに……」
「敵が来たんだよ? だから私が着替えさせといたからね?」
「そうなの? ありがとー」

 まだ、状況が良く分かっていないロピをチルはうまい具合に操り、目を覚まさせた。

 ……流石にもっと良い起こし方あったんじゃ無いか……?

 ロピが完全に目が覚めた事で俺達も家を出る。

 家を出ると、鐘の音が更に大きく聞こえ、危険が迫っている事を教えてくれているようだ。

「アトス様……人間族が攻めて来たのでしょうか?」
「あぁ、まず間違えなくそうだと思う」
「ふむ。思っていたより攻めて来るのが早かったですな」
「こんな早いとは聞いてなーい!」
「あぁ、でもマーズが教えてくれなかったら、迎撃する為の準備すら出来なかったからな──感謝しか無いな」
「その通りですな」

 俺達は、村の入り口まで急いで向かう。

 村の入り口に到着すると、既にエルフとドワーフ達全員が集まっていた。

「それにしても、良くこんな短時間でこんなの作れたねー?」

 ロピが関心した様子で口を開き門を見る。

「姉さんの言う通り、凄いです」
「ふむ、流石はドワーフ族ですな」
「まさか、ここまで凄いのが作れるとは俺も思わなかったぜ」

 何故、俺達がここまで関心しているかと、言うと、門には人間族の住処程では無いにしろ、立派な防壁が出来上がってるいたのだ。

 その防壁は主に木を組み立てて、出来ているのだが、まず高さが凄かった。

 高さ二十メートルはある木の防壁がエルフの村全体をグルリと取り囲む様に作られていた。

 そして、相手に炎弾という火のスペシャリストがいる為、ギルの発案により、木に対して泥を塗って固めてある。
 そうした事で、少しでも火に強い耐性を持った防壁が完成した。

 これをあの短期間で作り上げちまうのがドワーフ達の凄い所である。

 そして、高さ二十メートルもある高い防壁には足場まで組まれており、そこに登る事で門の外が確認出来る様になっていた。

「まずは外の様子を確認してみるか」
「はい」

 俺達は防壁に上ると、そこにはエルフ族代表である、シャレとニルトンとドワーフ族代表のギルと側近が居た。

「む──アトス来たか」
「あぁ、外の様子はどうだ──やっぱり人間族が責めて来たのか?」
「それは自分で確認した方が早いだろ」

 そう言ってギルは顎で敵の方を指した。

 俺はつられる様に視線を動かす。

「多い……な……」

 まだ、大分距離があるがパッと見た感じは、此方と同じか少し多いくらいに見える。

「何か話す事でもあるのか、それとも余裕の現れなのか、奇襲などせずに先程からあそこで止まっている」

 相手の様子を見ていると横からシャレが説明してくれる。

「ずっと、あそこで止まっているのか?」
「あぁ、動く気配が無い……」

 不気味だな……

「きっと、お話がしたいんだね!」
「けど、姉さん──人間族達は動かない様だし、話すつもり無いんじゃ無い?」
「うーん、なら何で止まっているんだろーね?」

 疑問に思っていると、複数の人間族がゆっくりと門に向かって歩いて来るのが見える。

 恐らく、戦うつもりでは無いと訴え掛けているのか、本当にゆっくりと近付いて来て、門の前で止まった。

「たのもー! ここの代表はいるか!?」

 一人の人間族が大声で叫ぶ。

 すると、皆の視線がシャレに集まる。

 その事を感じ取ったシャレは人間族に向かって声を張り上げる。

「私はこの村の村長を務めているシャレだ! ──何か用か!」

 シャレの事を認識した人間族は大きな声でとんでもない言葉を発した。

「今から、お前達の村に攻め入る──しかし、戦いで無闇に怪我人や死人を出したくは無い!」

 少し間を置いて更に続ける。

「だから、どうか降参する気は無いか! ──そうすればお互い戦う必要が無くなり、怪我人や死人が出なくて良いと思うのだがどうだろうか!」



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