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パクト
38話
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「えーっと、確かこの店かな?」
オカは、都内のある喫茶店に入る。
「まだ、来てないのかな」
コーヒーを頼み、待ち合わせの人物を待つ。どうやらこれからフィブと会うらしい。あれからオカは直ぐに会おうとフィブにメッセージを送り予定を合わせたのだ。
「今日は俺がフィブの悩みを聞いてやらないとな」
同じ立場の筈なのにオカはあくまでも自身がフィブの相談に乗るという体裁を取りたいらしい。
そしてコーヒーを飲みながらマッタリしていると、喫茶店の扉が開く音が聞こえ、扉の方に視線を向ける。
「お? おーい、こっちこっち!」
私服姿のフィブを発見して手を振ると、フィブが席に向かって来る。
「オカ、久しぶり……」
「だな。フィブ元気にしてたか?」
オカの言葉にコクリと頷き、店員さんにコーヒーを頼み席に着く。
「あれから全然会わなかったけど、元気にしてか?」
「私は、いつもと変わらない日常に戻っただけ、オカは……?」
「俺も同じだな」
それから二人はここ半年間の出来事をお互い話し合う。合計で一年分の月日を話し合ったが、時間にしたら一時間も掛からずに話終わってしまったらしい。
「俺達の半年間って薄いな……」
「否定が出来ないのが困る……」
どうやら、二人とも友達も少ないし、外に出掛けるタイプでも無いので、直ぐに話す話題が尽きてしまった様だ。
「フィブは、もう卒業式終わったのか?」
「うん、昨日が卒業式だった……」
「そっか、泣いたか?」
オカの問いに左右に首を振る。
「そんなはず無い……」
少し睨み付ける様にオカを見る。
「あはは、クールそうに見えてフィブは結構泣き虫だからな」
「うるさい……」
不満タラタラの声色で言うフィブを見て、尚更可笑しそうに笑うオカだった。
「オカは、卒業式終わったの……?」
「俺は、この前フィブにメールした時だったよ」
それからは仕事の話になる。
「そ、そういえばフィブは仕事決まってないんだっけ?」
「そう……。こんな性格だから、なかなか決まらない……」
フィブは何社も受けたのか、結構精神的にきている様子だ。
「どんな仕事を受けたんだ?」
「なんでも受けた。接客、介護、営業、ITなど……」
「そ、そうか。それは大変だな」
「オカは……?」
「実は俺も決まってないんだよな」
「私と同じ……」
フィブもオカと一緒なのか、仲間を見つけた事に安心し、笑顔になる。
「でも、オカはなんで決まってないの……?」
フィブとは違って、オカは人付き合いを苦手としていない。
「俺は、めんどくさくて就活してなかったんだよな……」
「オカらしい……」
二人は、それから盛り上がり結局は何時間も話し合っていた。
「そろそろ、帰らないと……」
「お、もうそんな時間か」
時計の針は夜21:00を指していた。
「また会おうぜ!」
「うん。次はダルマも呼ぼう……」
「だな、ダルマはきっと仕事してないだろうしな」
「きっと、私達と同じ……」
失礼な事を言い合う二人である。もしこの場にダルマが居たら恐らく憤慨しているのでは無いだろうか……。
そして二人は次に会う日取りを決めて別れる。
「ふぅ……、なんか心がスッキリしたな」
来る時の足取りと帰りの足取りでは全然違う感じになっている事をオカ本人は気付いていないだろう。
「次はダルマも呼んで三人で作戦会議だな」
まだ、無職と決まった訳では無いのにオカは既にダルマを同類と思っている様だ。
電車を乗り継ぎ自宅に戻ったオカはいつも通りパソコンの電源を付けてお気に入りのサイトを見て回る。
「そういえば、マサオさんの都市伝説を書いていた人のブログって誰かにアカウントを乗っ取られていたんだよな」
オカが入れ込んでいたブログは、どうやったかは不明だがマサオさんがアカウントを乗っ取り流していた様だ。そして今は通常通りブログを運用しており、書く内容の記事もいつもと変わらない様だが、オカはアレ以来そのブログを見ていない。
「今思うと、この人のサイトで見つけたんだよな……」
少し昔を思い出すかの様にオカは、久しぶりにその人のブログを覗いて見ることにした。
「えっと、どれくらい更新されているかな?」
半年間見ていなかったので、オカが読んだ事無い記事が沢山ある様だ。何か面白い記事が無いかと記事の題名を見て行くと、ある題名に目が止まる。
「ん?」
最初は気のせいかと思い通り過ぎた場所を、オカはマウスを器用に使い少し戻す。
「おいおい、何の冗談だよ……?」
独り言の様にブツブツと呟くが、その記事の題名を見たらしょうがない事なのかもしれない……。
【都市伝説について。眠れない夜のお供にどうぞ】
その題名は、マサオさんの時と似ておりオカはつい目に止まってしまう。
「な、なんなんだよ……」
もう、あんな思いをしたくないオカは反射的にページを閉じてしまう。
「今日は、もう寝ようかな……」
見たくないものを見たオカはパソコンの電源を消して、風呂に入り寝る事にした。
だが、どうしても先程の記事が気になり頭の中でグルグルと見た方がいいのか、それとも見ない方がいいのかと言う二つの選択肢が回っている様だ。
「あー、もう寝よ寝よ!」
その時、オカは何かに見られている感じがして、暗い部屋内を見渡す。
「なんか、ここ最近誰かに見られている感じがするけど気のせいか……?」
布団を頭から被り、その日は無理やり寝るオカであった……
オカは、都内のある喫茶店に入る。
「まだ、来てないのかな」
コーヒーを頼み、待ち合わせの人物を待つ。どうやらこれからフィブと会うらしい。あれからオカは直ぐに会おうとフィブにメッセージを送り予定を合わせたのだ。
「今日は俺がフィブの悩みを聞いてやらないとな」
同じ立場の筈なのにオカはあくまでも自身がフィブの相談に乗るという体裁を取りたいらしい。
そしてコーヒーを飲みながらマッタリしていると、喫茶店の扉が開く音が聞こえ、扉の方に視線を向ける。
「お? おーい、こっちこっち!」
私服姿のフィブを発見して手を振ると、フィブが席に向かって来る。
「オカ、久しぶり……」
「だな。フィブ元気にしてたか?」
オカの言葉にコクリと頷き、店員さんにコーヒーを頼み席に着く。
「あれから全然会わなかったけど、元気にしてか?」
「私は、いつもと変わらない日常に戻っただけ、オカは……?」
「俺も同じだな」
それから二人はここ半年間の出来事をお互い話し合う。合計で一年分の月日を話し合ったが、時間にしたら一時間も掛からずに話終わってしまったらしい。
「俺達の半年間って薄いな……」
「否定が出来ないのが困る……」
どうやら、二人とも友達も少ないし、外に出掛けるタイプでも無いので、直ぐに話す話題が尽きてしまった様だ。
「フィブは、もう卒業式終わったのか?」
「うん、昨日が卒業式だった……」
「そっか、泣いたか?」
オカの問いに左右に首を振る。
「そんなはず無い……」
少し睨み付ける様にオカを見る。
「あはは、クールそうに見えてフィブは結構泣き虫だからな」
「うるさい……」
不満タラタラの声色で言うフィブを見て、尚更可笑しそうに笑うオカだった。
「オカは、卒業式終わったの……?」
「俺は、この前フィブにメールした時だったよ」
それからは仕事の話になる。
「そ、そういえばフィブは仕事決まってないんだっけ?」
「そう……。こんな性格だから、なかなか決まらない……」
フィブは何社も受けたのか、結構精神的にきている様子だ。
「どんな仕事を受けたんだ?」
「なんでも受けた。接客、介護、営業、ITなど……」
「そ、そうか。それは大変だな」
「オカは……?」
「実は俺も決まってないんだよな」
「私と同じ……」
フィブもオカと一緒なのか、仲間を見つけた事に安心し、笑顔になる。
「でも、オカはなんで決まってないの……?」
フィブとは違って、オカは人付き合いを苦手としていない。
「俺は、めんどくさくて就活してなかったんだよな……」
「オカらしい……」
二人は、それから盛り上がり結局は何時間も話し合っていた。
「そろそろ、帰らないと……」
「お、もうそんな時間か」
時計の針は夜21:00を指していた。
「また会おうぜ!」
「うん。次はダルマも呼ぼう……」
「だな、ダルマはきっと仕事してないだろうしな」
「きっと、私達と同じ……」
失礼な事を言い合う二人である。もしこの場にダルマが居たら恐らく憤慨しているのでは無いだろうか……。
そして二人は次に会う日取りを決めて別れる。
「ふぅ……、なんか心がスッキリしたな」
来る時の足取りと帰りの足取りでは全然違う感じになっている事をオカ本人は気付いていないだろう。
「次はダルマも呼んで三人で作戦会議だな」
まだ、無職と決まった訳では無いのにオカは既にダルマを同類と思っている様だ。
電車を乗り継ぎ自宅に戻ったオカはいつも通りパソコンの電源を付けてお気に入りのサイトを見て回る。
「そういえば、マサオさんの都市伝説を書いていた人のブログって誰かにアカウントを乗っ取られていたんだよな」
オカが入れ込んでいたブログは、どうやったかは不明だがマサオさんがアカウントを乗っ取り流していた様だ。そして今は通常通りブログを運用しており、書く内容の記事もいつもと変わらない様だが、オカはアレ以来そのブログを見ていない。
「今思うと、この人のサイトで見つけたんだよな……」
少し昔を思い出すかの様にオカは、久しぶりにその人のブログを覗いて見ることにした。
「えっと、どれくらい更新されているかな?」
半年間見ていなかったので、オカが読んだ事無い記事が沢山ある様だ。何か面白い記事が無いかと記事の題名を見て行くと、ある題名に目が止まる。
「ん?」
最初は気のせいかと思い通り過ぎた場所を、オカはマウスを器用に使い少し戻す。
「おいおい、何の冗談だよ……?」
独り言の様にブツブツと呟くが、その記事の題名を見たらしょうがない事なのかもしれない……。
【都市伝説について。眠れない夜のお供にどうぞ】
その題名は、マサオさんの時と似ておりオカはつい目に止まってしまう。
「な、なんなんだよ……」
もう、あんな思いをしたくないオカは反射的にページを閉じてしまう。
「今日は、もう寝ようかな……」
見たくないものを見たオカはパソコンの電源を消して、風呂に入り寝る事にした。
だが、どうしても先程の記事が気になり頭の中でグルグルと見た方がいいのか、それとも見ない方がいいのかと言う二つの選択肢が回っている様だ。
「あー、もう寝よ寝よ!」
その時、オカは何かに見られている感じがして、暗い部屋内を見渡す。
「なんか、ここ最近誰かに見られている感じがするけど気のせいか……?」
布団を頭から被り、その日は無理やり寝るオカであった……
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