人間三原則

こーぷ

文字の大きさ
44 / 67
第1章 ヒーロー見参

43話 スクエの強さ

しおりを挟む
「ノラどうする?」

 スクエは赤く光る鉄パイプを構えてノラに向かって、確認する。

「ふむ。よし突っ込め!」
「は、ハァ?」

 流石のスクエもノラの言葉に笑みは消えて横を向いてしまう。
 しかし、スクエとは違ってノラの表情は笑顔である。

「はは、大丈夫だ──スクエの職業説明を見て確信したよ」
「なんて書いてあったんだよ?」

 スクエの言葉にノラが答えると、再びスクエに笑みが戻った。

「なるほどな」
「だから、突っ込めスクエ!」
「おう!」

 ノラの言葉と共にリプレス達に向かって走るスクエ。
 そしてノラの足元からは青の魔方陣が浮かび上がる。

 そんなスクエ達を見て、リプレス達は焦る。

「ウ、ヴーヴェさんどうすればいい?!」

 叫ぶ様に、指示を催促するリプレスにヴーヴェは一言だけ伝える。

「殺さず捕まえろ」

 やはり、答えは変わらなかった様で、リプレス達は苦虫を噛んだ表情になる。

「で、ですがヴーヴェさん……あの人間、リプレスを簡単に……」

 真っ二つになっている仲間達に視線を向ける。

 しかし、ヴーヴェからの指示はやはり……

「殺さず捕まえろ……」

 変わらず、寧ろ先程よりも迫力が増した為部下であるリプレス達は反論出来ない様だ。

「に、人間ごときに負けるかよ!」

 そして、リプレス達はスクエに向かって突っ込む。

「はは、お前らあのジジィにビビっているのか?」

 向かって来るリプレス達にスクエは挑発とも取れる様な言葉を投げ掛ける。

「まぁ、俺からしたら逃げられるより、良いけどなッ!」

 まず、すれ違い様にスクエは鉄パイプを横に振り、リプレスを簡単に切断する。

「──ッまだまだ!」

 更に自身の身体を回転する様にして、再度勢いを付け、鉄パイプを近くに居たリプレスに向かって振り切り二人を破壊する。

 一瞬で三人のリプレスを破壊したスクエに恐怖を持ったのか、残りのリプレスが一度止まる。

「クッ……か、囲め!」

 残り10体にも満たないリプレス達がスクエを取り囲む。

「おー、大分減ったな」

 スクエの言葉にリプレスがキレる。

「奴隷風情がッ!」

 スクエに向かって襲い掛かるが、今のスクエに一人で挑むのは無謀であった。

「──ッら!!」

 鉄パイプを上段から下段へ振り下ろしリプレスの肩から斜めに鉄パイプが食い込み破壊する。

「お前達、一人で突っ込むな──一斉に行くぞ?」

 地位の高いリプレスなのか、他の者達が素直に頷く。

「いけッ!」

 その掛け声と共に、ヴーヴェ以外のリプレスが一斉にスクエに向かって四方から攻撃を繰り出す。

 しかし、スクエにはあまり関係がない様子である。

「はは、一度に相手出来て丁度良いな」

 何を思ったのか、スクエは鉄パイプを両手で持つとコマの要領で両足を軸にして回転する。

 本来であれば、その様に鉄パイプを振り回しても対した威力にならないのだが……気が付けば四人のリプレスがバラバラになって横たわっていた……

「ふぅ……」

 そして、スクエが回転を止めた瞬間に──

「──食いやがれ人間がッ!」

 止まる瞬間を見越して一人のリプレスがスクエに飛び掛かる。

「燃えろッ!」

 しかし、ノラが唱えていた魔法が発動し、野球ボール程の火球がスクエを襲おうとしたリプレスに当たり破壊する。

「あはは、油断するなよ、スクエ?」
「サンキュー!」

 二人の気軽い応答とは逆に周りには何体ものリプレスの残骸が転がっている。

 そして、スクエは周りに居た残りのリプレス達を簡単に切断する。

「これで最後ッ!」

 電池が切れた様に地面に倒れ込むリプレスを見た後に一旦ノラの元へと戻る。

「ご苦労だったスクエ──それにしても凄いな……」

 ヴーヴェとロメイ以外全てのリプレスを倒してしまったスクエに驚くノラ。

「あぁ、俺もまさか、こんな凄い力を手に入れるとは思わなかった……」

 改めて、自身の力を自覚するスクエ。

 二人は今まで破壊したリプレス達を一通り見回した後、最後にヴーヴェとロメイの方に向く。

「なぁ、お前の部下全部壊しちまったぜ?」
「……」

 スクエが話し掛けても、答える気配が無い。
 そして、何やらブツブツと独り言を唱えているヴーヴェ。

「こ、こいつは凄い……売るよりも部下にした方が何倍も価値がある──リプレスを鉄パイプ一振りで倒せるんだぞ?」

 ヴーヴェの呟きにロメイが話し掛ける。

「ウ、ヴーヴェさん、逃げましょう──こいつはヤバイですよ」

 ロメイがスクエを見ながら無意識に後ろに下がり続ける。

「グ、グロックさんを倒した時からヤバイと思っていたんですよ……」

 ロメイの言葉が聴こえてないのかヴーヴェはニヤつきながらスクエに話し掛ける。

「人間よ私の部下にならないか?」
「は、はぁ……?」

 ヴーヴェからのいきなりの提案に困惑するスクエ。

「最初はお前をアバエフ王に売り飛ばす予定だったが、辞めた──お前は私の下で働け」
「ふ、ふざけんな──誰がお前みたいな危ない奴の元で働くかよ!」
「まぁ、確かにお前には危ない事をしたかもしれないが、その分私の仲間も大勢破壊した──見てみろこの状況を!」

 周りを見ると、黒いスーツを着たリプレスが約20人程が地面に転がっていた。

「お互い思う事は有るかもしれんが、此処は水に流して私の所で働け──待遇は勿論最高級に良くしてやる──まぁあり得ないとは思うがお前を馬鹿にする奴が居れば破壊しても良い」

 恐らく、他のリプレス達からしたら、信じられない程の高待遇である筈だが……

「断る! お前達リプレスのやっている事が先ず気に入らない!」

 スクエの返答にガッカリするヴーヴェは短くため息を吐くが──彼は諦めなかった。

「そうか……ならしょうがない」
「「──ッ!?」」

 ヴーヴェから、いきなり殺意を向けられ、スクエは鉄パイプを構える。

「無理矢理でも言う事を聞いて貰うぞ? 少々怪我をするかも知れないが後で直せば良いだろう……」

 そして、ヴーヴェの足元にはノラと一緒で青い魔方陣が浮かび上がっていた……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...