未完】風神アウィンの受難〜全属性神族の番になれる愛妻は女神らしい。いや、俺のだからな?〜

平川

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第四章  「後悔」と「過去世」

81.俺の気持ちだろ?

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「.................済まない、ミル姫。ここで引いてもらう」

 シャザが左手にミル様を抱えながら囁く。

「.........馬鹿」
「.........なんでも言う事を聞く。貴方を失うくらいなら.........なんでもだ」
「.......ふふ...........じゃあ、貸し....ね。後、は.........任せたわ」

 そう言うとミル様はフッと意識を失った。失血が酷い。毒も回っているだろう。俺は空気を傷口に覆い被せ止血する。体外に血が出て行くのを防ぐ為だ。残念ながら俺は治療は出来ない。

「審判。彼女は意識を失った。試合続行は不可能だ。ミル王女は敗退する。良いな?」

 シャザは審判に向き手短にそれだけ伝えた。急いで医務室に連れていかねばならない。審判もそれを察してあっさりと了承した。

「ああ。了解した。この勝負ハルレア皇国、獅子の神族......... 」

 審判の勝ち宣言の途中でヒュッと風が鳴り、ミル様に向かって振り降ろされる血塗れの剣。カアンッと軽い音と共にシャザのショテルに弾かれる。

「.........其方の勝ちだ。剣を収められよ。ハルレアの皇子よ」
「ああ?ふざけるなよ黒豹の分際で!こいつを殺さなければこのデカイ馬鹿面が取れないんだよ!その牛女置いて行け。切り刻んで喰ってやる!!」
「.................牛牛煩いな。このお方は獣人神の姫だぞ。言葉に気を付けろ。それはお前が獅子の実力では無く毒など仕込んだ罰だ。甘んじて受けろ。皇子の癖に小者みたいな真似をしおって。そんな小者のお前でも試合には勝てたんだ、喜べ」

 シャザは吐き捨てるように言い放つとクルリと皇子に背を向けた。

 勿論、わざとだろう。
 ミル様を逃したく無い皇子は当然.........斬り掛かる。
 鋭い風が3回、皇子を襲った。


 「アウィン、我は医務室に連れて行く。またな」
 「ああ、早く行ってやれ。ついでに告白でもして来たらどうだ?ふふっ」
 「.........それは卑怯だから、やらん。また後にする」
 「..................そっか。じゃあな」
 まあ、それらしい事は口に出てたけどな。

 シャザは軽くジャンプを繰り返しミル様を連れて行ってしまった。これ以上はお邪魔かな。俺は風で2人を追うのを止めた。

 さて、後は第2闘技場の試合で終わりだな。それが終われば漸く第2試合。次は誰かな?
 俺はスタスタと人混みの中へ入り第2闘技場を目指す。
 水の奴が戦うのは.........光か。

 忘れてた。
 ふと思い出し、手の中に小さな風の渦を作り指先で第1闘技場の上に弾いた。一瞬、ブワッと突風が吹く。

 風に押されゴロンッと転がる4つに分かれた身体。バシャンッと血が飛び散る音。
 噛み付いていたカバの顔だった右腕は塵になって消えていた。
 この【加護】は呪いだな。身体の一部を媒体に相手を殺そうとするものだろう。正直いいのかどうか判らない。

 死んでいる事に気付いていなかった審判が慌てている。シャザに斬り掛かった姿勢で事切れていたから、奴にやられた事は判るだろうが。確かに人の試合に乱入したシャザは資格取り消しされるかも知れないな。

 始めから俺1人で構わなかった。
 これで良かったと思う。彼らを殺す対象にしなくて済んだのだ。少しだけホッとした。

 ハルレア皇国は1人皇子を失った。
 まあ、何人か他にも皇子は居るだろ。あんなのが治める国なんかロクなもんじゃないだろうし.........弱過ぎるし。シャザに斬られてから死ぬまで気付いてなかったしな。

 .................あっ!ヤバ!また流血。チラリとサラの居る方を見る。あれ?居ない。.........あ、違う。蹲ってるのか。大丈夫かな?


 『サラ?平気か?』
 「.........アウィン.........ミル様.........」
 『.........うん。大丈夫だ。シャザが医務室連れて行った。生きてれば何とでも出来るらしいぞ?(皇子は4つになって転がってるけどな)」
 「.........アウィン.........お昼には会える?」
 『試合の時間が判れば直ぐにでも。多分昼から第2試合になると思うんだけどな。でも既に第1試合は後1つだけ残ってるだけなんだ。もしかしたら前倒しで始まるかも知れん』
 「.................分かった。待ってるね」
 『元気無いな。サラ、怖いだろ?無理して他の奴の観なくて良いぞ?俺の試合だけで良いから。基本流血を伴う試合ばかりだからさ』
 「うん.........でも.........観ない方が怖いから。知ってる人が.........居なくなるの.........怖い」
 『.........そうだな。......サラ、もう少し待っててな』
 「.................う、ん。アウィン。あの......... 」
 『ん?どうした?』
 「.......んーん。......なんでもない」
 『.....そうか、じゃあ、また後で』


 俺はサラが居る場所を見上げながら話しを終えた。サラは蹲ったままだった。やっぱりキツかったかな。
 ああ.....今すぐ抱き締めに行ければ良いのに。

 少し前までサラの側にも居れなかった俺にとっては有り得ない程近い存在になった。妻に出来た事、今だって浮かれてる。
 サラが女神だったなんてそりゃ驚いたけど、だから何だって話だ。俺にとってはサラはサラだ。
 《リンミン》が必要であると言うなら何としてでも手に入れるつもりだし、彼女に出来る事は何でもしてやりたい。
 過去世でランドールがルナを裏切った事もその後の事も、俺にしたら正直他人事だ。
 俺はアウィンで彼女はサラだ。ただ、俺は俺の妻を幸せにしたいだけだ。
 これは.........俺の気持ちだろ?
 色々考え過ぎてぼやけそうになるが俺の希望はただそれだけ。その為に.........


 集中して行こう。未来の為に。


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