ぐれい、すけいる。

羽上帆樽

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第32部 4202年32月32日

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 最近時間がない、と思う。しかし、この表現は変だ。第一に、時計を見ればすぐに存在が確認できるわけだから、時間がないわけがない、という点で変だし、第二に、そもそも時間というものは存在するのか、という点で変だ。

 たぶん、この表現は、そういうことを言いたいのではないだろう。当たり前だ。もちろん、やりたいこと、やるべきことをするために必要な時間と照らし合わせて、それだけの時間が不足している、ということを意味している。

 時間がないとすれば、時間を作り出せば良いが、これは、本当に時間を作り出すのではない。そうではなくて、あることに当てている時間をほかのことをするのに当てたり、あるいは、あらゆる行動のスピードを上げる、ということを意味している。

「shikashi, moshi chikyuu ga ziten o shite inakattara, ningen wa zikan no keika o kanjirareru no darou ka ?」

 と、僕の頭の中で彼女が言った。これは、実際に発声されたわけではないから、かかった時間は限りなくゼロに近い。

「どうして、そんなことを尋ねるの?」僕も頭の中で応答する。「そんなことを不思議に思ったところで、どうしようもないよ」

「naze ?」

「もし地球が自転していなかったら、人間が生まれていたかどうかも分からないからね」僕は答えた。「そうすると、君が今言ったその問いが生じていたかどうかも分からない。つまり、地球が自転をしていない、という条件だけをそのまま適用することはできないんだ」

「demo, ningen no atama de wa, sore ga kanou deshou ?」

 彼女に言われて、たしかにその通りだと僕は思った。

「つまり、地球が自転をしていなくても、ほかの条件はそのままということで……、それは要するに、自転をしていない地球の上で、ほかはこれまで通りの生活が繰り広げられている、というシチュエーションだね?」

「sou」

「たとえ地球が自転をしていなくても、人間は時間の経過を感じることができると思う」僕は考えを述べた。「なにしろ、人間は歳をとるからね。ほかの動物だってそうだ」

「naruhodo ?」

「結局のところ、人間が時間を気にするのは、無意識の内に、自分の死を遠い先に見ているから、ともいえるかもしれない。それが、まさか明日死ぬことはないだろうと思っているから、時間がないなあ、で済ますことができるというわけだ」
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