ぐれい、すけいる。

羽上帆樽

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第43部 4202年43月43日

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 真緑の草原に僕は立っている。「真緑」という表現は、一般的にはされないかもしれない。でも、今はその表現が僕の頭に浮かんでしまったのだから仕方がない。一度も聞いたことがない言葉でも、なんとなくイメージは伝わるから不思議だ。いや、別に不思議でも何でもないだろう。人間の頭が、推測という作用ができるようにできているというだけのことだ。

 こういうことができるということを根拠に、自分は人間だと洗脳することを、僕は何度繰り返してきただろう?

 草原は遠くに向かうにつれて標高が高くなっている。その丘の頂上に白いパラソルをさした彼女の姿が見えた。パラソルだけではなく、彼女は今は全身が白い。白いドレスのような格好をしていた。風が強く、ドレスも、パラソルも、そして、彼女の髪も、さっきからずっと靡いている。早送りするみたいに、空に浮かぶ雲がからからと左から右へ流れていた。

 僕は坂道を上って、彼女の方に向かっていく。僕がそちらに向かっている間、彼女はこちらを見なかった。ずっと左を向いている。

「何をしているの?」彼女の隣までやって来て、僕は訊いた。

 彼女は僕の方を見る。無表情というよりは、少し寂しげな顔だった。

 彼女は何も答えずに、またもとの方を向いてしまう。

 そちらにも草原が続いているばかりで、特に目立つものは見当たらなかった。とても解放的な空間だ。もしかすると、天動説を信じても良いかもしれないと思えるくらいには、ただただ広いだけの空間だった。

 僕はパラソルを持っている彼女の手に触れる。

 彼女は何の反応も返さない。

 でも、僕の手の甲に水滴が落下して、付着した。

 僕は顔を上げる。

「どうしたの?」

 彼女の両目から雨のように涙が流れていた。断続的でなく、連続している。冗談みたいな涙だったが、とても冗談で泣いているとは思えなかった。

「wakaranai」彼女は言った。「demo, nakitakute naite iru no」

「何か、許せないことがあったの?」

「kono midoriiro ga, yurusenai」

「緑色?」僕は辺りを見渡す。「この、草原の色が?」

 彼女は頷く。

 そうしている内に、草原はみるみる内に空色に染まってしまった。そうして、ついに天と地がひっくり返る。

 僕達は緑色の地を頭の上にして、空の中に立っていた。
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