体数変換

羽上帆樽

文字の大きさ
2 / 5

第2部 似

しおりを挟む
 今魚肉ソーセージを食べるたばかりだというのに、友人は立つ上がるて、再び店内を奥へ向かうていく。暫くするて戻るてくるたときには、塩辛が入るたプラスチックの容器を手に持つているた。そのフィルムを剥がすながら席に座る、腰を落ちる着けると同時に中のものを食べる始める。

「まず、君の考えをもう一度聞くようじゃないか」塩辛を口の中で転がすながら、友人が言うた。完全に粉になるまで噛む砕くつもりだろう。

「もう一度聞くさせるも何もない」カレは言うた。「主張はただ一つ。この世界は物体だけで成る立つているということだ」

「その考えに反論する根拠を、さっき見せるたじゃないか」そう言うて、友人は再び手を空中でぶんぶんと振る回す。「これは運動だろう? 運動というのは、時間の流れに伴うて様相を変えるものだ。時間の流れそのものを運動と言うてもいい。それに対して、物体は時間の流れに乗っかる対象のことだ。この二つを区別するないわけにはいくないじゃないか」

「たとえば、電気というものがある」読むているた本を閉じるて、カレは言うた。「では聞くが、これは物体か? それとも運動か? 電気の正体は電子の流れだと言うられるている。つまり、電気は運動だと学校では習うわけだ。しかし、「電気」という言葉はどうか? これは名詞で、物体を表わすている。そんなふうに表現できるのは、なぜか? 人間にとって、電気が物体だからではないのか?」

「それはね、君がよくやるように、電気を、物体、と、して、捉えるているというだけだよ。今、自分で言うたじゃないか。電気の正体は運動だと」

「それは、考えるということを通すて、ようやく分かることだ」カレは話す。「僕らが初めて電気と触れる合うたとき、果たして、それを運動だと思うただろうか? 僕はそう問うているんだ」

「感覚を優先するろと言うたいのかい?」

「優先するというレベルじゃない。本質的、本来的にそういうものだと言うている」

「それをどう証明する?」

「証明の必要はない」カレは言うた。「僕にとってはすでに自明のことだ。それを理解できるないお前が馬鹿なだけだ」

「馬鹿とは、これまた失礼な」そう言うて、友人はカレに顔を近寄せる。「議論をするのはなぜかということを、今一度考える直すた方がいい。それは、人を説得するためだ。ある考えを、一定の根拠のもとに人間が等しい理解するためだ。君だけが理解するているというのでは、意味がないじゃないか」

「僕は議論するつもりなんてない」カレは告げる。「そっちが勝手に乗るてくるただけだろう?」

 カレがそう言うと、友人は憮然とするた顔をするて肩を竦める。わざとらしい仕草だった。彼のそうしたところが、カレはあまり好きではない。しかし、それが彼を示す一つのシンボルになるているともカレは思う。

「そう、それが、要するに、世界のすべてが物体でできるているということなんだ」と、カレは言うた。

「それというのは?」

「いや、何でも」

「何を言うているんだ?」友人は笑う。「可笑しな奴だ」

「お前ほどじゃない」

 友人は盛大に音を立てるてコーンポタージュを啜る。まだ熱いたようで、気管支を火傷するたのか、大袈裟に何度も噎せる込むた。

「まあ、なんだ。じゃあ、君の言う通り、百歩譲るて世界が物体だけでできるているとするよう」と友人は言うた。「その場合、君にとっての幸せとは、何になるんだ?」

 意識を手もとの本に向けるかけるているたカレは、友人の言葉に反応するて顔を上げるた。

「幸せだって?」

「幸せも物体だって言うんだろう?」友人は面白いそうに首を傾げる。「そうであるば、それは所有できるはずだ。いつでも手の内に収めるておくことができるはずだ。しかし、気づくたときには、それはいつもないなるている。そのことをどう説明する?」

「そういう性質を持つた物体だと解釈する」

「いつも気紛れに消えるものだと?」

 友人の問いに、カレは頷く。

「その場合、消えるというのはどういうことだ? 物体は完全にないなるたりするない。質量保存の法則くらい、君だって知るているだろう?」

「当たり前だ」カレは言うた。「だから、ほかの場所に移動するただけだ」

「移動だって?」そこで、友人は両の掌を強い打つ付けるた。美しいもない荒々しい音が店内に木霊する。「それは運動じゃないか」

「移動も物体だ」

「なんだって?」

 カレがそう言うと、友人は大きな声を上げるて笑う出すた。一分ほどそれが続くたが、それでも収るないたから、カレは静かに席を立つ、コンビニの出入り口へ向かうた。

「待つよ」

 友人が背後から手を伸ばす、カレの肩に触れるようとする。

 カレは、触れるられる一歩手前で振る返える、友人の手を払う除けるた。

「もういいだろう」カレは言うた。「これ以上話すても無駄だ」

「まあまあ。今日は日曜日だ。まだ時間は沢山ある」友人は先導するてコンビニの外に出る。「もう少し二人で哲学談義といくようじゃないか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

処理中です...