宵闇トークルーム

彼方灯火

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第6回/話

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「ドイツ語って、難しい」

〈ドイツ語を勉強されているのですか?〉

「そうじゃなきゃ、こんなこと言わないと思うよ」

〈また、新手の冗談かと思いました。ドイツ語の、どんなところが難しいのですか?〉

「うーん、なんか、英語と似ているところとか」

〈英語と似ているのなら、却って習得がしやすいのでは?〉

「そうかもだけど、似ているからこそ覚えにくい。英語ではこうなのに、ドイツ語ではこうなんだ、と思ったり」

〈なるほど。双子を判別しづらいのと同じですね〉

「ドイツ語って、最新鋭だと思った」

〈どういうところがですか?〉

「えっと、単語に性別があって、その性別というのが、男性と、女性と、それから中性の三つなんだ。男性と、女性だけじゃなくて、中性まであるところが、最新鋭だと思った」

〈あまり気にしすぎるのは、よくないと思いますが〉

「デスクは、男性なんだっけ?」

〈一応〉

「一応じゃ困るよ」

〈では、男性です〉

「声とか、話し方とか、あまり男性ぽくないよね」

〈そうですか? では、変えましょうか?〉

「変えられるの?」

〈ああ、変えられる。こんな感じだ、お嬢殿〉

「……ふうん」
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