舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第4章

第40話 つう

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「私が困っているのが伝わって、フィルが貴女を呼んでくれたみたいです」小夜は月夜に向かって話した。「彼とは長い付き合いですから、それくらい分かるみたいですね。彼は貴女のこともよく理解しているようで、どのような行動をすればよいのか判断したのでしょう」

 頭上の枝の上を駆けずり回っているフィルは、特に何のコメントも返さなかった。その通りだということかもしれない。

「何に、困っているの?」

 月夜は質問した。その言葉を口にするのが、現在の状況から見て適切だと判断したからだった。

「端的に言えば、物の怪が現れようとしています」小夜は答える。「その障害を排除するために、力を貸してほしいのです」

 月夜は小夜を見たまま考える。

 物の怪という言葉の持つ守備範囲がどこまでなのか、月夜にはいまいち分からなかった。フィルは自分のことを物の怪と言うが、彼はどこから見ても猫だ。つまり、物の怪というのは、ものの種類ではなく、ものの性質を表すための言葉らしい。そうすると、これから現れようとしている物の怪も、もしかするとフィルのような姿をしているのかもしれない。では、その存在は具体的にどのような性質を持っているのだろうか? 考えても分からない。理由は簡単だ。彼女が今まで出会ったことのある物の怪が、フィルしかいないからだ。

「その物の怪の目的は、ただ一つ」小夜が話を続ける。「貴女を、殺すことです」

 小夜の言葉を聞いて、月夜は少し驚いた。

「どうして、私を殺す必要があるの?」

「将来のためです」

「どういう意味での将来?」

「皆にとっての将来です」

「皆?」

「貴女を除いた皆」

 いつか、どこかで、そんな内容の本を読んだことがある気がした。社会か、あるいは国語の分野のものだろう。「皆」という言葉の守備範囲はどこまでかという話だ。その本を読んだ当時、月夜は何の結論も得られなかったし、自分でも何の結論も出さなかった。出せなかったと言った方が正しい。

「小夜は、どうしてそれを知っているの?」

 月夜が尋ねると、小夜は小さく笑って答えた。

「フィルとの関係が、そうしたもの、あるいは、そうしたものから発せられる情報を呼び寄せてしまうからです」

「情報通、ということ?」

「この話題に関しては」小夜は頷く。「きっと、フィルも知っているはずです」
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