40 / 255
第4章
第40話 つう
しおりを挟む
「私が困っているのが伝わって、フィルが貴女を呼んでくれたみたいです」小夜は月夜に向かって話した。「彼とは長い付き合いですから、それくらい分かるみたいですね。彼は貴女のこともよく理解しているようで、どのような行動をすればよいのか判断したのでしょう」
頭上の枝の上を駆けずり回っているフィルは、特に何のコメントも返さなかった。その通りだということかもしれない。
「何に、困っているの?」
月夜は質問した。その言葉を口にするのが、現在の状況から見て適切だと判断したからだった。
「端的に言えば、物の怪が現れようとしています」小夜は答える。「その障害を排除するために、力を貸してほしいのです」
月夜は小夜を見たまま考える。
物の怪という言葉の持つ守備範囲がどこまでなのか、月夜にはいまいち分からなかった。フィルは自分のことを物の怪と言うが、彼はどこから見ても猫だ。つまり、物の怪というのは、ものの種類ではなく、ものの性質を表すための言葉らしい。そうすると、これから現れようとしている物の怪も、もしかするとフィルのような姿をしているのかもしれない。では、その存在は具体的にどのような性質を持っているのだろうか? 考えても分からない。理由は簡単だ。彼女が今まで出会ったことのある物の怪が、フィルしかいないからだ。
「その物の怪の目的は、ただ一つ」小夜が話を続ける。「貴女を、殺すことです」
小夜の言葉を聞いて、月夜は少し驚いた。
「どうして、私を殺す必要があるの?」
「将来のためです」
「どういう意味での将来?」
「皆にとっての将来です」
「皆?」
「貴女を除いた皆」
いつか、どこかで、そんな内容の本を読んだことがある気がした。社会か、あるいは国語の分野のものだろう。「皆」という言葉の守備範囲はどこまでかという話だ。その本を読んだ当時、月夜は何の結論も得られなかったし、自分でも何の結論も出さなかった。出せなかったと言った方が正しい。
「小夜は、どうしてそれを知っているの?」
月夜が尋ねると、小夜は小さく笑って答えた。
「フィルとの関係が、そうしたもの、あるいは、そうしたものから発せられる情報を呼び寄せてしまうからです」
「情報通、ということ?」
「この話題に関しては」小夜は頷く。「きっと、フィルも知っているはずです」
頭上の枝の上を駆けずり回っているフィルは、特に何のコメントも返さなかった。その通りだということかもしれない。
「何に、困っているの?」
月夜は質問した。その言葉を口にするのが、現在の状況から見て適切だと判断したからだった。
「端的に言えば、物の怪が現れようとしています」小夜は答える。「その障害を排除するために、力を貸してほしいのです」
月夜は小夜を見たまま考える。
物の怪という言葉の持つ守備範囲がどこまでなのか、月夜にはいまいち分からなかった。フィルは自分のことを物の怪と言うが、彼はどこから見ても猫だ。つまり、物の怪というのは、ものの種類ではなく、ものの性質を表すための言葉らしい。そうすると、これから現れようとしている物の怪も、もしかするとフィルのような姿をしているのかもしれない。では、その存在は具体的にどのような性質を持っているのだろうか? 考えても分からない。理由は簡単だ。彼女が今まで出会ったことのある物の怪が、フィルしかいないからだ。
「その物の怪の目的は、ただ一つ」小夜が話を続ける。「貴女を、殺すことです」
小夜の言葉を聞いて、月夜は少し驚いた。
「どうして、私を殺す必要があるの?」
「将来のためです」
「どういう意味での将来?」
「皆にとっての将来です」
「皆?」
「貴女を除いた皆」
いつか、どこかで、そんな内容の本を読んだことがある気がした。社会か、あるいは国語の分野のものだろう。「皆」という言葉の守備範囲はどこまでかという話だ。その本を読んだ当時、月夜は何の結論も得られなかったし、自分でも何の結論も出さなかった。出せなかったと言った方が正しい。
「小夜は、どうしてそれを知っているの?」
月夜が尋ねると、小夜は小さく笑って答えた。
「フィルとの関係が、そうしたもの、あるいは、そうしたものから発せられる情報を呼び寄せてしまうからです」
「情報通、ということ?」
「この話題に関しては」小夜は頷く。「きっと、フィルも知っているはずです」
0
あなたにおすすめの小説
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる