舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第11章

第108話 talk

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 昼休みの屋上。

 正確には屋上ではない。渡り廊下の上だ。そこだけ校舎の中で外気に晒されている。今日も眼下に噴水が見えた。勢いはいつも通りに水を吐き出している。

 人通りは少なかった。もう、昼休みが始まって暫く経つからだ。始まってすぐと終わる間際には人は多くなるが、その間では少ないのが一般的だ。つまり、余裕を持って移動する者は、そうでない者に比べて目立つということになる。ここでの「目立つ」というのは数が多いということではないが。

 渡り廊下を支える壁の側面から、何か黒いものがこちらに近づいてきた。それを視認して一秒くらいは分からなかったが、次のカウントに移るくらいには判断は終わっていた。

 フィルだった。

「日中に来るのは珍しい」

 床(地面?)に難なく着地した彼に向かって、月夜は分析結果を述べる。

「俺もそう思う」フィルは応えた。「ちょうど通りかかったんでな。これから時間をかけて家に帰るつもりだ」

 風が吹く。午前中は晴れていたが、今は若干雲が出てきていた。日が遮られると途端に冷たくなる。それだけ地球は太陽に依存しているということだろう。地球温暖化の前に地球冷酷化の心配をすべきかもしれない。

「皿はこの学校を中心に分布している」月夜と一緒に前方を眺めながら、フィルが話した。「学校からお前の家までを半径として、四方八方に広がっている感じだ」

「どうして、私の家を中心にしなかったんだろう」月夜は思いついた疑問をそのまま口にする。

「俺には分からないが、学校で過ごす時間の方が長いからじゃないか?」

「分からないのに、分かるの?」

「ディスコースマーカーみたいなものだからな。譲歩の意味を付加するためだけにはたらいているんだ」

「その、ばら撒かれた皿には、誰も気がついていないみたいだった?」

「おそらく」

「フィルの存在は?」

「俺の存在? 俺はいつもどんなときでも俺だが」

「どういう意味?」

「何でもかんでも意味があると思ってはいけない」

「思っていないけど」

「月夜は相変わらず可愛いな」

「どうも、ありがとう」月夜は素直に喜ぶ。表情は特に変わらなかった。

「今の忠告を聞いていたか?」

「そもそも、意味とは? その定義が曖昧だから、互いに話が噛み合わないのでは?」

「公平や正義を議題としたときに、戦争に発展するのと同じか?」

「同じかもしれないし、同じではないかもしれない」

「なるほど」フィルは満足気に頷いた。「可能性というやつだな」
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