舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第14章

第139話 以降も移行が続く予定

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 食事が始まる。

 いつも少量しか食べないが、日を重ねるに連れて量が多くなってきているように思える。その点をルゥラに指摘しても、「そう?」と返されるだけだった。そうだろう、と言い返そうと思ったが、言い返す必要が見つからなかったのでやめておいた。

 今日のメニューは、アジの開きを焼いたものと、スクランブルエッグ、それにキュウリやトマト、アスパラガスなどが含まれた豪勢なサラダだった。どれもシンプルな料理だが、かなり手が込んでいる。スクランブルエッグは、単にフライパンに卵を流して掻き混ぜただけではなく、きちんと味付けが成されている。普段料理をあまりしない月夜には、使われている調味料を予想することはできても、どのような工程が経られているのか想像するのは難しかった。

「どうぞ」

 ルゥラが笑顔で勧めてくる。

「どうも」月夜は手を合わせて言った。「いただきます」

 とりあえず、サラダから箸をつける。いきなりアジや卵を口に入れるのは抵抗があった。いや、抵抗ではなく摩擦かもしれない。

「どう? 美味しい?」

「うん」ルゥラの質問に月夜は頷いて答える。「美味しい」

 フィルは月夜の膝の上にいる。今は丸まっていなかった。彼は何も食べていない。朝は食欲がないみたいだ。月夜と同じだった。

「月夜、元気になったみたいだね」向かい側の席に腰を下ろして、ルゥラが言った。

「元気?」

「さっきまで、寝坊助だったじゃん」

「寝坊助……」月夜はルゥラの言葉を繰り返す。

「ご飯を食べられると思って、テンションが上がっちゃった?」

「いや、上がっていない」

「じゃあ下がった?」

「下がってもいない」

 ルゥラ自身は今は何も食べていない。月夜が学校に行ってから食べるそうだ。月夜が食べているところを見たいらしい。食べながら眺めることもできるはずだが……。

「俺はそろそろ行こう」フィルが立ち上がった。

 月夜は彼に尋ねる。

「どこへ?」

「散歩」

「もう、仕事は終わったの?」

「ああ、終わったさ」

「あ、仕事って、私が作った皿を片づけちゃうやつ?」ルゥラが勢いよく立ち上がる。「駄目だよ! もったいないんだから!」

「まだ街中には一定量残っている」フィルが言った。「うちの周囲からはなくなったがな。一体、どんなふうにしたら、あんなに広範囲にばらまくことができるんだ?」

「知らないもん。えいってやったら、できたんだもん」

「それはお前の意志なのか?」

「意志?」ルゥラはきょとんとした顔をする。

「お前の望みは何だ?」

「月夜にご飯を食べてもらうことだよ」

 月夜はアジの解体作業に移行した。
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