舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第15章

第144話 切れ目

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 切れ目というものがある。

 あるもの全体を一律に扱うことはできない。なぜなら、人間にはものを分けて捉える性質があるからだ。では、なぜそのような性質があるのかと問われても、その問に答えられる者はいない。その問いに答えるのは人間であり、人間は例外なくそのような性質を帯びているからだ。

 切れ目があることは大抵の場合利点になる。楽をすることができるからだ。切れ目がなければ延々と続くことになるが、切れ目があるとそこで終わらせられる。そもそも、始まり、終わりという分け方が、すでに切れ目の思考の中にある。つまり、こうしたことを考えている間も、人間は自らが持つ性質を遺憾なく発揮している。

 切れ目があるということは、絶対的な終わりがあるということを意味しない。むしろ、無限に続くから切れ目が必要なのだ。たとえば、線を引いて、引いて、引いていくと、いつまでも、どこまでも続けることができる。しかし、それを本当にいつまでも続けていくと、やがて他国の領土を侵略することになるので、どこかでやめなくてはならない。だから必ずどこかでやめる。やめた場所がすなわち切れ目なのだ。

 切れ目は人間が作り出すものであり、世界には切れ目なるものは存在しない。その可能性が高い。ここで、可能性が高いというような言い方をしたのは、我々が人間である以上、世界の本当の在り様を認識することができないからだ。こんなことを考えているときにも、やはり切れ目の思考がはたらいている。そもそも、切れ目の思考がなければ言葉など紡げない。言葉は人間が持つ性質をよく反映している。

 人間が一つだと捉えているものは、実は遙かに様々なものと繋がっている。そのすべてを捉えることができないから、人間にとっては切れ目が必要なのだ。ある人間が存在し、その者の一生を考えるとき、生体を構成する原子の出所や行く末までは考えない。その人間で一つとして捉える。そういうふうに切れ目を作った。しかし本当はそうではない。本当はそうでないという判断にも、切れ目の思考がはたらいている。

 そして、人間の思考にも本当は切れ目がない可能性が高い。切れ目の思考によって、自らの思考に切れ目を見出しているのだ。
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