舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第17章

第168話 art

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 よく分からない時間に家に帰ってきた。出かけたのは何時頃だっただろうかと月夜は頭を捻る。実際に頭を捻る場合もあるが、今は運動としてそうしたわけではなかった。彼女の隣でルゥラはその運動をしていたが。

 実は、月夜も洗濯物や布団を干したりしている。干したり、と言ってもほかに何か特別な行為をするわけではない。掃除はするが毎日ではない。

 干してあったものを片づけた終えた頃には、日が傾きかけていた。陽光が山に遮られ、微妙な光量でリビングの窓から差し込んでくる。

 リビングにあるソファに座って、ルゥラは手に皿の破片を持ってじっと見つめていた。隣にフィルが座っている。

 街中にはまだ随所に皿が散乱されている。月夜たちにしか見えないので、散乱されていても実質的な被害はないが、本来そこにあるべきでないものがあると気になるものだ。だから拾える範囲で拾ってきた。拾ってもどうにもならない。その内フィルが食べるだろうが、今はそんな気分ではないみたいだった。

「なかなか素晴らしい一品だったな」

 ルゥラが持つ皿を隣から見つめながら、フィルが言った。

「そう?」

「ただ、食べすぎるとよくない。胃の中がごろごろする」

「胃の中って、胃の外もあるの?」

「あるんじゃないか? 胃は腹の中で宙ぶらりんになっているんだからな」

「腹の中って、腹の外もあるの?」

「うん、ないな」

「私、もう、皿の生み出し方が分からなくなっちゃった」ルゥラは伸びをしながら言った。「うーん、スランプってやつかなあ……。どうやって生み出していたんだろうなあ……」

「作りたくなったら作ればいい。芸術とはそういうものらしい」

「フィルは何か作ったりしないの?」

「今、お前との関係を作っているじゃないか」

「関係? それ、どういう意味?」

「うむ。誤解を招くような言い回しだったな」

「有無?」

 フィルとルゥラが話している隣で、月夜は洗濯物を畳む。量が少ないのであっという間に終わった。あっという間というのは言いすぎかもしれない。せいぜいえっという間くらいが妥当だろう。

「月夜は、何か芸術をするの?」

 質問の矢先が自分に向かってきて、月夜は顔を上げた。

「しない」そして単刀直入に答える。

「えー、なんだかつまんないなあ。私一人で作っていてもさあ……」ルゥラはソファの上に両腕を投げ出す。

「勉強も芸術の内に入る?」

「勉強?」顔だけ上げてルゥラは月夜を見た。「勉強かあ……。うーん、勉強ねえ……」
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