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第18章
第175話 always
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玄関の外にフィルが立っていた。いつものように行儀良く座っている。
「どうして、インターホンを鳴らしたの?」
月夜はしゃがみ込んでフィルと目線を合わせる。そうしても猫の気分にはなれなかった。フィルの気分にはなれたかもしれない。
「特に理由はない」フィルは月夜を見つめて答える。「しかし、理由がないということが、そのまま、意味がないということを意味するわけでもない」
「ルゥラは眠っている」
「ああ、そうだろうな」
「特に理由はない」
「眠ることに理由はあるだろう。生理的なものだから」
月夜はフィルを抱きかかえて室内に戻った。
「どうしたんだ、料理なんか作って」テーブルの上にあるものを見て、フィルが尋ねてきた。
「料理なんか作った」月夜は応える。
「俺に食えってことか? 生憎だが、今はお腹がいっぱいで食べられないんだ」
「ルゥラのために作った。フィルも食べたかった?」
「いいや、まったく」
月夜はソファに座る。フィルはどうやってインターホンを鳴らしたのだろうかと考えたが、答えは分からなかった。飛び上がればそのくらいまで手が届くものだろうか。
本当に静かな夜。
but, not静謐。
何かが聞こえるが、それが何だか分からない。
リビングの照明は今は橙色になっていた。月夜がそうしたからだ。こういう色の照明を何と呼ぶのか思い出そうとしたが、分からなかった。ルゥラが起きてしまわないように配慮したつもりだ。ただ、眠っている者にとって、外部の明るさが関係するのかは不明だ。
「毎日毎日食事をとらなくてはならない身体というのも、大変だな」机の周囲をうろうろしながら、フィルが言った。
「本来、身体とはそういうもの」
「しかし、毎日毎日同じことをするのが、生きるということだからな」
「何も、しかし、ではない」
「月夜はきちんと生きているか?」
きちんととはどういう意味だろう、と月夜は考える。
「生きているかもしれないし、生きていないかもしれない」
「決まりきった返事だな」
「毎日、同じことをするから」
すぐ傍にいるルゥラが寝返りを打つような素振りを見せる。けれど、そのまま一回転すると落ちてしまいそうで、月夜は手を伸ばして彼女の身体を支えた。
「彼女が起きてから料理を作ればよかったじゃないか」
フィルに言われ、その通りだと月夜は思う。
「その通り」だから、その通りのことを口にした。
「どうして、インターホンを鳴らしたの?」
月夜はしゃがみ込んでフィルと目線を合わせる。そうしても猫の気分にはなれなかった。フィルの気分にはなれたかもしれない。
「特に理由はない」フィルは月夜を見つめて答える。「しかし、理由がないということが、そのまま、意味がないということを意味するわけでもない」
「ルゥラは眠っている」
「ああ、そうだろうな」
「特に理由はない」
「眠ることに理由はあるだろう。生理的なものだから」
月夜はフィルを抱きかかえて室内に戻った。
「どうしたんだ、料理なんか作って」テーブルの上にあるものを見て、フィルが尋ねてきた。
「料理なんか作った」月夜は応える。
「俺に食えってことか? 生憎だが、今はお腹がいっぱいで食べられないんだ」
「ルゥラのために作った。フィルも食べたかった?」
「いいや、まったく」
月夜はソファに座る。フィルはどうやってインターホンを鳴らしたのだろうかと考えたが、答えは分からなかった。飛び上がればそのくらいまで手が届くものだろうか。
本当に静かな夜。
but, not静謐。
何かが聞こえるが、それが何だか分からない。
リビングの照明は今は橙色になっていた。月夜がそうしたからだ。こういう色の照明を何と呼ぶのか思い出そうとしたが、分からなかった。ルゥラが起きてしまわないように配慮したつもりだ。ただ、眠っている者にとって、外部の明るさが関係するのかは不明だ。
「毎日毎日食事をとらなくてはならない身体というのも、大変だな」机の周囲をうろうろしながら、フィルが言った。
「本来、身体とはそういうもの」
「しかし、毎日毎日同じことをするのが、生きるということだからな」
「何も、しかし、ではない」
「月夜はきちんと生きているか?」
きちんととはどういう意味だろう、と月夜は考える。
「生きているかもしれないし、生きていないかもしれない」
「決まりきった返事だな」
「毎日、同じことをするから」
すぐ傍にいるルゥラが寝返りを打つような素振りを見せる。けれど、そのまま一回転すると落ちてしまいそうで、月夜は手を伸ばして彼女の身体を支えた。
「彼女が起きてから料理を作ればよかったじゃないか」
フィルに言われ、その通りだと月夜は思う。
「その通り」だから、その通りのことを口にした。
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