舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第18章

第180話 normal

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 三人で同じ布団に入ると狭かったが、もう慣れたことではあった。三人といっても、一人は三頭身なので、それほどスペースを食うわけでもない。

「ねえ、月夜」

 耳もとからルゥラの声が聞こえて、月夜は目を開ける。目を開ける必要はなかったが、反射的に開けてしまった。

「何?」ルゥラに倣って、抑えた声で月夜は応じる。

「明日もどこかへ行く?」

「どこかとは?」

「どこでもいいけど」

 どうしようか、と月夜は考える。そろそろ学校に行かなくてはならないと考えていた。ルゥラの体調も大分良くなったからだ。

 しかし、ルンルンのことがある。彼女はまた来ると言った。そして、また来ると言ったからには、その通りにまた来るだろう。前回はそれを示すために来たのかもしれない。

 もう暫く、ルゥラの傍にいた方が良いだろうか。

「分かった」月夜は了承した。「でも、ルゥラは大丈夫なの?」

「何が?」

「身体は?」

「身体?」ルゥラは首を傾げたみたいだった。もちろん月夜には見えない。動きでそれが分かった。「どうして、身体?」

「前に、暴れられたから」

「ああ、あの人に?」ルゥラは首を左右に捻る。髪がシーツに擦れて音を立てた。「うーん、どうだろう。分からない。でも、元気に動けるから、元気だと思うよ」

 それはそうだろう、と月夜は思う。

「ルゥラが大丈夫なら、どこに行ってもいい」

「うん、じゃあ、そういうことにしよう」

 月夜も暗闇の中で頷いてみる。

「じゃあ、早く寝なくちゃ。おやすみなさい」

「おやすみなさい」

 沈黙。

 傍にいるフィルをなんとなく抱き締めてみる。フィルはもぞもぞと動いたが、抵抗はしなかった。

 自分は、あと、どれくらいルゥラと一緒にいられるのだろう?

 どうしてかは分からなかったが、そんな疑問がふと湧くのを感じた。いや、それは今現れたのではない。ずっと前から抱いていた。それを今になって思い出したにすぎない。

 シャッターのない窓から光が僅かに差し込んでいる。その光の発生源が何なのかは分からない。月なのか、街灯なのか、家の照明なのか……。

 街中にはまだ沢山皿が残っている。月夜の自宅の周辺からはなくなったが、月夜の家の中にはまだ残っているし、遠くの方に行けばそこにも散らばっているはずだ。

 ルゥラがいなくなったとき、自分はどうなるだろう?

 ……?

 どうなる?

 たぶん、どうにもならないだろう、という予測が即座に立つ。人はそう簡単に変わらない。特に変わろうとしない限りは……。
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