舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第19章

第183話 進行する過程と従属する時間

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 歩道橋を渡る。その上にも皿が散乱していた。皿をばら撒きながら階段を上り下りしたようだ。橋の上から遠くの方を見る。別に何も見えない。足もとに自動車用の信号機。点滅して発せられる周波数が変動する。

 一歩足を踏み出す度に、ルゥラもまた一歩遠のくように思えた。もちろん、単なる幻想だ。事実は分からない。しかし、早く追いつかないと、どこまでも追いかけることになる。

 たぶん、これは月夜たちを呼び出すための方策だ。そのためにわざと行く先が示されている。ルンルンの仕業だろうか。その可能性も考えられるが、彼女なら直接自分の所へ来るように思えた。

「ぼうっとしていると、転ぶぞ」

 隣から声をかけられて月夜は我に返る。たしかに少しぼうっとしていたが、歩くのに意識を集中させるのも難しい。

「フィルは何か感じない?」歩きながら月夜は質問する。

「感じる? 何をだ?」

「何か」

「そうだな。お前の焦りを感じる」

「焦り?」月夜は首を傾げた。「私、焦っている?」

「自分に聞いてみたらどうだ? 少なくとも、外部に表出する情報から俺が推測した結果はそうなった」

 表情が強ばっているのだろうか、と月夜は考える。

「動きがぎこちない」すぐにフィルが返答をくれる。彼は所々で月夜の思考を読む。エスパーの使い手だからかもしれない。

「たしかに、ルゥラがいなくなったことに、危機感を覚えているかもしれない」

「あいつがいなくなったら、美味しいご飯を食べられなくなるからな」

「そういう意味ではない」

「では、どういう意味だ?」

「こういう意味」

 そう言って、月夜はその場で一回転してみせる。

 カーブしながら緩やかに下る坂道を進んだ。皿はそちらの方に向かって続いている。相変わらず、歩道の中心に皿が整列されている。割れているものは少なかった。全体的な量が少ないことと、誰もその上を歩いていないことが原因だろう。もっとも、月夜たち以外の者がその上を歩いても皿が割れるのか定かではないが。

 少し、風が冷たい。

 自分が冷たく感じるということは、気温は平均的にはかなり低いのだろう、と推察する。

 ルゥラは寒く感じているだろうか。

 子どもの身体は温かいから平気だろうか。

 唐突に、傍に立つ街灯が明かりを灯した。

 月夜の前に立つ一つだけ。
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