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魔女の誕生編
ep8 魔女になって夜空を舞う!
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身の丈ほどの杖に腰かけて、夜空を舞う一人の女性。
その身に纏うは黒いローブと、同じく黒の三角帽。
空色の髪をなびかせる姿は、まごうことなき魔女。
「なーんて、洒落たセリフの一つでも入れたくなるけど、そんなテンションじゃないよねぇ。ヒャッハー!」
胸の内でちょっとした詩でも歌いたくなるが、ぶっちゃけ今はそんな幻想に浸る気分じゃない。
だってアタシは今、空を飛んでるんだよ? 飛行機とかパラグライダーとかじゃなくて、ほぼ生身の自力で。
これでテンションが上がらない人間なんている? いいや、いない。
誤ってマグネットリキッドを飲んだ時はどうなることかと思ったけど、まさかこんなことができるようになるとは思わなかった。
まさに魔女。アタシが学んだ科学が可能にした、我流科学の魔法使い。
『高度な科学は魔法と相違ない』と聞いたことがあるが、自分でこうしてやってみると、マジでそれを実感する。
「えーっと。現在の高度は約1000m、速度は約70km/hの辺りで推移中か。特に負担も感じないし、これがデフォルト値として見てよさそうだね」
自らの能力に感心しつつも、データをとることは忘れない。
後でサーバーに転送したデータをもとにレビューし、さらなる解析と改良だってしたい。
コンタクトレンズ越しに映る数値にも目を凝らし、自らの体力とも照らし合わせてみる。
それにしても、この数値がデフォルト値なら凄いカタログスペックになりそうだ。
高度は高層ビルを軽く超えてるし、速度も一般的な中型車両と同じと見える。
出力を全開にすればさらなる向上も図れるが、今はこれぐらいに抑えておこう。
――てか、徹夜テンションと開発版ランナーズハイみたいなので、安全面のことを考えてなかった。
下手に失敗すれば、このまま地面へ真っ逆さまに急降下。そのままお陀仏だってあり得る。
ただ、そんな不安をわずかにしか感じないほど、アタシは新たに手にした能力に自信を持てている。
正直、落ちる気がしない。落ちても大丈夫な気さえする。肉体強度も上がってるし。
「とは言っても、やっぱ無理は禁物ってもんだね。あんまり人に見られて騒がれたくもないけど、もうちっと落としときますか」
ただやっぱり、こういう前代未聞の試みにおいて、油断というものは禁物だ。
アタシだって未熟でも技術者。そういう安全面への配慮は高校で教わっている。
こういう、何気ない場面でも安全面を意識する。
それが一流の技術者ってもんよ。
――あっ。今アタシ、なんかいいこと言った気がする。
「まあ、実際には思っただけだけど。さてさて、高度も速度も落として来たら、地上の様子も見えてきたね」
そんな一人ボケツッコミも交えながら、アタシは地上の様子を眺めてみる。
まだ道行く人からは気付かれるほどではないが、こっちはコンタクトレンズの望遠機能でズーム確認ができる。
丁度世間は帰宅時。飲み屋に入るサラリーマン達や、子連れの家族の姿が見える。
アタシも飲みに出かける時はよく見る光景だが、こうやって上から眺めることになるとは思わなかった。
しかも移動しながら。空を飛びながら。
「……ん? なんだこれ?」
そうやって眼下の景色を眺めながらの飛行を続けていると、目の前に何かが飛んできた。
フワフワと浮いていたので思わず手に取ると、どうやら風船のようだ。
「こんな所に風船か……。となると、子供がうっかり手を放しちゃったのかな?」
そんなことを考えながら下に目を向けてみると、思った通り小さな少女がワンワン泣いているのが見える。
その横にはなだめる両親。アタシも小さい頃に見た光景だ。
――まあ、あれは家族付き合いで一緒にいたタケゾーだったけど。
「仕方ないねぇ。あんまり姿は晒したくないけど、パパッと行ってさりげなく渡しちゃうか」
普段からタケゾーの勤める保育園で、小さな子供と関わる機会も多い。
そんなわけで、子供が泣いてるのを見るとどうにも放っておけない。
人に見られたくないとはいえ、別に悪いことをしてるわけじゃない。
アタシは素早く高度を落とし、風船を持って少女の前へと舞い降りる。
「はい! お嬢ちゃん! この風船を放しちゃったんだよね?」
「ふえ? お、おねえちゃん、だれ?」
「だ、誰だ!? 今、空から降りてきたよな!?」
「その恰好、まさか魔女!? え!? でも、そんな人が実在するはずないよね!?」
アタシが風船を少女に手渡すと、その姿に驚く両親。
そりゃそうだ。いきなり空から人が降りてきて、飛んでいった風船を拾ってきたのだ。我が目を疑いたくもなるだろう。
それにしても、母親の様子からアタシの魔女ルックは完璧と見える。
やっぱ、魔女に見えるよね? 意識したことがその通りに受け取ってもらえると、なんとも感慨深い。
「まっ。アタシのことは気にしないでいいからね。そいじゃ、アディオース!」
しかし、長居は無用と言うものだ。あまり変な噂も立てられたくないし、身バレだってしたくない。
少女に風船を渡し終えると、アタシは颯爽とその場を後にする。
「ちょーっと人目についちゃったけど、別に悪い気はしないか。偶然手にした能力とはいえ、人助けの役にも立つもんだ。ニシシ~」
再び空へと戻るアタシの下では、風船を手に持った少女が笑顔でこちらに手を振っている。
それを見るとアタシも自然と笑みがこぼれ、手を振ってお返しをしてしまう。
目立つのは嫌だとも思ったけど、それでも人助けできた嬉しさが上回る。
「いやー。とりあえずは思い付きで空飛んでみたけど、これは色々と利用できそうで――あれ?」
そうして再び上空から街並みを眺めていると、またしても気になるものを発見。
横断歩道を渡るおばあさんが見るのだが、足取りがおぼつかないし、信号が今にも変わりそうだ。
そして、車道からは結構なスピードで交差点に差し掛かろうとする車――
「……って、やっべえじゃん!? ああ!? と、とにかく急いで助けないと!」
――それを確認すると、アタシは再度ロッドにかかるベクトルを操作して、おばあさんのもとへと向かう。
ただし、今回はのんびりしている暇もない。さっきとは違って、急降下からスピードを出して車道の車の間を抜ける、
100km/h程出ているが、それでも車の間をスイスイと抜けられる。
これも変化した体の影響か。強化された神経が反応速度を引き上げ、次に動くべき方向を即座に判断させてくれる。
そして、横断歩道にいるおばあさんのところまで来ると――
ガシッ!
「ほらほら、おばあちゃん。横断歩道は余裕を持って渡りなよ?」
「は、はへぇえ!? な、何事じゃ!?」
――右手でおばあさんをキャッチして、安全な歩道へと降り立たせる。
おばあさんは驚いて目を丸くしているが、特に怪我はないようだ。
てか、今アタシ、おばあさんとはいえ人ひとりを片手で運んだのか。
この筋力増強効果も半端ない。トラックを殴り飛ばした件も含めて、後でレビューにまとめておこう。
「じゃあね! おばあちゃん! 長生きしなよ! アディオス!」
「あ、ああ……あでぃおす?」
おばあさんの無事も確認できたことだし、アタシは再び空中へと舞い戻っていく。
なんだか『アディオス』っていうのが決め台詞っぽくなってきた。
テンション上がってる影響だろうけど、本当に決め台詞にでもしようかね?
「つーか、そもそもはあの車が悪いんだよね。ちゃんと前方を見ていたもんかね?」
そうして街の上空へと戻ったアタシだが、冷静に考えてみると悪いのはおばあさんじゃない。突っ込んできた車の方だ。
いくら信号が変わりそうだったからって、前を見てれば気付くはずだ。
「これはちょいと、お仕置きでもしてみようかね? さーて、どこに行ったものか……」
どうしても気になって辺りを見回すも、交通量の多い時間帯のせいで中々見つからない。
とりあえず、お仕置きの内容としては、いきなり車と並走して驚かす感じで行こう。
まあ、相手の車が見つからないと意味ないけど。
ファン ファン ファン
「ん? パトカーのサイレン?」
そんな時、今度はサイレンの音が耳に入ってくる。
そちらに目を向けてみると、どうやらパトカーが一台の車を追っている最中のようだ。
高速道路に入り込み、結構熱いカーチェイスを繰り広げているが――
「あー!? 追われてる車、さっきおばあさんを轢こうとした車じゃん!?」
その身に纏うは黒いローブと、同じく黒の三角帽。
空色の髪をなびかせる姿は、まごうことなき魔女。
「なーんて、洒落たセリフの一つでも入れたくなるけど、そんなテンションじゃないよねぇ。ヒャッハー!」
胸の内でちょっとした詩でも歌いたくなるが、ぶっちゃけ今はそんな幻想に浸る気分じゃない。
だってアタシは今、空を飛んでるんだよ? 飛行機とかパラグライダーとかじゃなくて、ほぼ生身の自力で。
これでテンションが上がらない人間なんている? いいや、いない。
誤ってマグネットリキッドを飲んだ時はどうなることかと思ったけど、まさかこんなことができるようになるとは思わなかった。
まさに魔女。アタシが学んだ科学が可能にした、我流科学の魔法使い。
『高度な科学は魔法と相違ない』と聞いたことがあるが、自分でこうしてやってみると、マジでそれを実感する。
「えーっと。現在の高度は約1000m、速度は約70km/hの辺りで推移中か。特に負担も感じないし、これがデフォルト値として見てよさそうだね」
自らの能力に感心しつつも、データをとることは忘れない。
後でサーバーに転送したデータをもとにレビューし、さらなる解析と改良だってしたい。
コンタクトレンズ越しに映る数値にも目を凝らし、自らの体力とも照らし合わせてみる。
それにしても、この数値がデフォルト値なら凄いカタログスペックになりそうだ。
高度は高層ビルを軽く超えてるし、速度も一般的な中型車両と同じと見える。
出力を全開にすればさらなる向上も図れるが、今はこれぐらいに抑えておこう。
――てか、徹夜テンションと開発版ランナーズハイみたいなので、安全面のことを考えてなかった。
下手に失敗すれば、このまま地面へ真っ逆さまに急降下。そのままお陀仏だってあり得る。
ただ、そんな不安をわずかにしか感じないほど、アタシは新たに手にした能力に自信を持てている。
正直、落ちる気がしない。落ちても大丈夫な気さえする。肉体強度も上がってるし。
「とは言っても、やっぱ無理は禁物ってもんだね。あんまり人に見られて騒がれたくもないけど、もうちっと落としときますか」
ただやっぱり、こういう前代未聞の試みにおいて、油断というものは禁物だ。
アタシだって未熟でも技術者。そういう安全面への配慮は高校で教わっている。
こういう、何気ない場面でも安全面を意識する。
それが一流の技術者ってもんよ。
――あっ。今アタシ、なんかいいこと言った気がする。
「まあ、実際には思っただけだけど。さてさて、高度も速度も落として来たら、地上の様子も見えてきたね」
そんな一人ボケツッコミも交えながら、アタシは地上の様子を眺めてみる。
まだ道行く人からは気付かれるほどではないが、こっちはコンタクトレンズの望遠機能でズーム確認ができる。
丁度世間は帰宅時。飲み屋に入るサラリーマン達や、子連れの家族の姿が見える。
アタシも飲みに出かける時はよく見る光景だが、こうやって上から眺めることになるとは思わなかった。
しかも移動しながら。空を飛びながら。
「……ん? なんだこれ?」
そうやって眼下の景色を眺めながらの飛行を続けていると、目の前に何かが飛んできた。
フワフワと浮いていたので思わず手に取ると、どうやら風船のようだ。
「こんな所に風船か……。となると、子供がうっかり手を放しちゃったのかな?」
そんなことを考えながら下に目を向けてみると、思った通り小さな少女がワンワン泣いているのが見える。
その横にはなだめる両親。アタシも小さい頃に見た光景だ。
――まあ、あれは家族付き合いで一緒にいたタケゾーだったけど。
「仕方ないねぇ。あんまり姿は晒したくないけど、パパッと行ってさりげなく渡しちゃうか」
普段からタケゾーの勤める保育園で、小さな子供と関わる機会も多い。
そんなわけで、子供が泣いてるのを見るとどうにも放っておけない。
人に見られたくないとはいえ、別に悪いことをしてるわけじゃない。
アタシは素早く高度を落とし、風船を持って少女の前へと舞い降りる。
「はい! お嬢ちゃん! この風船を放しちゃったんだよね?」
「ふえ? お、おねえちゃん、だれ?」
「だ、誰だ!? 今、空から降りてきたよな!?」
「その恰好、まさか魔女!? え!? でも、そんな人が実在するはずないよね!?」
アタシが風船を少女に手渡すと、その姿に驚く両親。
そりゃそうだ。いきなり空から人が降りてきて、飛んでいった風船を拾ってきたのだ。我が目を疑いたくもなるだろう。
それにしても、母親の様子からアタシの魔女ルックは完璧と見える。
やっぱ、魔女に見えるよね? 意識したことがその通りに受け取ってもらえると、なんとも感慨深い。
「まっ。アタシのことは気にしないでいいからね。そいじゃ、アディオース!」
しかし、長居は無用と言うものだ。あまり変な噂も立てられたくないし、身バレだってしたくない。
少女に風船を渡し終えると、アタシは颯爽とその場を後にする。
「ちょーっと人目についちゃったけど、別に悪い気はしないか。偶然手にした能力とはいえ、人助けの役にも立つもんだ。ニシシ~」
再び空へと戻るアタシの下では、風船を手に持った少女が笑顔でこちらに手を振っている。
それを見るとアタシも自然と笑みがこぼれ、手を振ってお返しをしてしまう。
目立つのは嫌だとも思ったけど、それでも人助けできた嬉しさが上回る。
「いやー。とりあえずは思い付きで空飛んでみたけど、これは色々と利用できそうで――あれ?」
そうして再び上空から街並みを眺めていると、またしても気になるものを発見。
横断歩道を渡るおばあさんが見るのだが、足取りがおぼつかないし、信号が今にも変わりそうだ。
そして、車道からは結構なスピードで交差点に差し掛かろうとする車――
「……って、やっべえじゃん!? ああ!? と、とにかく急いで助けないと!」
――それを確認すると、アタシは再度ロッドにかかるベクトルを操作して、おばあさんのもとへと向かう。
ただし、今回はのんびりしている暇もない。さっきとは違って、急降下からスピードを出して車道の車の間を抜ける、
100km/h程出ているが、それでも車の間をスイスイと抜けられる。
これも変化した体の影響か。強化された神経が反応速度を引き上げ、次に動くべき方向を即座に判断させてくれる。
そして、横断歩道にいるおばあさんのところまで来ると――
ガシッ!
「ほらほら、おばあちゃん。横断歩道は余裕を持って渡りなよ?」
「は、はへぇえ!? な、何事じゃ!?」
――右手でおばあさんをキャッチして、安全な歩道へと降り立たせる。
おばあさんは驚いて目を丸くしているが、特に怪我はないようだ。
てか、今アタシ、おばあさんとはいえ人ひとりを片手で運んだのか。
この筋力増強効果も半端ない。トラックを殴り飛ばした件も含めて、後でレビューにまとめておこう。
「じゃあね! おばあちゃん! 長生きしなよ! アディオス!」
「あ、ああ……あでぃおす?」
おばあさんの無事も確認できたことだし、アタシは再び空中へと舞い戻っていく。
なんだか『アディオス』っていうのが決め台詞っぽくなってきた。
テンション上がってる影響だろうけど、本当に決め台詞にでもしようかね?
「つーか、そもそもはあの車が悪いんだよね。ちゃんと前方を見ていたもんかね?」
そうして街の上空へと戻ったアタシだが、冷静に考えてみると悪いのはおばあさんじゃない。突っ込んできた車の方だ。
いくら信号が変わりそうだったからって、前を見てれば気付くはずだ。
「これはちょいと、お仕置きでもしてみようかね? さーて、どこに行ったものか……」
どうしても気になって辺りを見回すも、交通量の多い時間帯のせいで中々見つからない。
とりあえず、お仕置きの内容としては、いきなり車と並走して驚かす感じで行こう。
まあ、相手の車が見つからないと意味ないけど。
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「ん? パトカーのサイレン?」
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