空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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魔女の誕生編

ep10 幼馴染の親父さんにバレそうでヤバい!

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「君は……魔女ってことでいいのかな? まさか、職業についても本当に魔女で?」
「え? ええっとぉ……? い、いや~……ソウナンデスヨー。アハハー」

 一緒にいた警察官が誘拐犯を取り押さえる横で、アタシは警部さんに事情聴取を受けている。
 そんでもって、この警部さんの名前は赤原あかはら 大和やまと。タケゾーこと、赤原あかはら 武蔵むさしの親父さんだ。
 アタシも小さい頃からの家族付き合いで、何度も会ったことがあるから覚えてる。
 ただ、向こうはアタシのことに気付いてないようだ。
 髪型も髪色も違うし、目も情報制御用コンタクトレンズが起動している影響で瞳に魔法陣とアイシャドウが入り、普段とは雰囲気が大きく違うせいだろう。

 ――てか、最大の原因はこの魔女ルックだ。
 アタシもノリと勢いと深夜テンションでやってたけど、よく考えたら二十歳の女がこんな恰好してるのも痛々しい。
 百歩譲って恰好は良しとしよう、コスプレだって言い張れなくもない。多分。



 ――ただ、杖に腰かけて空飛んでたことはどう説明するよ?



「えーっと、職業欄は魔女……っと。それで? 名前は?」
「な、名前ねー。ナンデショウネー」

 そんなタケゾーの親父さんだが、アタシに対して事情聴取というより、職務質問になってきている。
 親父さんは昔から仕事は真面目にこなす人だ。警部になれたのにも納得できる。
 ただ、今のアタシの状況は非常にマズい。ここで身バレして、後でタケゾーにもあれこれ聞かれそうで怖い。

 そもそもの話、アタシもパトカーを追い越すスピードでロッドを飛行させていたわけだ。これって、速度違反じゃね?
 てか、無免許運転とかもあるのかな? アタシ、車の免許も持ってないけど?
 さらに言えば、アタシはこのデバイスロッドで飛行するために、燃料源としてお酒を飲んでたわけだ。これって、飲酒運転になんない?

 ――それらのことで動揺しまくって、どうしても片言で目を逸らしながらボカした返事をしてしまう。

「……とりあえず、署までご同行を願えるかな? どうやら、君からは色々と聞いておいた方がよさそうだ」

 ほら見ろ。アタシが優柔不断な態度をとるせいで、メチャクチャ怪しまれてるじゃん。
 かといって、このまま警察署まで同行するのも勘弁願いたい。

 ――ごめん。タケゾーの親父さん。
 アタシはここでトンズラこかせてもらう。

「悪いんだけど、こっから先は禁則事項ってことで! よっと!」
「あっ! コラ! どこへ行く!?」

 アタシは後ろに宙返りしながら浮かせたデバイスロッドに飛び乗り、高速道路のガードの向こう側まで移動する。
 ここまで来れば、いきなり取り押さえられることもない。親父さんには悪いけど、アタシもこれ以上の説明はできんのだ。

「そいじゃ、後のお仕事は頑張ってねー、警部さん! アディオース!」
「ま、待て! 何だったんだ? あの自称魔女は……?」

 親父さんの止める言葉も意に介さず、アタシはマイブームな捨て台詞を吐いて飛び去って行く。
 流石に悪目立ちが過ぎた。元々はデータ検証から始まったのに、人助けをしているうちについついノッてしまった。

「でもまあ、人助け自体は気分がよかったけどねぇ」

 そうして夜空を駆けながら思うのは、これまでに起こったこと。
 時間にすると大したことないが、それでも実に密度の高い経験であった。
 単に見過ごせなかったことから始めた人助け。それでも、今のアタシにはそれが十分に可能な力がある。
 その力が人の役に立てたと思うと、胸に熱いものがこみ上げてくる。

「これはもうちっと、人助け方面で研究を進めてみますか!」

 亡くなった両親も『科学は人の役に立つためにある』と言っていた。
 偶然の産物ではあるが、アタシだって技術者だ。その力が人の役に立つならば、喜んで使いたい。
 これまでは好奇心ばかりが先行していたが、これで目的もできた。

「よーし! 帰ったらデータからレビューとって、さらに改良してやるぞー!」

 明確な目的ができれば、より一層気合も入る。
 アタシは一人夜空で気を引き締め、これからの研究に期待を寄せていた。





「あ、あへ~……。もうダメ。ヘトヘト~……」

 とはいえ、アタシも人間である以上、蓄積した疲労には勝てなかった。
 丸二日間徹夜からの、能力を使った初フライト&人助け対応。
 いくら酒で燃料を補充できるとはいえ、流石に限度がある。
 ゴミ捨て場にあるプレハブ小屋へ戻ると、アタシは魔女の変身を解除して、そのままソファーへと倒れ込む。

「ふあ~……。一回寝よ。おやすみ~……」

 どの道、当分の間は仕事も入っていない。
 そんなわけで、丸一日ぐらいは眠って過ごしても問題ない。
 研究やら生活やら色々と考える必要はあるが、休息だって必要なことだ。

 そんなこんなで、アタシは帰ってそのまま眠りについた。





 ドンッ! ドンッ! ドンッ!


「……んん~? 誰だよ~? まだ眠いのに~……」

 そうして丸一日は寝るつもりだったのに、誰かがプレハブ小屋の扉を激しく叩く音で目が覚めてしまった。
 申し訳程度に設置された窓から陽の光が差し込んでくるし、とりあえず夜明けまでは眠れたようだ。
 それでもまだ眠い。もっと寝たい。


 ドンッ! ドンッ! ドンッ!


「あ~……もう! しつこい来客だね! はいはい! 今出ますよ~」

 そんなこちらの願望など知ったことかと、小屋の扉を叩く音は鳴り止まない。
 このままでは二度寝もできない。
 仕方がないので、扉の内鍵を開けて応対しようとすると――



「そ、空鳥!? よ、よかった! 無事だったんだな……!」
「……ほへ? タケゾー?」
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