空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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怪鳥との決闘編

ep91 そんな事実は聞きたくなかった。

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「ど、どういうことさ……!? まさか、本当に大凍亜連合がアタシの父さんや母さんを……!?」

 鷹広のおっちゃんが語り始めたのは、アタシの両親の死に関する話。
 あの時の事故が本当は大凍亜連合の絡む事件だった可能性は、タケゾー父の手帳から知っていた。

 ――その話が本当に事実だったとでも言うのか?

「貴様の両親はワシの依頼により、ヒトゲノムに関する研究を任されていタ。もっとも、本当はワシも大凍亜連合に依頼されていたのだがナ」

 アタシを完全に車に閉じ込めたからか、鷹広のおっちゃんは勝ち誇ったように語り始める。
 その話から垣間見えるのは、アタシの両親が大凍亜連合とも関わっていたという事実。
 パンドラの箱にあったヒトゲノムの解析データも、大凍亜連合の関与によって行われたものである可能性が高い。

 だとしたら、両親はどうして大凍亜連合のせいで命を落として――



「だが、あろうことか研究結果を渡す間際になって、二人はそのデータを渡すのを渋ってきタ。だから、ワシが殺してやったのダ。せっかくワシが用意してやったチャンスを、無駄にしたことへの報復としてナァアア!!」
「えっ……!? そ、そんな……!?」



 ――その理由についても、おっちゃんは誇らしげに語って来た。
 要するに、アタシの両親が死んだのはおっちゃんの意向に従わなかったから? たったそれだけのために、両親は殺されたってこと?

「おまけに研究データの一部はどこかへ封印し、誰にも告げることすらしておらんかッタ。だが、二人が死んだことで基本データは手に入り、工場を売り飛ばすことで借金返済という体裁で大凍亜連合に上納金を納めることはできタ。おかげで、ワシもこうしてGT細胞の恩恵を授かることがきたのダ!」
「そ、それってつまり……両親の借金自体がおっちゃんの用意したでまかせだったってこと……!?」
「あの二人が研究データを全て譲っていれば、ワシがそうやって苦労することも、二人が死ぬこともなかったのダ。今こうして隼が苦しんでいるのも、全ては貴様の両親の責任と思エ!」

 ただでさえ恐怖でどうにかなりそうなのに、両親の死の真相を聞かされてアタシの心は色々と限界だ。
 そんな衝撃の事実の数々も、鷹広のおっちゃんは悲壮さを全く感じさせず、自らの行いの正当性を自慢するかのように語ってくる。

 ――この人は結局、自分しか見えていない。
 そんなおっちゃんもアタシから見れば、ただ大凍亜連合の道具とされているようにしか見えない。
 GT細胞自体は元々、大凍亜連合の手中にあったのか? 大凍亜連合は両親の研究データをもとに、GT細胞の強化を図ったのか?
 そういう疑問も頭に浮かんでしまい、正常な思考ができなくなっていくのが自分でも分かる。



「……さて、おしゃべりが過ぎたナ。じゃあな、隼。あの世で両親と一緒に、ワシに逆らったことを悔やんでおるがいいワァァアア!!」
「え!? い、嫌……! 嫌だぁぁあああ!!」


 ガァァアアンッ!!


 アタシにすべての真相を語り終えて満足したのか、鷹広のおっちゃんはデザイアガルダの姿のまま、鉄塔を激しく蹴り飛ばした。
 おっちゃんは空を飛んで難を逃れているが、アタシの方はいまだに鉄塔に乗せられた車の中。
 衝撃で被っていた三角帽は車外へと吹き飛ばされるが、アタシの体は恐怖でどうしても動いてくれない。
 おまけに鉄塔が傾いた先は崖になっており、思わずあの時の光景が脳裏に蘇る。



 ――両親を失った時と同じく、アタシは再び車の中で崖下へと転落していく。



「い、嫌だ! 助けて! 誰か助けてぇええ!! タケゾォォオオ!!」

 空色の魔女という正義のヒーローであるアタシでも、この状況は全てを失ったあの日のトラウマを想起させ、動きも判断も狂わせてしまう。
 車も衝撃で鉄塔から飛び出し、崖へと真っ逆さまに落ち始める。
 もうダメだ。怖さで死ぬ未来しか見えない。

 思わず恋人であるタケゾーの名を叫び、惨めに助けを求めながら、アタシは閉じ込められた車ごと崖へと落ちていく――



「そ、そうだ! タケゾー! タケゾーを助けなきゃ!」



 ――そんな極限状態の中で、アタシの内にあった最大の目的が背中を押すように思考を戻してくれた。
 アタシがここにやって来た最大の目的。牙島の刺客であるデザイアガルダを倒し、タケゾーのための解毒剤を手に入れること。
 今だって、崖下へ転落していく車の中は怖い。でも、それをアタシがこうして身動きできない理由にはしたくない。



 ――過去のトラウマがなんだ。今はタケゾーを失う方が怖い。



「せいやぁああ!!」


 バッキィィイン!!


「ナッ!? 隼の奴、車の中から出られたのカ!?」

 渾身の気合を振り絞り、アタシは転落する車の扉を破壊し、外へと飛び出る。
 もう怖くなんかない。恐れる必要なんてない。今のアタシにはそれを乗り越えられるだけの力がある。

 ――空色の魔女は正義のヒーローなんだ。
 誰かを守るためならば、自分のちっぽけな恐怖心なんて吹き飛ばせる。

「トラクタービーム! ふんぎぎぎ……!」

 アタシは転落する車の扉を右手で掴み、車自体を踏み台にしながら飛び上がる。
 さらには左手からトラクタービームを鉄塔へと射出し、収縮させて鉄塔へと勢いのままに飛んでいく。
 事前に飲んでおいた酒のおかげでパワーは十分。もう鷹広のおっちゃんだろうと容赦はしない。



 ――いや、もうあれはアタシの身内でも何でもない。



「デザイアガルダァァアア!!」

 アタシは忌まわしき仇敵の名を叫びながら、右手に車の扉を掴んでトラクタービームで鉄塔へと引き上がっていく。
 アタシの両親を殺し、タケゾー父を殺した元凶。それ以外にも多くの被害を出し続けた諸悪の根源――デザイアガルダ。

 ――もうあいつの名前なんて、そのヴィランとしての名前だけで十分だ。

「こ、小癪ナ! 車から脱出できたぐらいで、貴様に何が――」
「おんどりゃぁああ!!」

 デザイアガルダはアタシを見て驚愕し、空中で動きを止めている。これはチャンスだ。
 デバイスロッドがないため、こちらが空中戦を挑むことはできない。ならば、デザイアガルダを空中から引きずり落とす。
 あらかじめ右手で掴んでおいた車の扉は、そのための投擲武器だ。

 アタシはトラクタービームを収縮させる勢いを上乗せし、鉄塔へと飛び移りながら右手に持った車の扉をデザイアガルダ目がけて投げ飛ばした。


 ブゥウウンッ!!

 ザシュンッ!!


「ゲガァ!? し、しまッタ!? 翼ガ……!?」

 アタシが投げた車の扉は刃を取り付けたブーメランのように飛び、デザイアガルダの翼を大きく斬りつけた。
 完全に決まったわけではないが、これでデザイアガルダも飛行能力は失った。
 向こうも傾いて斜めとなった鉄塔へと墜落し、アタシも鉄塔の上で身構える。
 現在、お互いの位置取りはデザイアガルダが下で、アタシの方が上。互いに空は飛べず、傾いた鉄塔の下は奈落の崖。

 ――もうどんな状況でも恐れない。
 こいつを倒し、アタシは解毒剤を手に入れることだけを考える。



「今度という今度こそ、決着をつけてやんよ……デザイアガルダァァアア!!」
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