空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
104 / 465
これからも一緒編

ep104 タケゾー「思い出の場所で共に過ごしたい」

しおりを挟む
【なあ、隼。そっちは今、時間は空いてるか? 空いてからでいいから、空鳥工場まで来て欲しい。少し話がある】

 俺は玉杉さんから隼が住んでいた工場の所有権一式をもらうと、その工場の前まで来ながら隼にスマホでメッセージを送った。
 電話には出てくれないが、おそらく向こうも忙しいのだろう。仕事とヒーローの両立なんて、忙しいに決まってる。

【ごっめーん! タケゾー!o|((〉ω〈 ))o アタシもちょっと荷物運びに困ってるおじいちゃんを助けてたから、返信できなかったよ~!(*´Д`)】
【そんなことまでやってるのか。正義のヒーロー、空色の魔女様も大変だな。お疲れ様】
【どもども~。o|(* ̄▽ ̄*)ブ アタシも今からそっちに向かうけど、空鳥工場に呼び出して何の用事? 何か問題でもあったの?(´・ω・`)?】
【問題はないさ。それに悪い話じゃない】

 しばらくすると、隼からもメッセージの返信が来た。悪者退治だけじゃなく、ちょっとした人助けまでするあたり、隼のお人好しには呆れつつも感心してしまう。
 そんなお人好しだからこそ、世間からも『正義のヒーロー、空色の魔女』として名前が通っているのだろう。

「SNSとかを見ても、なんだかんだであいつって愛されてるんだよな」

 隼がこっちに来るまでの間、俺はスマホをいじりながら空色の魔女について軽く調べてみる。
 『どこかの秘密結社が作り出した秘密兵器』だとか『実は政府が用意したアイドルのような偶像』なんて陰謀論もあるが、そういう意見が上書きされるぐらいに空色の魔女は人気者だ。
 『正体は分からないが、助けてもらったのは事実』だとか『空色の魔女の活躍には素直に感謝してる』といった声が多数を占め、決して悪者扱いは受けていない。

 ――『ついさっき荷物運びを助けてもらった八十歳老人なう』なんて投稿もあるが、これって隼も言ってたおじいさんか?
 いずれにせよ、そういった隼の地道な空色の魔女としての活動は、世間にも確かに根付いている。
 俺も彼氏として、どこか誇らしい。

「そんなあいつがあいつらしくいられるように、俺も一肌脱ぎたいもんだ」

 一度スマホをポケットに直すと、俺は眼前に見えてきた空鳥工場を眺める。
 元々ここは隼の実家なわけで、俺も玉杉さんの厚意で機会を用意してもらえたに過ぎない。
 それでもここまでお膳立てをしてもらって、俺が見栄を張って話を振り出しに戻すようなこともしたくない。

 ――後は隼が納得してくれれば、俺はここで隼との新たな生活を始められる。



「タッケゾー! おっまたせー!」
「お? 来てくれたのか」



 俺が一人で思いにふけていると、隼が空色の魔女の姿でこちらに飛んできた。
 そして着地と同時に変身を解除。いつもの普段着であるポニーテールの作業着姿に戻り、俺の横に寄り添ってくる。

「わざわざ空鳥工場にまで呼び出して、本当に何の用事なのさ? アタシも気になっちゃうよ?」
「まずはこれだな。差し押さえられていたこの工場の所有権だが、玉杉さんの計らいで隼のもとに戻って来たぞ」
「え……ええぇ!? マジで!? てことは、アタシはまたこの工場で暮らせるの!?」
「そういうことだ。おめでとう、隼」

 俺はそんな隼に対し、軽く事情を説明しながら持っていた封筒を手渡した。
 その事実を聞いた隼はまさに狂喜乱舞といったところ。受け取った封筒を持ちながら大はしゃぎだ。

「ありがとう! タケゾー! もう本当にこいつは胸いっぱいって奴だよ!」
「礼なら玉杉さんに言ってくれ。あの人が色々と手を回してくれたから、こうやって所有権を取り戻すことができたんだ」
「もちろんだってば! でもまあ、タケゾーもそれとは関係なくとも色々とアタシに気を遣ってくれたし、今はアタシも感謝を伝えたい気持ちでいっぱいなのさ!」
「そ、それは分かったから。ちょ、ちょっと危ないっての」

 公道の真ん中だというのに隼はその場で俺の手を取り、テンションのままに踊り出してしまう。
 思わずこちらも転びそうになるが、ここまで喜んでいる隼の姿を見ると、俺もほのかに嬉しくなってくる。
 随分と遠回りをしたが、これにて隼が抱えていた最大の後悔にも決着がついたのだ。嬉しくないはずがない。

「よーし! そいじゃ、早速引っ越し作業に取り掛からないとねぇ!」
「なあ、隼。そのことなんだけどさ、俺から一つ提案があるんだ」

 隼は意気揚々としたまま、再びこの工場で生活することを考え始めている。
 それによって隼の悲願は達成されるのだが、俺には俺の願いがある。

 ――どうしても高鳴る鼓動を堪えつつ、俺は隼にその提案を口にする。



「よかったらでいいんだが……俺も一緒にこの工場で暮らして構わないか?」
「……へ? アタシとタケゾーが一緒に暮らす……ってこと?」



 どうにかして振り絞った俺の同棲の提案を聞いて、隼もハイテンションダンスから一転して静かにこちらを見つめてくる。
 俺もストレートに言いすぎたかもしれない。いきなりこんなことを言われてしまい、隼の脳内も処理が追い付いていないようだ。

「あー……嫌だったら別に断ってくれて構わない。ただ、俺も隼と一緒に生活して……その……支えてやりたいと思ったわけで……」
「そ、それってもしかして……そういうこと?」
「ああ、まあ……そういうことだ」

 俺の方も提案から先の言葉がうまく繋がらず、どこかしどろもどろになってしまう。
 それでも隼はそんな少ない言葉からも、俺の意図を汲み取ってくれる。
 俺としても隼に余計な気は使わせたくないし、無理なら無理と断ってくれた方がスッキリする。

 それでも、心のどこかで『イエス』という答えを望んでいると――



「……分かった! アタシも腹を括るよ! これからもよろしくね、タケゾー!」



 ――その望み通り、隼は俺の提案を飲んでくれた。

「ほ、本当にいいのか? 俺も自分で言っててなんだが、かなり唐突な提案をしたぞ?」
「いいって、いいって! アタシ達も付き合ってるわけだし、いずれはこういうことにもなってたでしょ? アタシも相手がタケゾーなら、むしろ大満足って奴さ!」
「そ、そこまで俺のことを持ち上げられると、かえって恥ずかしくなってくる」

 どんな答えが返ってくるか不安もあったが、そんな不安も吹き飛ばしてくれるような笑顔で、隼は俺の手を握って応じてくれた。
 まだまだ若い俺達二人。色々と困難もあるだろう。
 それでも、こうやって傍で喜んでくれる隼と一緒ならば、そんな困難も乗り越えられそうな気がする。

「アタシとタケゾーの新たなスタート地点がこの工場ってのも、なんだか運命的なもんだねぇ」
「そうだな。俺もお前を支えられるように、頑張っていかないとな」
「そこはアタシだって頑張るさ。二人で協力して、これからも一緒に歩んでいこうね」

 俺と隼はお互いに手を繋ぎながら、新居となる工場を前にして誓い合う。
 隼が生まれ育った場所にこうして招き入れてもらえたのは、俺としても感慨深いものがある。

 ――ここから一緒に、隼との同棲生活を始めよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。 ※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...