空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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これからも一緒編

ep104 タケゾー「思い出の場所で共に過ごしたい」

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【なあ、隼。そっちは今、時間は空いてるか? 空いてからでいいから、空鳥工場まで来て欲しい。少し話がある】

 俺は玉杉さんから隼が住んでいた工場の所有権一式をもらうと、その工場の前まで来ながら隼にスマホでメッセージを送った。
 電話には出てくれないが、おそらく向こうも忙しいのだろう。仕事とヒーローの両立なんて、忙しいに決まってる。

【ごっめーん! タケゾー!o|((〉ω〈 ))o アタシもちょっと荷物運びに困ってるおじいちゃんを助けてたから、返信できなかったよ~!(*´Д`)】
【そんなことまでやってるのか。正義のヒーロー、空色の魔女様も大変だな。お疲れ様】
【どもども~。o|(* ̄▽ ̄*)ブ アタシも今からそっちに向かうけど、空鳥工場に呼び出して何の用事? 何か問題でもあったの?(´・ω・`)?】
【問題はないさ。それに悪い話じゃない】

 しばらくすると、隼からもメッセージの返信が来た。悪者退治だけじゃなく、ちょっとした人助けまでするあたり、隼のお人好しには呆れつつも感心してしまう。
 そんなお人好しだからこそ、世間からも『正義のヒーロー、空色の魔女』として名前が通っているのだろう。

「SNSとかを見ても、なんだかんだであいつって愛されてるんだよな」

 隼がこっちに来るまでの間、俺はスマホをいじりながら空色の魔女について軽く調べてみる。
 『どこかの秘密結社が作り出した秘密兵器』だとか『実は政府が用意したアイドルのような偶像』なんて陰謀論もあるが、そういう意見が上書きされるぐらいに空色の魔女は人気者だ。
 『正体は分からないが、助けてもらったのは事実』だとか『空色の魔女の活躍には素直に感謝してる』といった声が多数を占め、決して悪者扱いは受けていない。

 ――『ついさっき荷物運びを助けてもらった八十歳老人なう』なんて投稿もあるが、これって隼も言ってたおじいさんか?
 いずれにせよ、そういった隼の地道な空色の魔女としての活動は、世間にも確かに根付いている。
 俺も彼氏として、どこか誇らしい。

「そんなあいつがあいつらしくいられるように、俺も一肌脱ぎたいもんだ」

 一度スマホをポケットに直すと、俺は眼前に見えてきた空鳥工場を眺める。
 元々ここは隼の実家なわけで、俺も玉杉さんの厚意で機会を用意してもらえたに過ぎない。
 それでもここまでお膳立てをしてもらって、俺が見栄を張って話を振り出しに戻すようなこともしたくない。

 ――後は隼が納得してくれれば、俺はここで隼との新たな生活を始められる。



「タッケゾー! おっまたせー!」
「お? 来てくれたのか」



 俺が一人で思いにふけていると、隼が空色の魔女の姿でこちらに飛んできた。
 そして着地と同時に変身を解除。いつもの普段着であるポニーテールの作業着姿に戻り、俺の横に寄り添ってくる。

「わざわざ空鳥工場にまで呼び出して、本当に何の用事なのさ? アタシも気になっちゃうよ?」
「まずはこれだな。差し押さえられていたこの工場の所有権だが、玉杉さんの計らいで隼のもとに戻って来たぞ」
「え……ええぇ!? マジで!? てことは、アタシはまたこの工場で暮らせるの!?」
「そういうことだ。おめでとう、隼」

 俺はそんな隼に対し、軽く事情を説明しながら持っていた封筒を手渡した。
 その事実を聞いた隼はまさに狂喜乱舞といったところ。受け取った封筒を持ちながら大はしゃぎだ。

「ありがとう! タケゾー! もう本当にこいつは胸いっぱいって奴だよ!」
「礼なら玉杉さんに言ってくれ。あの人が色々と手を回してくれたから、こうやって所有権を取り戻すことができたんだ」
「もちろんだってば! でもまあ、タケゾーもそれとは関係なくとも色々とアタシに気を遣ってくれたし、今はアタシも感謝を伝えたい気持ちでいっぱいなのさ!」
「そ、それは分かったから。ちょ、ちょっと危ないっての」

 公道の真ん中だというのに隼はその場で俺の手を取り、テンションのままに踊り出してしまう。
 思わずこちらも転びそうになるが、ここまで喜んでいる隼の姿を見ると、俺もほのかに嬉しくなってくる。
 随分と遠回りをしたが、これにて隼が抱えていた最大の後悔にも決着がついたのだ。嬉しくないはずがない。

「よーし! そいじゃ、早速引っ越し作業に取り掛からないとねぇ!」
「なあ、隼。そのことなんだけどさ、俺から一つ提案があるんだ」

 隼は意気揚々としたまま、再びこの工場で生活することを考え始めている。
 それによって隼の悲願は達成されるのだが、俺には俺の願いがある。

 ――どうしても高鳴る鼓動を堪えつつ、俺は隼にその提案を口にする。



「よかったらでいいんだが……俺も一緒にこの工場で暮らして構わないか?」
「……へ? アタシとタケゾーが一緒に暮らす……ってこと?」



 どうにかして振り絞った俺の同棲の提案を聞いて、隼もハイテンションダンスから一転して静かにこちらを見つめてくる。
 俺もストレートに言いすぎたかもしれない。いきなりこんなことを言われてしまい、隼の脳内も処理が追い付いていないようだ。

「あー……嫌だったら別に断ってくれて構わない。ただ、俺も隼と一緒に生活して……その……支えてやりたいと思ったわけで……」
「そ、それってもしかして……そういうこと?」
「ああ、まあ……そういうことだ」

 俺の方も提案から先の言葉がうまく繋がらず、どこかしどろもどろになってしまう。
 それでも隼はそんな少ない言葉からも、俺の意図を汲み取ってくれる。
 俺としても隼に余計な気は使わせたくないし、無理なら無理と断ってくれた方がスッキリする。

 それでも、心のどこかで『イエス』という答えを望んでいると――



「……分かった! アタシも腹を括るよ! これからもよろしくね、タケゾー!」



 ――その望み通り、隼は俺の提案を飲んでくれた。

「ほ、本当にいいのか? 俺も自分で言っててなんだが、かなり唐突な提案をしたぞ?」
「いいって、いいって! アタシ達も付き合ってるわけだし、いずれはこういうことにもなってたでしょ? アタシも相手がタケゾーなら、むしろ大満足って奴さ!」
「そ、そこまで俺のことを持ち上げられると、かえって恥ずかしくなってくる」

 どんな答えが返ってくるか不安もあったが、そんな不安も吹き飛ばしてくれるような笑顔で、隼は俺の手を握って応じてくれた。
 まだまだ若い俺達二人。色々と困難もあるだろう。
 それでも、こうやって傍で喜んでくれる隼と一緒ならば、そんな困難も乗り越えられそうな気がする。

「アタシとタケゾーの新たなスタート地点がこの工場ってのも、なんだか運命的なもんだねぇ」
「そうだな。俺もお前を支えられるように、頑張っていかないとな」
「そこはアタシだって頑張るさ。二人で協力して、これからも一緒に歩んでいこうね」

 俺と隼はお互いに手を繋ぎながら、新居となる工場を前にして誓い合う。
 隼が生まれ育った場所にこうして招き入れてもらえたのは、俺としても感慨深いものがある。

 ――ここから一緒に、隼との同棲生活を始めよう。
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