空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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大凍亜連合編・起

ep124 謎の子供の正体が見えてきた。

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「パンドラの箱の技術と佐々吹の脳のデータを使って、あの子は作られたってことか……!?」
「現状、そうとしか考えられないよ。だってあの子、ショーちゃんに似てるところが多すぎるもん……」

 インサイドブレードというコードネームを持ち、新人類とも呼べる可能性を秘めた居合君。
 アタシの見立てが正しければ、その脳内機構はショーちゃんの脳をベースに作られたと考えられる。
 ショーちゃんと同じ居合術。ショーちゃんの名前を聞いた時の様子。アタシに対しての反応。
 それらの要因が、否応なくアタシに突き刺さってくる。
 親戚などではない。居合君はある意味、ショーちゃん本人とも呼べる存在にしか見えない。

 ――アタシだって、自分を愛してくれた男の面影ぐらいは感じ取れる。

「で、でも、佐々吹は右腕の手術のために、海外に行ったんじゃなかったのか?」
「そのはずだけど、もしかすると右腕の怪我にしても、裏で大凍亜連合が関わってたとか?」
「その時に脳のデータをとられて、居合君みたいな戦闘能力を持った存在の誕生に利用されたとも考えられるか……。もしそうだとしたら、俺もやるせない気持ちになってくる。あいつは俺にとっても、言葉で済ませられる男じゃないからな……」

 タケゾーもアタシとの同棲前にショーちゃんとは色々あったようで、本当に辛そうな表情でショーちゃんのことを心配している。
 やっぱり、ショーちゃんはアタシとタケゾーを繋いでくれたキューピットだったんだ。
 そして、そんなショーちゃんと重なって見える居合君のこともまた、アタシ達は余計に気になってしまう。

 ――大凍亜連合の関与とかは関係ない。それ以上の想いがアタシの中に生まれてしまった。
 ショーちゃんのためというわけでもないが、それでもアタシは居合君のことを守ってあげたい。



 ――今の居合君を守るのは、パンドラの箱を譲り受けたアタシの使命でもある。



「……隼。お前が考えていること、俺にも理解できたよ。俺もあの子のことについては責任を持って向き合いたい」
「……その顔、本当に覚悟が決まってるね。ある意味、家族が増えちゃうことになるけど、構わないかな?」
「当然だ。どうやら、今回は勘違いはないみたいだな」

 アタシが覚悟を決める横で、タケゾーも同じように覚悟を決めてくれる。
 今回は前回のように『勘違いで結婚して家族になりました』なんてこともなく、お互いにその先の行動を理解できている。

「ごちそうさま。おいしかった」
「……居合君。ちょっといいかな?」
「お姉さんにお兄さん、どうかした?」

 覚悟を決めたアタシとタケゾーは食卓へと戻り、居合君に話を切り出そうとする。
 丁度夕食も食べ終わり、作法良くごちそうさまの挨拶をしている。こういう作法の良さも、剣の達人だったショーちゃんと重なって見えるよね。

 本当にアタシ達が思った通りなのかは分からない。だけど、ここで色々とこの子に質問を重ねる真似はしたくない。
 この子だって、自分のことを分からないままにここにいるんだ。普通の人間ではないが、その構造は限りなく人間に近い。
 だからこそ一気に話を聞き出そうとせず、普通の子供を相手にするのと同じように、アタシはまず提案を一つ投げかける――



「よかったらさ、アタシ達と一緒に暮らさない?」
「お姉さんやお兄さんと……一緒に暮らす?」



 ――この子のことは時間をかけてでも、アタシがゆっくり無理なく調べる必要がある。
 そのためにも、まず提案するのがアタシやタケゾーと一緒にこの工場で生活すること。
 居合君が普通の子供だったのならば、警察や児童機関に相談すれば済む話だ。
 だが、アタシもここまで知ってしまったからには、こうやって一緒に生活することを提案せずにはいられない。



 ――むしろ、アタシ自身がそうしたい。
 ショーちゃんの面影がある居合君を、どことも知れない場所で危険に晒したくない。



「そもそもさ、君って帰る場所も覚えてないんだよね?」
「帰る場所……ない。覚えてない。気がついたらパンを見つけて、お腹が空いてたから盗んでた」
「だったら尚更、アタシ達と一緒に暮らしてみようよ。もちろん、無理強いはしたくないけど」
「……する。ボク、ここで一緒に暮らしたい」

 相手の見た目が見た目だけに、アタシも思わずいけないことをしている気分になってしまう。
 それでも少しずつ一緒に暮らす提案をしてみると、居合君は首を縦に振って了承してくれた。
 やってることだけ見れば誘拐と思われてもおかしくない行為なのは承知の上。それでも、アタシ達の気持ちに応えてくれたことは嬉しく思えてしまう。

「それじゃ、これからよろしくね」
「こっちもよろしく。……ふあ~。眠くなってきた」
「お腹が膨れたと思ったら、今度はお眠の時間ってか。新人類の可能性を秘めてても、中身は子供ってことか」

 こうして、アタシとタケゾー夫婦が生活する工場に、ショーちゃんの面影を持った居合君が加わることとなった。
 まだ仮説の話だけど、タケゾーとは別にアタシのことを愛してくれた男性をベースにした子供と暮らすなんて、三角関係どころじゃない複雑さだ。
 でも、不思議と悪い気はしない。

「積もる話もあるが、それは明日でもいいでしょ。アタシもタケゾーも明日は休みだし、調べ物云々も含めて明日にしよっか」
「そうだな。それじゃあ、俺は食器を片付けておくから、隼は風呂の準備とこの子が寝れる場所を見繕ってくれ」

 幸い、この工場でならば三人暮らしも問題ない。
 居合君の部屋も用意できるし、まずは寝室の用意からだね。
 タケゾーは食事の片づけをしてくれてるし、部屋については詳しいアタシの方がやるのが順当で――



「……一人、やだ。お姉さんやお兄さんと一緒に寝たい」
「……ほへ?」



 ――そう考えて部屋を見にいこうとしたら、急にズボンを居合君に掴まれてしまった。
 そして、訴えるような目つきでアタシに懇願してくる。
 ちょっと待って。その目は反則。アタシの母性本能が疼いちゃう。

 ――てか、結構な寂しがり屋さんだね。

「あー……それだったら、今日はとりあえずどっちかの部屋で寝る?」
「どっちかの部屋で寝るにしても、どっちの部屋で寝させるつもりだ? この子、そもそもの性別がないんだろ?」
「それはそうだけど、とりあえずはショーちゃんがベースっぽいから、男ってことでいいんじゃない?」
「つまり、俺の部屋でか。まあ、こっちは構わないさ」

 人造人間とはいえ、こんな小さな子供の要望と来ればこちらも無視はできない。
 タケゾーも食器洗いの手を止めて、アタシと居合君の話に耳を傾けてくれる。
 どちらかと一緒に寝るならば同性相手の方がいいのだが、生憎と居合君には性別の概念がない。
 とはいえ、現状ではショーちゃんと同じ男の子として扱うのが妥当か。

「てなわけで、居合君はタケゾーと一緒の部屋で寝てね」
「お兄さんの部屋、二人で寝るのは嫌」
「そうは言ってもだねぇ……。じゃあ、アタシの部屋で寝る?」

 ただ、肝心の居合君は納得してくれない。
 これはあれかな? 中身自体は小学生男子っぽいから、どこかで母性を求めてるのかな?
 だとしても、それをアタシに求められるとそれはそれで困る。まだ子供を産む覚悟もできてないのにさ。

 まあでも、この子も急に知らない場所へとやって来たわけだ。
 ここはアタシも頑張って、どうにか母性を絞り出して――



「お姉さんとお兄さんとボク。三人一緒で寝たい」
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